2015年05月13日

柏木集保先生の見解 NHKマイルカップ

珍しく嬉しさを全身で表現した横山典弘騎手
 予測されたように、やっぱりペースは速くならなかった。内から飛び出したレンイングランドを行かせてアルビアーノが2番手につけると、好スタートのクラリティスカイはたちまちインの3-4番手につけた。2歳10月の「いちょうS」を、1分33秒5の2歳コースレコードで完勝したときとほとんど同一のレース運びである。

 いちょうSと、NHKマイルCのレース全体のペースは少々異なり、

▽いちょうS「前半46秒3-後半47秒2」=1分33秒5
▽NHKマイルC「前半47秒2-後半46秒3」=1分33秒5

 前後半が逆ではあるが、クラリティスカイ自身の刻んだ前後半のバランスは、

▽いちょうS推定「前半47秒2-後半46秒3」であり、
▽NHKマイルCは、推定「前半47秒5-後半46秒0」だった。

 勝ちタイムがまったく同じだったことも驚きだが、クラリティスカイ自身のレースの中身は、相手も、馬場状態も、レース全体のペースも異なるのに、道中のラップバランスはコンマ2-3の差だけで、ほとんど同一である。

 ベテラン横山典弘騎手(47)は、ゴール直後から珍しく嬉しさを全身で表現した。これは、相手との力関係や、レースの流れがほとんど考えていた通りであり、それをまったくスキなしの思い描いていたレース運びで、思った通りのスパートで勝つことができた。痛快だったのではないか、と想像したい。

 ゴールドシップの天皇賞・春は、イメージしたレース運びを、スタートから再三修正しつつの苦しいレースだった。それで勝ったうれしさも最高だが、東京のマイルG1を思い描いた内容そのままに快勝した楽しさは、また格別なのかもしれない。これでNHKマイルCは、17回乗って【2-5-2-8】である。

 クラリティスカイは、2001年に勝った父クロフネと父子制覇達成であると同時に、祖母タイキダイヤの半兄にあたるタイキフォーチュン(第1回の勝ち馬)につづいての勝利である。7代ほどさかのぼると同じ牝祖に辿りつく2003年のウインクリューガー(ディープインパクトといとこ同士)も合わせ、エリザベス女王の好む牝系ファミリーのNHKマイルC3勝目でもある。

 クラリティスカイは、3歳馬にしては大事なところで冷静さを失わない、いい意味での心身の完成度が高い。したがって、陣営が強気に展望する「安田記念」への挑戦は歓迎したい。挑戦しなければ始まらない。ただし、公平にみて昨年のミッキーアイル(16着)ではないが、相当苦しいレースになることは避けられないだろう。相手をねじ伏せる迫力が欲しい。

 2番手から抜けだしたアルビアーノ(父ハーランズホリデイは、ストームキャットの孫世代)は、牝馬ながらまた一段と体を大きく見せていた。まだまだボテッと見せるあたり、完成度はクラリティスカイに及ばないが、楽な流れで先行馬ペースに乗ったとはいえ、これで【3-1-0-0】。人気のグランシルク、ミュゼスルタンを封じたから立派なものである。もっと厳しい流れだったら苦戦だったのかと想像すると、そうとも思えない。厳しいペースなら、逆に差し馬勢も上がり33秒台で伸びるような脚は使えないから、もっといい勝負だったかもしれない。

 みんなスローに近い流れになりそうなことは百も承知だった。ハイペースが当たり前の中山のニュージーランドT1600mでさえ「前後半47秒2-47秒6」。前半1000m通過59秒0の緩い流れになったのがこの世代である。さすがにどの陣営も「もっと流れてくれれば…」とかの敗因は直接は口にできなかったが、東京の1600mのG1で「流れは味方しなかった」のトーンをにじませては、キャラクターがはっきり確立してしまった古馬なら仕方がないが、レース内容を高めたい成長期の3歳同士では、少々つらいところがある。

 1番人気のグランシルク(父ステイゴールド)は、出負けして大きく置かれたニュージーランドTを、猛然と追い込んで小差2着だった。時計は1分34秒9(自身の上がり33秒7)。500万条件快勝がやっぱり中山の1600mで1分34秒4。コースも流れも異なるが、今回は1分33秒9(自身の上がり34秒1)。走破タイムは毎回ほとんど大差がない。ニュージーランドT激走の疲れはなかったと思えるから、完敗である。

 母ルシルク(父ダイナフォーマー)は、共同通信杯を勝ったブレイクランアウト(父スマートストライク)の半姉。力強さあふれる好馬体だが、どちらかといえばマイラー型の少ないステイゴールド産駒。1分33秒台前半になってはもっと苦しいのではないかと思わせてしまったあたり、現時点での1600m挑戦は悪くはないが、目ざすはマイラーの道ではないだろうと感じた。少なくとも快速タイプではない。また、これは自分の反省もこめてだが、中山で猛然と追い込んだ馬は、案外、東京は合っていないことが多い。

 ミュゼスルタン(父キングカメハメハ)は、中間、陣営が超強気だったように素晴らしい状態だった。坂上から猛然とスパートして粘るアルビアーノに迫ったが、クビ差及ばず3着。ミュゼスルタンの上がりは「33秒8」。勝ったクラリティスカイの上がり33秒9と5分だった。

 今季の東京の1600mは、新潟の直線だけの決着とは求められるものが異なる。そうは切れない。ミュゼスルタンは快勝した新潟2歳Sが「1分33秒4」の2歳コースレコードだった。豊かなスピード能力を秘めているのは間違いないのに、今回も2歳Sとほとんど同じ「1分33秒7」である。この先をにらんでの控える作戦は納得だが、今回はこのペースだから、強気(積極的)にクラリティスカイのようなレースでも良かったのではないかと思えた。

 アヴニールマルシェ(父ディープインパクト)もミュゼスルタンと同様に、ゴール前はまだいくらでも脚はあったように映った。陣営が表明したわけではないが、アヴニールマルシェは祖母のキョウエイマーチ(桜花賞馬)に似た体型はたしかに心配でも、日本ダービーに出走意志を示しそうに思える。条件賞金獲得1650万円。順番をつけると危ないが、皐月賞が15頭立てだったくらいだから、出走できる可能性はかなりある。エンジンがかかったのは坂上からであり、今年はまだ2戦しただけ。活力は十分に保たれている。

 決して崩れなかったアルマワイオリ(父マツリダゴッホ)は、今回は6番人気で9着。道中とくに行きたがっていたわけでもないが、再三もまれて、スローの多頭数でスムーズに展開しなかったのが敗因か。それなりの時計の求められるレース向きではない印象も残った。

selvas2 at 09:00コメント(0) 

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