昨年、待望の五輪競技となった女子ボクシング。その第8回全日本選手権大会が、香川県高松市の亀水運動センターで行われ、46選手がしのぎを削った。

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 五輪の新競技として、初めて迎える全日本女子大会。トーナメント戦を決勝まで行えるようになったことで、名称には「選手権」と付け加えられた。また、60点法のペーパー採点から、Gマシーンによるコンピュータ採点(5人の採点で、最も高い数と低い数字をカットして、3で割るシステム)へと変更されるなど、女子の環境は、今も著しく変化を続ける。
 「しずちゃん」の愛称でおなじみのお笑いタレント、山崎静代(吉本興業)がエントリーしたことも、五輪採用の影響か。山崎は唯一のヘビー級エントリーで、ライトヘビー級の滝本里律子(新谷産業)と、2分2ラウンドのスパーを敢行。終了後には、出来の不満に、思わず悔し泣きを見せるなど、その姿勢は本気だ。五輪出場を目指し、合宿に参加する意欲も口にした。
 各級の決勝戦。48kgでは村山真理(井上特許事務所)が、出入りを続けて門倉智亜紀(鳴海中教員)を封じた(16.3対4)。昨年は、ベトナム遠征にも参加した村山は、年齢の規定により、来年が最後となる。
 池原久美子(正起屋)と伊藤沙月(日章学園)の優勝候補を、それぞれ破って決勝に進んだ藤満霞(平成国際大)と岩川美花(フジサービス)では、岩川が藤満の消耗を待ち、後半に勝負をかけて、同点の優勢勝ち(○11.7対11.7)。
 五輪階級である51kgで暴れたのは新本亜也(クリエイティブジャパン)。これまでは、攻撃が顔に集中し過ぎる感のあった新本だが、今回はその荒々しさを残しながら、冷静に攻撃を組み立て、田中知世(岐阜工業高)を攻めまくった。
 国内無敗の箕輪綾子(日体大)は、全試合RSC勝ちで54kgを制覇。決勝でも、藤井里美(白鴎大足利高)の懐へ踏み込む際、ストレートとフックを使い分け、ファイターとしての質の向上を披露した。試合後、「長距離戦も練習している」とコメントした箕輪。前回の決勝では、新本に圧勝しているが、近い将来、五輪の出場権をかけての最終決戦を迎えそうだ。
 57kg級は今大会のメインイベント。高1から2連覇中の釘宮智子(奈良朱雀高)が、階級を上げ、6連覇中の水野知里(大新東ヒューマンサービス)に挑んだ。距離を取るサウスポー型の釘宮は、以前の体力的な脆弱さを克服。水野の周りをよく動き、多彩に攻めで接戦をものにした。(12.3対11.3)
 明戸司(メトロコマース)は試合をせずに優勝。「次は勝って優勝したいです」と照れ笑い。
 小此木亜希子(安中市役所)は、森尾幸菜(群馬県立女子大)から初回にカウントを奪い、2勝目で制覇した(4.3対1.7)。
 最優秀賞には箕輪、優秀賞には新本、敢闘賞には釘宮が選ばれた。3人が光らせたのは、試合を楽しむほどのリラックスぶりだった。あれほどのびのびと試合のできる選手は、男子でも少ないだろう。
 今年9月には、中米のバルバドスで世界選手権、12月には中国でアジア大会も控えている。今回の内容を見る限り、課題は、今後も底辺の拡大となりそうだ。
とはいえ、女子にはボクシングを始めるきっかけすら乏しく、男子以上の苦労を要すのも現実。そんな中、意外な貢献をしていたのが、今回で廃止となる「演技の部」だった。アマとは対照的に、プロでは「エアボクシング大会」を始めたばかり。今大会の優勝者にも、軽量級の齋藤凛は11才、軽重量級の吉居葉子は50才と、出場者に見逃せない年齢幅がある。全国のジムには、試合に関心のない女性が、練習を楽しんでいるとなると、最も身近な底辺拡大とは、ここへの斬新な“呼び水”にも思える。開催地に負担のかからない、新たな踏み台に期待したい。


[ 名鑑プロフィール ]
46kg・村山真理(むらやま・まり)
日連推薦・井上特許事務所
1976年10月16日生まれ
長崎県長崎市出身
17戦14勝(1KO・RSC)3敗
154 cm
右ボクサーファイター

48kg・岩川美花(いわかわ・みか)
兵庫・フジサービス
1983年7月26日
高知県香南市出身
7戦6勝(3KO・RSC)1敗
161 cm
右ボクサーファイター

51kg・新本亜也(しんもと・あや)
広島・クリエイティブジャパン
1986年12月10日生まれ
広島県広島市出身
25戦20勝(8KO・RSC)5敗
157 cm
右ボクサーファイター

54kg・箕輪綾子(みのわ・あやこ)
日連推薦・日体大
栃木県宇都宮市出身
14 戦12勝(7KO・RSC) 2敗
右ファイター

57kg・釘宮智子(くぎみや・ともこ)
奈良・奈良朱雀高
1991年9月18日生まれ
奈良県桜井市出身
15戦12勝3敗
165 cm
左ボクサーファイター

60kg・明戸司(あけど・つかさ)
埼玉・メトロコマース
1982年2月28日
埼玉県さいたま市
(0戦)
165 cm
右ボクサーファイター

64kg・小此木亜希子(おこのぎ・あきこ)
群馬・安中市役所
1975年12月7日
群馬県安中市出身
2勝(1KO・RSC)
168cm
右ボクサーファイター

91kg・山崎静代(やまざき・しずよ)
東京・吉本興業
1979年2月4日
京都府福知山市出身
(0戦)
182 cm
右ボクサーファイター

(ボクシングマガジン2010年5月号掲載)