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(1才上の村田とは、互いに敬語を使わない間柄)


 元選手どころか元コーチだった上林巨人のプロ転向第1戦が決定。11月19日の後楽園ホールで、小泉良太(北澤)との6回戦に臨む。
 第二の戦場となるプロのリングには、予定より2ヵ月遅く上がることになった。それでも、25才のルーキーに、焦りはない。
「どっちにしろ、ブランクは大きいですからね(笑)。あんまり変わらんと思います」
 上林は、広島弁交じりに照れ笑いを見せながら語る。

 熱狂的なジャイアンツファンの母が、巨人と命名した。しかし、兄の影響で始めたのは野球ではなくボクシング。アマ時代は、元・全日本バンタム級王者で88勝(47KO・RSC)14敗。キャリアは豊富だが、自他共に認める気がかりが3年間のブランクだ。09年の全日本選手権で成松大介(当時・東農大→自体校)に敗れて以来、上林は試合から遠ざかっている。
 ただ、その間に、何のキャリアアップもなかったわけではない。
「日大での指導経験は武器になると思います。やるのと教えるでまったく違ったので、考え方も幅が広がりました」

 所属先の竹原&畑山ボクサ・フィットネスジムとは、地元・広島の知人から竹原慎二会長を紹介される形で、つながりを持った。特別なコネがあったわけでもないこのジムを、再出発の拠点に選んだ訳を、上林は「もう一回、ゼロからボクシングをやりたかった」と語った。
 高校時代、ジュニア(現在のユース)の国際大会で優勝した上林は、引退まで「エリート」の宿命を背負った。期待は大きいが、二桁の黒星が物語るように、試練も多かった。北京五輪予選も、ライバルの萬田竜也(当時・東農大→引退)に出場権を奪われている。
「(予選からは)もう4年以上経っているんで、悔いは残っていないですよ。とりあえず、アマの経験を無駄にしないようにしますよ。例えば、リゴンドーを最後まで避け続けるとか(笑)」
 冗談の多さは、生活の充実から来るのかもしれない。最近の上林には、初々しさがある。

 7月26日、B級でプロテストに合格したことは、本人の予想よりも多く、マスコミやプロ関係者から注目された。ネームバリューは、まだ失っていない。
「井上尚弥の影でこっそりの予定だったんですけどね(苦笑)。あ、でも一個、井上の記事で譲れなかったことがあるんです。村田さんの弟分、井上じゃなくて自分ですよ(笑)」

 近年、村田からは、親しみをこめて「デブ」と呼ばれていた。体重は今後の主戦場であるスーパーバンタム級のリミットより、約12キロも重い67kgまで増えていた。
 同級には、かつて不覚を取った小国以載(当時・芦屋大→VADY)も東洋太平洋王座に就いている。過去1勝1敗ならば、決着戦も期待したい。遅れてきたルーキーは、どのタイミングで、エリート街道に乗り直すのか。

「とりあえず、デビュー戦、3ラウンド以内の倒します」

 プロ流のリップパフォーマンスを身につけたかのように、上林はそう豪語。しかし、すぐに拍子抜けするような冗談を付け加えた。
「4ラウンド以上、スタミナが持つか分からないんですよ。6ラウンドって長いのぉ」