2006年12月15日

本当の自分が見つかるのだろうか?

梅田望夫さん、平野啓一郎さんの共著「ウェブ人間論」を読んだ

このブログでも過去に取り上げた「新潮」での二人の対談を元に
さらに8時間対談した内容を本にしたものだ。
とても色々な事を考えさせられた一冊だった。
ウェブ進化論から日本でもWeb2.0に火がついた一年の終わりを飾る本だ。

案内はこちらの新潮社のサイトを見てもらったり、全体的な書評は
梅田望夫さんのサイトに取り上げられていたり、下に集めているので、そちらを見てもらいたい。

本書のあとがきで梅田さんは「本書をめぐるネット上の議論の発展を
楽しみに待つ」と書かれている。
さすが、あちら側とこちら側の橋渡し役、みごとなしめくくりだ。

これからきっとネットで深い議論が花開くだろう。
だが、ここではまずはそんなに深い議論でなく、心に残った言葉を
中心に感じた事をつらつらと書いてみる。


●「承認感動」
 この言葉はオープンソースという大きな出来事は、分かっている人に
 認められたいという思いを原動力としているというくだりで出てくる。

 私は資本主義の恩恵を大きく受けて生きているくせに、資本主義の
 「お金」が殆どのものの指標になる世の中に疑問を感じていた。
 (このサイトを見ていただいている方はお分かりでしょうが)

 何か別の指標があればとずっと考えていた。
 もちろんリアルの世の中でも「承認されたい」という思いは誰でも
 あり、それで人は動くのだが、お金に結びつかないと続かない事も多い。

 それは人事制度を作っていて、「評価」と「給与」が結びつかないと
 効果が持続しない事から深く実感する。

 ただ、ネットの世界では、皆がネットによりできる事が増えるという
 恩恵を受け、さらに経済全体からみるとあまり多くのお金が動いていない。

 ここからネット社会では「お金」ではない大きな指標ができてほしい
 なあと思う。人から尊敬されるというような指標だ。
 これまた商売にはならないだろうが、そういう指標ができれば、
 人の行動は大きく変わるかもしれない


●「人格の複数性」「ネットの無身体性」
 「行為が社会的な自己に跳ね返ってこない」
 これは一貫して平野さんが主張していた、ウェブが進化していく中で
 恐ろしい変化を人間に与えるのではという要因である。

 正直、これに関してはもう少し平野さんは頑固に議論しても良かったの
 ではないかと思う。これによって無責任な犯罪は増えるし、
 規模も大きくなる可能性が高いと思う。単純にそう思う人も多いだろう。

 性悪説ではないが、仕事一つとっても誰も見ていない匿名性の
 高まった状況では人は多少無責任になるのだ。

 だからといって規制でしばるのはナンセンスだし、ウェブ全体を
 しばるのはもう不可能かもしれない。だから人間の性質をうまく
 利用した自制の仕組みでそれを軽減する事をもっと多くの人が
 考えてもいいと思う。

 梅田さんの前向きな姿勢には強く同意している。でも、保守的に
 そういう仕組みを考える人も多くでてほしいと思う。
 

●「自分を語ることは自分を知ること」そして「自分を誤解すること」
 これは平野さんが自分の事をこういう人だと語ると自分でもそれを
 信じてしまうけど、言葉では本当の自分とズレてしまうという事を
 語ったところで出てきた言葉だ。

 多くの人にとって、初対面の人との簡単な自己紹介以上に自分を
 説明する事はこれまであまりなかった。だが、これからは自分に
 何かしらの「タグ」や「キーワード」で自分を分解・分類する事
 になるのだなあと思った。

 そしてその自分の一部は再構築された知の一部に組み込まれるのか
 と思うと、可能性の広がりと同時に深い寂しさも感じる。
 たんなる感傷だとは思うが。

 それは自分のアイデンティティになっていくのだろう。
 確かにその言語化によって、誤解ではあるかもしれないが、
 自分を表現する事になる。それは日本人が苦手としていた事だ。
 明確に言い切るよりはわびさびのような心の機微を重んじてきたのだ。

 また、言語化とは概念化、抽象化する事だ。
 様々な形で自分を概念化する事によって自分はどう変化するのだろう。
 シンプルになりすぎないだろうか?
 一貫性のない細かい部分の自分を見失ってしまわないだろうか?
 人に認めてもらっても、違うんだけどと却って感じてしまわないだろうか?


