2011年01月18日 17:32

境界線が難しいです

個体発生の最初には卵生と胎生があります。
新しく産生される個体が受精卵の段階で産出され、親の体外において発生を始めることを「卵生」といいます。
これに対して、新個体が母体内において初期発生を開始し、一般には母体内で卵膜を破って出現した稚仔がなお母体から栄養補給を受けながら発生を続け、餌をとる従属的栄養段階になってから体外に産出されるのが「胎生」です。
かつては、胎生の動物の胚は、親の体内にあるとき、親個体から何らかの方法でたとえば胎盤を通して栄養補給を受けているものと定義され、親の体内に稚仔が保育されてはいても、親から栄養補給を受けていない場合を「卵胎生」と呼んで区別してきました。
しかし、卵胎生と胎生の境界を定めるのは難しいことです。
母体から胎仔への栄養補給の有無が必ずしも明確ではないからです。
大きな卵黄を持った稚仔が母体内で孵化したとしても、稚仔の母体内に止まる期間、産出されてきたときの大きさや発育段階などからみて、それまでに母体からの栄養補給が行われなかったとは思いにくい場合が少なくないからです。
硬骨魚類の場合も、母体への栄養依存の有無による胎生と卵胎生の明確な区別はなお難しいです。
母体内の受精卵が受精膜に囲まれていることを栄養補給遮断の証拠として、これを卵胎生とよぶ意見もありますが、軟骨魚類のエイ類では、受精膜を有していながら親からの栄養補給を受けている例があります。
また、親魚からの栄養補給の有無を基本に考えても、卵胎生と単なる卵保育との境界もじつは明白ではありません。



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