自宅でカレーうどんを二袋試食する。旨い、これが八袋で百円。夫婦で満足。
 二日目の二月一日。からは一日三回とも同じ物を広告するので楽だ。
 日差しの暖かい午後二時に、百円玉一つ握りしめて参加する事にした。
 今日の商品はヨモギ餅と越後餅の二袋。千円が百円で広告販売である。
 顔見知りの老夫婦が並ぶ列の後ろに着くと、さっそく三十分前に開場した。
 椅子に座れば、前後左右みんな常連さん。早く餅を入手したくて説明など上の空。
 本日は「ライブストア」にご来店いただきまして、誠にありがとうございますと題した会社説明を渡される。この宣伝は講習と名付けている。
 まず、講習を聞くのが前提だと明記してある。本社名や電話番号などもあり、疑念を払拭したくなるビラである。
 餅も二袋一、二キロと手応えある重さで満足である。翌日の前宣伝として味噌の効能書きも一枚渡される。味噌汁が万病に効果あると書かれていて、明日もまた来なければと刷り込まれてしまう。壁一面のポスターもカレーうどんに餅を入れる旨い食べ方と健康法などがところ狭いと並んでいる。百円なら一日浪費したい。
 味噌の効用と題したビラを見た妻は明日も行けと言う。もう行くっきゃないです。
 みんな同じ気持ちなのだろう。午後二時のだいぶ前から同じ顔ぶれが並ぶ。
 ぎんなんの味噌汁は頻尿に効果があるなどとしたり顔で演説する店長さん。
 首にマイクをぶらさげて部屋いっぱいに大演説を続ける。

 夕飯はカレーうどんに餅を入れて夫婦が満腹になる。一日百円で済んだ。
 翌日は、赤卵三パック百円の予約券も確保している。妻も早く行けと言う。
 七十五才、年金老人は外出してくれることが、妻の健康にも良いらしい。
 もう、ゆくっきゃない。三日でここまで進展した。恐ろしい事もある。
 二月二日も寒い日だが家には居られない。卵を求めて行列に並ぶ。
 横浜線の相模原駅と淵野辺駅の中間にある矢部駅の手前まで行く。
 行きつけのスーパーマーケットで自転車を置き、買い物をする。これで外出の名目も立った。宣伝販売に釣られてきたのでは断じて無い、と自分を納得させる。
 そしてとぼけた顔で行列に並ぶ。常連さんもみんなそんな顔でならんでいる。
 一日はこの為にしかないという心境になった。これが十日、一ヶ月ならどうか。
 日々何一つ心躍る事のない年金老夫婦。老老介護が目前のうつ欝な毎日。
 死んだら年金がもらえない。執念で生きる日々。楽しみは食事だけ。
 赤穂の赤卵。放し飼いの地鶏。兵庫県認証食品。三パック百円とは本当か!
 たとえ二時間の講習演説でも聴いてやろうではないか。とはいえ、店長氏も心得ている、そんな演説より卵はまだかと皆さんの顔に書いてありますね、と澄まして笑い飛ばす。
■関連情報=外狩雅巳のひろば