2008年10月08日 11:37

アンマー

初夏の晴れた昼下がり 私はうまれたと聞きました
母親の喜びようはたいへんだったと聞きました
「ただ真っ直ぐ信じる道を歩んでほしい」と願いこめて
悩みぬいた末に この名を私につけたと聞きました
我が家はあの頃からやはり 裕福なほうではなく
友達のオモチャや自転車を羨ましがってばかり
少し困ったような顔で 「ごめんね」と繰り返す母親のとなりで
いつまでもいつまでも泣いたのを覚えてます

アンマーよ あなたは私の全てを許し全てを信じ全てを包み込んで
惜しみもせずに 何もかも私の上に注ぎ続けてきたのに
アンマーよ 私はそれでも気付かずに思いのままに過ごしてきたのでした

「強さ」の意味をはき違えて ケンカや悪さばかりをくりかえし
勝手きままに遊びまわる 本当にロクでもない私が
真夜中の静けさの中 忍び足で家に帰ったときも
狭い食卓の上には 茶碗が並べられていました
自分の弱さに目をそむけ 言い訳やゴタクをならべ
何もせずにただ毎日をだらだらと過ごし続け
浴びるほどに飲んだ私が 明け方眠りに落ちる頃
まだ薄暗い朝のまちへ 母は出ていくのでした

アンマーよ 私はあなたに言ってはいけない決して口にしてはいけない言葉を
加減もせずに投げつけてはあなたの心を踏みにじったのに
アンマーよ あなたはそれでも変わることなく 私を愛してくれました

木漏れ日のようなぬくもりで 深い海のようなやさしさで
全部 全部 私の全てを包み込んだ
あなたの背中に負われながら 眺めた八重瀬岳の夕陽は
今日も 変わらず 茜色にまちを染める

度が過ぎるほどの頑固さも わがままも卑怯な嘘もすべて
すべてを包み込むような愛がそこにはありました
あなたのもとにうまれおちたことは こんなにも幸せだった
今ごろようやく気付きました こんな馬鹿な私だから

春先の穏やかな朝に新しい命がうまれました
あなたのように良く笑う宝石みたいな女の子
「優しさの中に凛々しさを秘めた人」になるようにと願い
あなたの一番好きな 花の名前をつけました


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