[ ヨーロッパ選手権 ]

(56kg級 決勝)


(75kg級 決勝)

(階級が上に行くほどブロッキングが困難になり、ボクシングが軽快になる傾向がある)

 少なくともアテネ五輪、北京五輪、来年のロンドン五輪だけでも、ボクシング競技のルールが、大きく異なってきた。五輪競技にとって、ルールが頻繁に変わるのは、もはや宿命か。2006年にウー・チンクオ政権となったAIBA(国際ボクシング協会)では、「透明性」を主張する一環としても、オープンスコアを導入し、その扱いかたを、探り続けてきた印象がある。
 ルールが変わること自体、ルールだと思って間違いないが、新しい採点は、今のところ好評らしい。少なくとも、五輪予選を兼ねた9月の世界選手権までは、このままでいきそうだ。

 ルール変更の中で、選手たちは、スタイルを調整し、世界のトップレベルでは、この適正能力に差が出てくる。国際大会に出始めた当初、そのスタイルを肯定された07年世界選手権3位の川内将嗣には、北京五輪以降、それを否定された3年間がある。川内の得点源だった攻撃の多くが、アピール不足とされるようになった。個人的には、3年前に全日本選手権を制した他の選手でも、三須寛幸、重田誠のような直感型が、順調に成長すると思っていた。

 今回のヨーロッパ選手権で、目を見張ったのは、選手たちの器用なスタイル修正だった。今までのルールでは、強い一打を当てるぶん殴り合いだったが、今回は、肩の力の抜けたパンチが、積極的に飛び交った。

 中でも、ドメニコ・バレンチノ(イタリア)のようなWSB参戦組は、ノーヘッドギア・8オンスのプロルールと平行して、いわゆる五輪ボクシングを続行している。この大会でも上位に進出したが、「強い選手は、何をやっても強い」という定説は、国際大会では成り立たない。世界選手権64kg級2連覇のセリク・サピエフ(ウズベキスタン)は、ルールが変わってから安定感が落ちた。米大陸やアジアでも、高い能力を発揮する逸材がいるが、結局、この「ルールの把握」に、ヨーロッパ勢と差が出ている気がする。“大陸別”を特徴としたAIBAワールドカップでは、ヨーロッパ・チームがAとBで、1位、2位を独占。もっとも、自分たちでルールを変えるのだから、当然とも言いたくなってはしまうが…。


(もうちょい続く)


(バレンチノの練習シーンより、魅惑のサンドバッグ操縦機)