「なんでこんなことも分からんのか!!」
と、口に出して田代は黙った・・・
言ってはならない事だと自分でも分かっているのだが
イライラして、つい口にでてしまったのだった。
この会社を土木作業員主体から現場管理者主体の会社へ転換させようと田代は必死だったが・・・
その改革に職員の能力がついてこれてないのは現実問題として受け入れなければならなかった。
続きを読む「経営者への道」は戦国みつをのサラリーマン時代を描き、そして経営者になるという意識が芽生えたところで終了しました。 その続編である本作は、戦国みつをのその後を描き、どのような経験をして現在に至ったかを描きます。 関係者各位に迷惑がかかるのは本意ではないので、脚色を加えますのでフィクションの小説としてお読みください。
「なんでこんなことも分からんのか!!」
と、口に出して田代は黙った・・・
言ってはならない事だと自分でも分かっているのだが
イライラして、つい口にでてしまったのだった。
この会社を土木作業員主体から現場管理者主体の会社へ転換させようと田代は必死だったが・・・
その改革に職員の能力がついてこれてないのは現実問題として受け入れなければならなかった。
続きを読む「やったろうか!コラァ!!」
広島市役所の下水道課、入札室で大声を上げた男がいた。
熊井卓也・・・
株式会社 熊井組 代表取締役であった。
入札室の空気は凍り付き、熊井が大声をあげた相手の業者は
入札の札を引っ込め、下を向いた・・・
「われが命惜しうないなら落札してみいや」
続きを読む所轄の税務署に個人事業の届出をしたのだが・・・
通常の生活に何の変化も無く、公園工事は完成し
これが戦国の個人事業での最初の現場であり、最初の入金であった。
戦国はまだアルバイト気分のままノンビリ毎日を過ごしていた・・・
1ヶ月後、公認会計士の先生から電話がかかった。
「戦国さん、6月分の資料がまだなので出してください。」
ん?
なんもやってないし(汗
続きを読む
「はじめまして!戦国と申します!」
銀行から紹介された公認会計士の事務所へ行った戦国は
インターホンを鳴らした。
「やかましいわー!!」
事務所の中から大声が響き、
ガッシャーン!!
何かが壊れる音がした(汗
な・・なに??
帰ろうかな(汗
続きを読む個人事業は儲かるで!!
戦国は個人事業として「戦国組」を起こしたことを常務に伝えた。
常務は笑いながら
「それがええ、それがええ!
個人事業は儲かるけぇのぉ!
個人事業で現金貯めたらええよ!」
なぜ個人事業は儲かるのか??
戦国は不思議に思った。
続きを読む「じゃが、3万円しか無いですよ、お金」
意識だけは個人事業者になったのだが・・
お金は無いし、何をしたらいいのか分からない状況で
戦国は急激に不安になったが・・・・
黒井課長の次の一言で不安は吹き飛ぶのだった。
「戦国さん、個人事業なんて深く考えたらいけませんよ。
わしが社長じゃ!!
言うた時点で誰でも社長になれるんですから。」
続きを読む「わしは個人事業者だったのか!!」
会社が倒産して以来、アルバイトをしているという感覚だったが
仕事を請け負って、その成果に対して報酬をもらう・・・
これはれっきとした「事業」であるという。
現場で管理監督業務の請負いをメインにしてきたこの何ヶ月
「個人事業」だと他人から言われて気付いたが
これは「商売」なんだ・・・・
確かにわしは商売をしていたんだな・・・
自覚が無いまま「経営者」になっていたのか・・・
続きを読む
「戦国様、社長じゃないんですか?」
支店長が目を丸くして言う。
誰が社長〜言うたんよ(汗
勝手に勘違いして、ビックリされても困るで!
