大手ゼネコンにいた優秀な現場技術者は
地場の建設会社に転職したとき
使えない人間になってしまう。
これは仕方ないことで
大手ゼネコンの現場規模は大きく、現場技術者は現場を動かす歯車のひとつなのである。
現場の監督業務を数人で分担し遂行する。
例えば安全管理の担当は、ズーッと安全に関しての業務を続ける。
地場の建設会社の現場監督は予算編成から現場管理まで全て一人でこなす。
つねに自分の技術に裏付けされた「決断」をせまられる位置にいるのである。
大手ゼネコン出身の監督は施工管理に偏りがあり、決断力に欠ける者が多い。
なぜなら現場を左右する決断をしなければならない事態に直面することをほとんど経験していないからである。
ここで同じ現場監督でも大手と地場の能力の差がでてくるのである。
学歴でいえば確実に大手ゼネコンの職員の勝ちではあるのだが、現場での経験、業務の集中による多忙、決断する機会の数が地場の監督を優秀なものにしていくのである。
戦国が工事している公園は広島西部の沿岸にあり、埋立地の中にあった。
埋立地内では他にも道路工事、護岸工事をしている業者がたくさんいて広島県の港湾振興局主導のもと
「安全協議会」なるものが作られていた。
安全協議会は週に一度、その現場の責任者が集まり、その週の安全目標や反省点などを発表するというものだった。
その議長となる会社は全国大手の大洋建設(株)であった。
この会社は埋立てでぼろ儲けし、巨大化していった企業であり広島の港湾関係の工事を牛耳っているのだった。
広島市内で発生した工事で余った土を有料で引き取り埋立てに使い県から工事代金をもらうという二重取りみたいな工事で儲けていく。
戦国は大洋建設の監督たちと話しをする機会が割りと多かったので気付いたのだが・・・・
現場の所長クラスの人たちは優秀で話しをしてても不快ではなかったのだが、その下で働く若い職員たちの言動は戦国を不快なものにした。
「僕らは言われたことだけやっとればええんですから」的な言動が目立った。
なんだ・・この温度差は・・・
所長は熱い人なのに職員は冷めている。
「戦国さん、やっぱり分かるか??」
戦国は所長に疑問をぶつけてみた。
所長は笑いながらそういった。
「なんか妙に冷めてますよね・・・
現場管理はもう少し熱い男でないと士気に関わりますよ」
戦国が真面目にそう言うと、所長はうなづきながら
「戦国さん、わしが入社した30年前の大洋建設はまだ小さい会社でな。
予算管理から現場の品質管理、労務管理、工程管理なんか全部一人でやっとったんで。
工業高校を出て、仕事はきつかったが楽しかったなぁ・・・」
所長が語り始めた。
所長は大洋建設の叩き上げなんだな・・・
「戦国さん、この現場で高卒はわしだけなんで(笑)
あとの人間は全員大卒よ(笑)
わしより給料ええヤツもおるし。
与えられた仕事を確実にこなしていけば給料がもらえる。
そういう動きしかできないんじゃな。」
「寂しいですねぇ・・・
現場とは、もっと熱いものなのに。」
「まぁ、時代といえば時代よ、戦国さん。」
所長はそう言い、タバコに火をつけた。
これからも現場管理の職員の質はどんどん変化していくだろうな・・・
戦国はそう思った・・・
続く。。。
この物語はフィクションである。
特定した個人、団体とは一切関係ありません。
作者