夜のプレイリスト ホウム・ペイジ
 
Jessye Norman 「ライヴ!(クラシック銘盤ベスト1200シリーズ)」 (2016)
ライヴ!
※1988年に発売されたオリジナルの盤に入っていない曲が放送で流れたので、2016年盤と書いています。
 
インターナショナル盤(1988)
01. Arianna à Naxos - [Cantata] H.XXVIb No. 2
02. Lascia ch'io pianga - [Recitativo e Aria; from "Rinaldo"]
03. Dank Sei Dir, Herr
04. Rheinlegendchen (from "Des Knaben Wunderhorn")
05. Liebe
06. Schliesse Mir Die Augen Beide (Version 1907)
07. Wer Hat Dies Liedlein Erdacht? (From "Des Knaben Wunderhorn")
08. Schliesse Mir Die Augen Beide (Version 1925)
09. Das Irdische Leben (from "Des Knaben Wunderhorn")
10. Die Nachtigall
11. Mignon
12. Schneiden und Meiden (from "Des Knaben Wunderhorn")
13. Ich Trage Meine Minne, Op. 32 No. 1
14. Seitdem Dein Aug', Op. 17 No. 1
15. Kling!, Op. 48 No. 3
16. Great Day (Spiritual)
18. He's Got The Whole World (Spiritual)
19. Vocalise-Etude (En Forme De Habanera)
 
日本国内盤(2016)
01. 主よ、汝に感謝す
02. わが泣くがままに~歌劇≪リナルド≫より
03. 献呈 作品25の1
04. お前は花のようだ 作品25の24
05. 美しき異郷 作品39の6
06. 古城にて 作品39の7
07. 悲しみ 作品39の9
08. 春の夜 作品39の12
09. ミューズの子 作品92の1 D764
10. 湖上にて 作品92の2 D543
11. 海の静寂 作品3の2 D216
12. アヴェ・マリア 作品52の6 D839
13. 自然に寄せて D372
14. 憩いなき恋 作品5の1 D138
15. 糸を紡ぐグレートヒェン 作品2 D118
16. 恋はあざむいた 作品23の1 D751
17. 死と乙女 作品7の3 D531
18. 魔王 作品1 D328
19. わが恋は緑 作品63の5
20. ぼくらは踊りだしたい気持だ
21. すべては主の御手に
22. 大いなる日
23. 拍手
24. わが恋は緑 作品63の5
25. ぼくらは踊りだしたい気持だ
26. すべては主の御手に
27. 大いなる日

みなさんこんばんは。石丸幹二です。今夜の〈夜のプレイリスト〉はわたしの人生を変えた世界的に有名なアメリカ出身のソプラノ歌手Jessye Normanのアルバム『Live!』をお届けいたします。

今回お送りするJessye Normanは1945年、アメリカジョージア州オーガスタ生まれです。オペラ歌手としてもソリストとしても圧倒的な声量のドラマティック・ソプラノとして国際的な劇場、音楽祭に次々と出演。

深々とした豊かな声を持ち、そしてそのレパートリーは広い。世界的に有名なソプラノ歌手なんです。

そんなJessye Normanとの出会いは、さかのぼることわたくしが東京音楽大学でサックスを学んでいたころでした。たまたまNHKの〈芸術劇場〉という番組で彼女のリサイタルを観てたんですよ。

そのときJessye NormanはSchubert(シューベルト)の作品の"魔王"、この曲を歌っていたんですね。この『魔王』という曲の中には登場人物3人。子ども、父親、そして魔王、この3役を彼女は声だけで見事に演じ、歌い分けていたんです。

人間の声の持つ可能性、物語を音楽に乗せて伝えるこの魅力にわたしもとらわれまして、「こんなふうになりたい。こんな歌を歌ってみたい」、そうおもったんです。

わたしの人生で引き金を引いた、それが彼女。そんな彼女に興味を持ち、「こんな表現者になりたい」という想いのもと「ほんとにわたしはこれでいいんだろうか」、そうゆうふにわたくしをおもわせてくれた人なんですねこのJessye Norman。

このアルバムはHändel(ヘンデル)からSchumann(シューマン)やSchubertのロマン派歌曲、そして黒人霊歌までと幅広くJessyeの魅力が楽しめる1枚なんです。

さぁ、それではJessye Normanのアルバム『Live!』より前半を聴いてもらいましょう。
曲は、
Händel作曲"主よ、汝に感謝す"、
"わが泣くがままに"。
そしてSchumann作曲"献呈"、
"お前は花のようだ"。

こちらを聴いていただきたいのですが、このHändelの2曲目"わが泣くがままに"はオペラ・アリアの1曲目でもあります。さぁ、それでは続けてお聴きください。どうぞ。

"Arianna à Naxos - [Cantata] H.XXVIb No. 2"
"Lascia ch'io pianga - [Recitativo e Aria; from "Rinaldo"]"
"Dank Sei Dir, Herr"
"Rheinlegendchen (from "Des Knaben Wunderhorn")"

今夜の〈夜のプレイリスト〉は石丸幹二が世界的に有名なアメリカ出身のソプラノ歌手Jessye Normanのアルバム『Live!』をお送りしております。

1曲目からみなさんどうでした。深い声、そしてつややかな声、引き込まれましたでしょう?? Händelの作品は奥行きが深いですけども、この作品を歌いきっていますね。そしてまたSchumannの作品もいいですよね。きめ細かい表情、感情豊かですよね。いろんな声を彼女は使い分けられるんですね。

わたくしがJessye Normanの作品に出会ったころ、日本に何度かいらしていました。そのコンサートをわたくしもうかがいましたよ。そして生の彼女の声を聴いたんです。想像以上だったんですね。