「黒井君!!ちょっとこっちに来てや!!」
支店長はあわてて戦国へ最初に声をかけた職員を呼んだ。
なんかよく分からん展開に戦国はただコーヒーをすするしか無かった・・・
続きを読む
「お客様、どうぞこちらへ」
銀行の窓口の女性職員にセクハラまがいのバカ話をしていた戦国は
支店の奥に座っていた男性職員に声をかけられ
支店内の一室へ連れて行かれたのだった・・・・
もちろん戦国にとって銀行の窓口より中へ入るのは初めてであり、知らない世界を見られるという好奇心と、なんかヤバイ事態になったかの(汗
という心配とでドキドキであった。
続きを読む
「予備校、大学にかかった資金を親に返さなければ」
戦国は常々、そう考えていた。
施工管理のバイトなどで戦国は通帳に300万円くらいあったので親に返すことにした。
返さなくては親に申し訳なくて仕方がなかった。
これは常に戦国が自分を兄と比較してしまうところからくる考えであった。
続きを読む打つ手の無いまま、マスターの会社は1回目の不渡りを出し、事実上の倒産となった・・・
手形決済の現金を用意できたとしても、自宅、工場などが他人の手に渡っており営業の継続が不可能・・・・
決定的な敗北は・・・
当事者であるマスターが早期に諦めてしまっていたことだ・・・
奥さんの行動により、自分の会社が立たされた立場・・・
信頼しきっていたパートナーの取った行動に対して、マスターは何を思ったのか・・・
マスターは手形決済を早い段階で諦めた・・・
続きを読む「聞いたことないで!!
宗教やっとる極道じゃことの!」
戦国の後輩である通称「坊ちゃん」の親父、権田社長はそう言って笑った。
「いや、社長!確かに宗教関係者からそう聞いたんですよ」
確かに大黒寺の和尚が言った・・・・
天聖教会はヤクザの資金洗浄組織だと。
しかし、権田社長が知らないとなると・・・・
「戦国!日本人じゃないかも知れんど!!」
続きを読む「戦ちゃん、いったいどんな修羅場くぐり抜けて来たん」
車での移動中、マスターがボソリと言った。
どんな人生??
わしゃ、普通の人生を歩いてきたつもりなんじゃが(汗
なんか変か??
空が白み始めた・・・・
気がつくと午前6時を過ぎていた・・・
続きを読む宗教を隠れ蓑にしたヤクザのマネーロンダリング組織
信者を洗脳し、財産を全部寄付させたり、財産の無い若い女性信者には売春をさせ寄付させているという・・・
ヤクザがそこまでやるか?
戦国の知る「ヤクザ」の概念からは逸脱した組織であった。
宗教団体への寄付金・・・
寄付したら最後、返還要求はできないのだろうか・・・
しかも相手はまともな宗教法人では無いみたいだし・・・
続きを読む
「マスター、ここが大黒寺じゃ」
戦国とマスターの乗る車が大黒寺の正門に着いたのは午前4時近くなったいた。
寺はシーンと静まりかえり、車のアイドリングの音が大きく感じた・・
寺の正門にあるインターホンを何回も押すが全く中で反応が無く
無人のような雰囲気だった・・・・
まだ寝とるんか和尚は・・・・
じゃがテレビとかでは寺の坊主は暗いうちから起きて修行しとったで・・・
あの強欲坊主は修行もクソも無いか・・・
戦国が諦めて車に乗ろうとしたとき
1台のタクシーが寺の正門の前に横付けした・・・
「あっ!!和尚!!」
戦国と目が合った和尚はタクシーの運転手に車を出すように指示したが
間に合わず、運転手はタクシーのドアを開けてしまうのだった・・・
続きを読む「ばあちゃんが・・・・」
マスターの奥さんを新興宗教に導いたのは、マスターの母親であるばあちゃんだった・・・
マスターの話からすると、ばあちゃんは老人会の仲間から誘われ、最初は健康のサークルだと思って集会に参加していたらしい。
彼らは少しずつ少しずつ、ばあちゃんを洗脳していったのだろう・・・
マスターとしては別に高価な壺を購入するわけでもなく、年寄りが元気に喜んで参加している集会だから止めるまでもないと思っていたらしい。
洗脳されたばあちゃんはマスターの奥さんを集会に呼び、一緒に拝みはじめる・・・
洗脳の連鎖だ・・・
結果はこうなってしまったわけだ・・
続きを読む「ありがとうございました〜!」
その日、最後のお客さんを見送った戦国は店の後片付けを始めた。
時計は午前1時を指していた。
ばあちゃんは体調が悪そうだったので10時頃に帰らせて戦国が一人で店を切り盛りしていたので、かなりお疲れモードであった。
朝7時には現場事務所へ出勤したかったので、片付けを大まかに済ませて帰ろうとした。
その時、店のドアが開いた・・・
「よっ、戦ちゃん!!」
ん?
