とんび脚

2011年10月23日

太郎冠者ととんび脚

狂言の楽しさはおおらかな笑いにあると思う。

太郎冠者が何かしくじる。
弁解をする。
とても本当とは思えないことを理由に上げて滔々と述べ立て、主を言いくるめようとする。
なんとかお叱りを受けまいと、する。

必死なのだがそれが可笑しい。
死に物狂いで弁解する太郎冠者。
烈火のごとく起こる主。

最後に叱責を受けることもあれば、主も一緒になって浮かれてしまうこともある。

どちらであっても観た後は良い気分になる。
筈だ。

太郎冠者はある意味で気の毒な人である。
無能だったり理不尽だったりするご主人の下で働いている。どうあっても動かしがたい上下関係に生きている。
一生懸命にご主人をカバーしようとしても報われなかったりもする。
あんまりアタマも良くないみたい。
その中での太郎冠者の戦いぶりにこそ哀れさや、可笑しさもある。

しかるに、このごろは
「太郎冠者、あるか。」
と呼ばれて
「ハイ。」
と出ては来るものの
「本当は僕の方がエライのよ。」
と、顔に書いている人がいる。
叱られてもせせら笑っているかのような表情を浮かべる。
ズルそうな、姑息な太郎冠者が、いる。

ご主人のことなんか好きでもなんでもないのだろうな。
ご主人に何かあったらさっさと辞表を出すのだろうな。
今から、転職活動をしているのだろうな。
なあに。失敗してもボクなら簡単に言いくるめられるもんね、と、思っているのだろうな。
一生懸命に弁解なんかしていない。
リクツばっかり。

だから、あり得ないことを真剣に述べ立てるというおおらかさが、ない。
うっかりするとご主人は太郎冠者の勢いに巻き込まれ、思わず納得してしまうかもしれない、などとは思わせてくれない。
笑えない。

つまらない。
おもろない。

・・・・・・・・・・

能の地謡で、途中でとんび脚をしている人がいた。

「いいものだ。」
と、思って欲しくないのですか?



selber at 17:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)