彼女の声は確かに「低いな」「太いな」とおもうかもしれませんが、声の上のほうもつやつやしていますよね。これがまた彼女の魅力でもあるんです。

そしてこの彼女のことを非常に興味を持ったきっかけが"魔王"、この曲なんですが、この"魔王"、もちろん曲はわたくしも知ってます。ですけど「こんなふうに演じ分けることができるんだ」というのは、彼女のパフォーマンスを観ておもい知らされたんですね。

"魔王"に出てくるキャラクターは先ほど言いました、子ども、お父さん、魔王。このうちの子どもは高い声ですよね、お父さんは男性ですから低いです。魔王はささやくような声を使ってますから、どちらともとれないような声を使い分けてるんですね。

でもこれ女性であるJessye Normanがお父さんの声を出せるってゆう、これがすごいことなんです。やはり低いふち声を響かせてお父さんの声を作ってるんですね。これがちょっとびっくりしまして。

わたしは男性ですけども「高い声さえ駆使すればこうゆうことができるんじゃないか」と、そうゆうふうにおもわせてくれました。

当時わたくしはサキソフォンをやっておりましたが、サキソフォンも好きなんですが、それ以上に歌うことに対して気持ちがググググッと向いた、そのきっかけはこのJessye Normanさん、あなたなんです。

そしてわたくし東京音大で器楽科サックスを専攻しておりましたが、3年生のときに中退しました。いてもたってもいられず歌の勉強をし、その翌年に東京芸術大学の音楽学部声楽家に受験し、入りまして、テノール歌手への道に進んだんです。

石丸幹二の人生の引き金を引いた彼女ですから、わたしも「なんとかしてJessye Norman」、そんな想いまで持ちましたが、なれるわけがない、そうゆう現実にぶち当たったのも事実なんです。

ただ、Jessye Normanの体は非常に大きいんですよ。そして背も高いし「持ってる楽器が違う」ということにまず気づきました。

「じゃあ自分なりになにができるのかな」とおもったときに、自分の声を使って、Jessye Normanのような表現をできればいい。「これだ」、そうおもいました。わたくしはだから表現というところに意識がそのあと向いていった。それがミュージカルにつながっていってるわけなんです。

さて、このアルバムはライブ盤で、お客さんの反応がわかりますよね。お客さんがどれだけ彼女の歌声に感動してるかが手にとるようにわかるとおもいます。そのときの観客が「うわ~っ!!」と拍手したくなるこの気持ち、みなさんにも伝わったんじゃないでしょうか。

彼女はレパートリーがほんとに広いんです。オペラ・アリアもあります、歌曲もあります、そして黒人霊歌のようなスピリチュアルなものも歌っております。

共通してるのはエネルギーがうわっと押し寄せること、これなんですね。そしてそれをいろんな色に変化させる、いろんな色を出すんです。これが彼女の大きな魅力だとおもいます。わたしの道しるべ的存在、Jessyeはいまも歌ってらっしゃるようです。

さぁ、それではJessye Normanの魅力がつまったアルバム『Live!』より後半をお楽しみください。
曲はSchubert作曲"アヴェ・マリア"、
"糸を紡ぐグレートヒェン"、
"死と乙女"、
"魔王"。
Brahms(ブラームス)作曲"わが恋は緑"、
Richard Strauss(リヒャルト・シュトラウス)作曲"ぼくらは踊りだしたい気持だ"。
黒人霊歌より"すべては主の御手に"、
"大いなる日"。
続けてお聴きください。どうぞ。

"アヴェ・マリア"
"糸を紡ぐグレートヒェン"
"死と乙女"
"魔王"
"わが恋は緑"
"ぼくらは踊りだしたい気持だ"
"すべては主の御手に"
"大いなる日"

今夜の〈夜のプレイリスト〉は石丸幹二がJessye Normanのアルバム『Live!』をお送りしてまいりました。いかがでしたでしょうか。

やはり最後の客席からのこの歓声、拍手、これがすべて物語っていますね。そしてこのJessye Normanの演奏も非常に余裕があり、そしてお客さんと共有し合ってる、そんなパフォーマンスが感じられたんじゃないかとおもいます。

日本でも彼女のコンサートにわたくしも行きますと、ちょっと日本のクラシックのコンサートにはあまり見られない、そんな現象が起こったんです。

なぜかと言いますと、彼女はアンコールを非常にたくさんやる人なんですね。だいたい最後のほうになりますと黒人霊歌を歌います。さっきの2曲、これが終わりますとだいたい終わりなんですけども、観客が総立ちになってまして、そのまま彼女が何度かカーテンコールに来るたびにどんどん前に前に立ち上がってくるわけです(笑)。

ふれることはできませんけども、身近に彼女を見たい、そして彼女がちょっとしゃべったりするんですね。そうゆう声を聞きたい。そんな想いからでしょうか、非常に穏やかに、ゆるゆるとなんですけども、だんだんみんなが前のほうに集まってくる、そんな現象がつどつど起こっておりました。

そのぐらい多くの人の心を打つ、魅了する、そんなアーティストなんだなとわたくしもおもい、その列に並んで前につめかけていたひとりでもあります。

そんなわけでこのアルバム、ぜひみなさんの音楽ライブラリに加えていただければ嬉しいです。

なお、この番組は番組ホーム・ページからNHKラジオ〈らじる らじる〉を利用してパソコンやスマートフォンなどの端末でもお聴きいただくことができます。「NHK-FM 夜のプレイリスト」で検索してみてください。みなさんのご意見、ご感想などお待ちしております。

では、今夜はこのへんで。お相手は石丸幹二でした。