「マスター!??」
続きを読む公園工事は設計図面を見てて楽しいものがある。
図面が味気ない工事のナンバー1は下水道工事である。
平面図に下水管の勾配のみの素っ気無い図面だ。
建設会社の新入社員を下水道工事につけるのは、この素っ気無い図面が一番簡単で読みやすいからである。
経験も知識がほとんど無くても読めてしまう図面はこの下水道工事の図面だけであろう。
逆に一番面白い図面というのは宅地造成工事の図面だろうな。
道路、擁壁、下水道、公園等など、あらゆる工種が折り込まれていて見てて知的に興奮してしまう。
続きを読む「泥棒が入ったか!?」
ある日、戦国が公園工事の現場内に設置した現場事務所に出勤すると・・・
事務所の裏のガラスが壊されていた・・・
このような状況に直面すると、別に泥棒が目の前にいるわけではないのにドキドキしてしまう。
ドアの鍵をあけて、中に入り事務所内を見回して・・・・
「だれがこんなところでセックスしたんか〜?!」
続きを読む
大手ゼネコンにいた優秀な現場技術者は
地場の建設会社に転職したとき
使えない人間になってしまう。
これは仕方ないことで
大手ゼネコンの現場規模は大きく、現場技術者は現場を動かす歯車のひとつなのである。
現場の監督業務を数人で分担し遂行する。
例えば安全管理の担当は、ズーッと安全に関しての業務を続ける。
地場の建設会社の現場監督は予算編成から現場管理まで全て一人でこなす。
つねに自分の技術に裏付けされた「決断」をせまられる位置にいるのである。
大手ゼネコン出身の監督は施工管理に偏りがあり、決断力に欠ける者が多い。
なぜなら現場を左右する決断をしなければならない事態に直面することをほとんど経験していないからである。
ここで同じ現場監督でも大手と地場の能力の差がでてくるのである。
学歴でいえば確実に大手ゼネコンの職員の勝ちではあるのだが、現場での経験、業務の集中による多忙、決断する機会の数が地場の監督を優秀なものにしていくのである。
続きを読む「私を彼女にしてください」
と、告られたのは公園工事を始めて2週間くらい過ぎた時だった。
戦国が現場を終えて、小料理屋へ出勤して準備をしているとき
一人の女性が入ってきて、いきなり戦国に向って言ったのだった・・・
「はぁ?」
というか・・・誰、キミ??みたいな感じだった。
西暦2000年2月の話である。
続きを読む戦国はこれから着工しようしている公園工事の現場に
周囲をみまわしながら立っていた。
海から吹く冷たい風が気持ちよかった。
現場を眺めては、図面を広げてみる。
また眺めては図面を見る・・・・
よっし!着工するかっ!
まだ何も無い埋立地だが、戦国の目には完成した公園が確実に見えていたのだった。
続きを読む「い・・いかん・・・
わしはバカになったんか?」
公園工事の工程表を作成しようと意気込んだ割には・・・
ん〜・・・
進まないうちに時間が経過していた・・・
そんな自分に苛立ちを覚えながら
「脳ミソが退化したか?」
と本気に不安になった戦国であった・・・
続きを読む「これが設計書じゃ、公園の」
戦国がこれから着工する公園工事の設計図面や数量表などをまとめた書類を常務が持ってきた。
場所は広島市の沿岸部・・・
結局、広島市へ戻るのか(汗
談合によって広島市が予定した予算のほぼ満額で落札した物件だった。
常務もいい物件を持ってるなぁ〜と感心する戦国であった。
続きを読む「一級土木の名義を貸してくれや」
名義?一級土木施工管理技士の資格の名義を?
常務にそう言われて、なるほど!!と思った。
戦国の持つ資格の名義を常務に貸せば公共工事をその分、受注できる。
会社が倒産して戦国の資格はどこにも所属してない状態になっているので、常務の会社に就職している形にすれば役所に対して使えるのだ。
これが俗に言う「名義貸し」と言われる・・・
建設業法違反の違法行為である。
続きを読む「みんな再就職できたか?」
常務は相変わらず元気な中年だった。
安芸市には造成工事の事前測量で来ていて、偶然吉野家に入った所
戦国のまん前のカウンターに・・・
なんか運命を感じるわ!
