ジョン・ソウ

2016年06月03日

BBCの
「モース警部シリーズ」
は、録画してまだ、観ている。
我ながらシツコイと、思う。

その中で、デクスターの原作ではない作品だが、好きなのに
「Death on Time」
が、ある。

モースが、昔婚約していた女性に皮肉な状況の中で再会する。

作品の終わり近くになってその女性は自殺する。

悲嘆にくれるモースは背後にいるルイスに
「あの男を捕えろ。」
と、命じる。

しかし・・・
と、口ごもるルイスに向き直ってモースは
”For God's sake,Louis
  Please !”
と、叫ぶ。

これほどの肺腑がえぐられるような
PLEASE
は、聞いたことがない。

元の婚約者とその夫の死に関係があるかもしれないその男を
捕えろ
と、命じるモースは、しかし
その男でなければ、誰が犯人なのかを
心の奥底では知って、いる。

婚約者と一緒に幸せになれなかった自分のことも
良く知っている。

幸せになれない自分、あるいは
幸せになりたくなどない自分。

何が真実かを知らないではいられない明晰な頭脳を持ちながらなお
幻影にすがる人間の弱さをさらけ出し
ルイスに一瞬だけ甘えるモースの姿が、ある。

しかも、その時のジョン・ソウは
観客に背中を見せている。


この
「プリーズ」
を聞きたいがためにまたこの作品を観てしまった。



selber at 10:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年05月19日

知りませんでした

ジョン・ソウはとっくに亡くなっていたということを昨日偶然に知った。
2002年。
享年60歳。

「モース警部シリーズ」は全シリーズを通して三回ほど観たのだが、
「これでおしまいなのだろうか?
もう続きは作らなかったのだろうなあ。」
と思っていた。
そして、ソウ君はトーガでも着て
"Romans,countrymen,and,lovers!"
なんてやるのに忙しいのだろう、と漠然と考えていた呑気なわたくしだった。

「モース警部」がテレビでシリーズ化されたというニュースを聞いてから実際に観るまでには、随分時間が経ってしまったのだが、初めて目にした"Chief Inspector"、モース君はデクスターの本に出てくるそのままの姿で、本当に嬉しかったものだ。

ソウの生い立ちは幸福ではなかったようだ。また、アルコール依存問題も抱え、ヘビースモーカーでもあったとのことだ。

あの、一人で死んでしまった、言葉遣いにうるさくて、誇り高くデリケートなモースにソウ自身を重ね合わせるわけではない。
しかし、あの、何もしていないように見えるのにふと影が差しているかのように思わせるソウの演技は、深く深く悲しんだことがあり、それを心の中に持ち続けている人のそれのように思える。

ローレンス・オリヴィエの代役をつとめたほどのソウだったが、演ずることを極めても極めても微かに漂う矯め切れない自分、が彼の場合も見られる。そこまで行って初めて演者の個性と呼ばれるものだが。(はじめから「地」で「演技」するのは演技でもなんでもない。)
「隠すほどあらわるるは無し」
と古人は言ったそうだが、演技とは畢竟その人自身ではないかと思う。

まだまだ観たかったです。
本当に。

雲








雲くん達が一斉にどこかに向かって急いでいるように見えました。
「ゴハンですよ!」
という声がしたのだろうか?





selber at 12:11|PermalinkComments(0)TrackBack(0)