と、戦国は感動したのだった。
腐れ縁というものは存在するのだな・・・と。
続きを読む「現場監督に戻りてぇ〜」
年が明け、西暦2000年を迎えた戦国は
毎日、そう思うようになっていた。
小料理屋のマスターも楽しいのだが・・・
何か自分の住む水では無いと思い、マスターへ相談したのだった。
「ええよ、ええよ。
忘年会シーズンを助けてもらっただけでも十分よ
ありがと、ありがと!」
マスターはそう返事をしてくれたのだった。
続きを読む「僕の夢はギタリストになることなんですよ!!」
西井くんが酔った勢いで切れた(汗
切れた人間をいじくりまわすのを得意技とする戦国は嬉しくなり
「何故、切れるか、この小僧!!」
戦国は西井くんのハートの炎に油をそそいであげたのだった。
「みんなで僕の夢を茶化して!!」
半泣きになった西井くんは必死になっていた!
続きを読む「そういえば戦国さん!
藤井謙二と同級ですよね!」
西井くんが突然言った。
藤井・・・?
「誰それ?ポルノ男優か?」
「違いますよ!
MY LITTLE LOVERのメンバーですよ!!
戦国さん福山葦陽高校の卒業生ですよね!
藤井謙二と同級ですよっ!!」
続きを読む
「戦国さん!
オレはバンドでプロになりたんですよ!!」
年明け5日に店を開くと、常連がゾロゾロと出勤してきた。
偶然だけど常連の顔ぶれがそろったから新年会をやろうってことになり
のれんを下げて表の電気を消した。
この頃、常連さんの人数は10人くらいに増えておりにぎやかな新年会となった。
その中で20歳の若者・西井くんが何を思ったのかそう言いだした。
「東京へ出てプロになりたいんです!!」
続きを読む
「戦国!元気じゃったか!」
夜の流川通りで、倒産以来姿を消していた営業部長が
突然、戦国の前に姿を現した・・・
営業部長ら潰し屋グループにより仕組まれた陰謀により倒産に追い込まれた会社・・・・
その最後の引き金を引いたこの男・・・
よくわしに声をかけられたな・・・・
戦国はそう思った。
続きを読む予備校仲間との飲みでの会話の半分は浪人の頃の昔話だ。
10年も経つと、みんなある程度、人生の方向性を持ち、それぞれの人生を頑張っていた。
全員、30歳を過ぎているのだが不思議と結婚している者が一人もおらず、ワイワイガヤガヤと学生のような感じで飲んでいた。
続きを読む戦国は予備校時代の友人と広島市内の繁華街・流川を飲み歩いていた。
19歳で知り合った友人たちだが、10年以上たった今も楽しく飲める仲間たちだった。
大学時代の友人たちと大きく違う点が1つあった。
飲みの席で「会社のグチ」を一切言わない点だった。
戦国にも共通する意識であったが
飲みの席で他人に自分の会社のグチを言うくらいなら辞めたほうがいい・・・・
その点で戦国は予備校時代の友人と酒を飲むのが好きだった。
2000年 年明けのことである。
続きを読む「戦国さん、親御さんから見たら
子供は何歳になっても子供なんよ。
お正月はちゃんと実家に帰らんと。」
マスターのばあちゃんに言われ、戦国は大晦日の夕方に実家のある福山へ帰省したのだった。
1999年は戦国の人生の中で一番、激動の年だった。
戦国みつを起業まで、あと5ヶ月。
続きを読む
「ばあちゃん、無理せんのよ」
戦国はいつものようにマスターのおばあちゃんと二人で小料理屋を営業していた。
忘年会シーズンということもあり、連日大忙しだった。
この客の多さは戦国がお客で通っていた頃、見たことの無いものだった。
忙しさに慣れていないばあちゃんを戦国は心配でならなかった。
続きを読む「トルエンか!?」
戦国はチンピラに聞いた。
女の子の臭いは明らかにトルエンの臭いだった・・・
「そうっすよ、知り合いの塗装屋が流してくれるんすよ」
悪びれた様子も無くしゃべるチンピラたち。
「僕らはやってないっすよ!!頭がいかれるし!
この女がトルエン、トルエン言うけぇ」
続きを読む「やるんか!!コラァ!!」
チンピラが大きい声を上げた。
戦国はドキドキした・・・・
基本的に暴力は嫌いだし、このような人種も大嫌いだったので係わり合いになりたくなかった。
が・・・・・
弱いものに集団で暴力を振るう者はもっと嫌いだった・・・
「やるんならやろうや!!
その代わり最後までやる覚悟してかかってこいや」
続きを読む
「いらっしゃい!!」
翌日からマスターとして戦国は小料理屋に立った。
戦国の横にはマスターのおばあちゃんがニコニコしながら立っていた。
常連客はそろって同じことを言った。
「な・・・なんか怖い店になったみたい(笑)」
客商売にはいかつすぎる人相だと教えられたのだった。
続きを読む
「戦ちゃん、この店いるか?」
戦国がいつもの小料理屋で晩飯を食べていたときのことだった。
はぁ??
「マスター・・・な、なにを急に??」
その頃、戦国は店の主人のことを何故かマスターと呼ぶようになっていた。
「いや、戦ちゃん無職じゃん。
あんた、いいもん持っとるから店持っても十分やれるで!
この店あげるからやりんさいや!」
続きを読む「この安芸市はわしのものよ」
市長である大河内の口癖であった。
すべての公共機関の上層部は自分の親族、幼馴染で固めてある。
あとは息子を県議に当選させ、次男を時期市長に当選させれば
この「大河内王国」は安泰だ。
地元の建設業者には自分が公共工事を割り振り、食べさせてやっている。
選挙になると先頭をきって票を集め歩いてくれる。
全ての産業は自分の味方だ。
続きを読む「これからは女の時代です!
女性パワーで頑張りましょう!!」
女社長・小川玲子はミーティングで社員を前にそう演説した。
この数ヶ月でいままでいた主任クラス、係長クラスは全て女性に入れ替えられていた。
部長の山城は思った・・・
男性である自分は、いつまでこの会社に残れるのだろうか・・・
続きを読む「残土捨てたら、管2本持ってこいや!!」
土建屋の社長・神崎一郎は師走の中、下水道工事を進めていた。
800万円の不渡りをくらい、受け取った約束手形が紙切れになってしまったからだ・・・
このことにより会社がどうこうなるわけではないが、子供への仕送りを稼ぐのに必死であった。
1999年 師走のことである。
続きを読む戦国はいまの河川工事を完成させ、錦組を去った。
社長、篠原に軽く挨拶し、また無職に逆戻りしたのだった。
1999年のクリスマス前のことだった。
世の中は師走だったが、戦国は何をするわけでもなく、昼間は読書をし、夜はあの小料理屋へ出かけて晩飯、そして酔っ払いの討論会に出席って感じだった。
続きを読む「戦ちゃんは一生、錦組におるつもりか?」
ご主人がビールをクイクイやりながら言った。
「あんたがこれからずっと錦組で頑張って会社を変えていこうって言うんなら、今の戦ちゃんの態度はわしは立派じゃと思うで。
ずっとおるつもりが無いんなら、自分を通さんほうがええよ。」
その通りだった・・・・
続きを読む「教育熱心な教師は学校から
締め出されるんですよ。」
小料理屋の常連・大西という塾の講師はそう言った。
教育熱心な教師が学校を出て行くのなら・・・・
じゃあ、今学校で教壇に立って授業しているのはどんな教師なんだ・・・
戦国は単純にそう思った。
続きを読む村の住民は何があっても村を離れることは出来ない。
長年住み慣れた村を離れる勇気を持たないから
必死で村人であろうとする。
村の秩序を乱すよそ者を嫌う風習はそんな所からきている。
安芸市という「村」の中で・・・・
錦組という「村」の中で・・・・
篠原の立場から見れば、戦国は村の秩序をかき乱し、自分の立場を危うくする危険な存在なのだと・・・
続きを読む「戦国さん、ピッチ落としてくれにゃぁ
わしらの立場が無いでぇ」
予想通り篠原課長のクレームが入る。
戦国の現場は急ピッチで進んでおり、工事は完成度80%まで一気に進んでいた。
それは戦国と協力業者の努力であり、少しでも早く工事を終わらせ利益を生もうという態度の現われであった。
錦組の作業員たちは自分たちの立場を危うくする戦国に対してあからさまな非難をあびせた。
続きを読む「イケイケドンドンじゃ!!」
篠原課長の指示・・・
「工事をゆっくりやってくれ。自分たちの遅さが目立つから」
そんなもん知るか!!
突貫工事はわしの十八番!!
急ピッチで終わらせてくれるわ!!
続きを読む
戦国は錦組の篠原課長がどのような人間なのかを思い知らされた。
篠原はわざと戦国に川の増水の件を教えずにいた。
戦国は増水のことなど何も知らずに工事を着工し・・・・
結果、川の増水により、現場は水没、戦国も協力業者も危険な目に合うこととなった・・・
その晩、戦国は一人でこの町の飲み屋街を歩いていた。
篠原による行為は戦国を久しぶりに燃えあがらせていたのだった。
続きを読む