●「自分で自分を発見した」
 これは梅田さんが自分がブログで新しい自分に気付いたと
 いうくだりでの言葉だ。

 この言葉はひたすらポジティブに私の胸に突き刺さった。
 自己認識は、次の成長への第一歩だ。
 確かにネットで、こういうものが自分が好きなんだと改めて
 自覚する事はある。

 ただ、それ以上に「自分を発見する」という言葉には、
 普通は一生掛かっても理解できない、他でもない「自分」に
 対する理解が進むのではないかという期待を寄せてしまう。

 自分探しというのは青春の特権のように思っていたが、
 一生それが可能になるのではないかという期待で胸が一杯になる。
 そういえば、「青春」という言葉自体聞く頻度が減った気がする。

 いつの間にか実際に「一生新しい事に触れ続け、一生新しい
 自分を発見する」そんな世の中になっているのかもしれない。
 それが本当なら、なんとすばらしい事だろう。
 そうなる事を期待するし、そうなるように自分も努力していきたい。


○「ウェブ人間論」の書評を集めてみました(2006/12/24更新)
 極東ブログ: [書評]ウェブ人間論(梅田望夫、平野啓一郎)
 H-Yamaguchi.net: 「ウェブ人間論」
 小野和俊のブログ:ウェブ人間論
 kawasakiのはてなダイアリー - ウェブ人間論
 ユメのチカラ:ウェブ人間論
江島健太郎 グーグルが無敵ではないことはエンジニアだけが知っている
 デジモノに埋もれる日々:ウェブ人間論

このサイトの案内図〜他にはこんな事を書いています〜








sfukuchan at 02:07│Comments(4)TrackBack(4)その他 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ウェブ進化論  [ LIP:クチコミ・レビューのコミュニティ。Wikiによる製品のまとめサイト。 (PukiWiki/TrackBack 0.3) ]   2006年12月17日 23:41
この製品のタグ:梅田望夫 Web2.0 ジャンル: 本 製品分類: 新書 メーカー: 筑摩書房 インターネットが登場して10年。いま、IT関連コストの劇的な低下=「チープ革命」と検索技術の革新により、ネット社会が地殻変動を起こし、リアル世界との関係にも大きな変化が...
2. 「ウェブ人間論」/梅田望夫×芥川賞作家・平野啓一郎  [ Blog☆『不動産業戦略e-REVIEW』   編集長 不動産ブログ日記 ]   2006年12月18日 06:23
不動産業も変える「ウェブ人間論」 12月14日発売 ■梅田望夫氏      (写真、ブログから拝借させて頂きました) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106101939/hatena-22/ref=nosim 不動産業にも通過儀礼/発想の大転換が やってくる! イニシ...
3. 「ウェブ人間論」書評  [ 追憶の手帖 ]   2006年12月18日 21:19
 「ウェブ人間論」を読んだ。あちこちで書評がなされているのを見て一昨日に買ってき
4. 本日の対談本  [ リンムーの眼 ]   2006年12月20日 21:40
梅田望夫・平野啓一郎著『ウェブ人間論』(新潮新書)読了。 シリコンバレー在住のIT最前線に身を置く『ウェブ進化論』の著者と、芥川賞作家のウェブ世界をめぐるダイアローグ。 異色の組合わせと言っていいでしょう。 ネットによって人間の知覚はいかに変わったのか。ま...

この記事へのコメント

1. Posted by marco   2006年12月15日 09:13
5 URLは、先日完結した俺のパッケージブログです。ウェブツー実践マニュアルでもあります。あなたと考えていることが近い部分もあると思います。良かったら読んでみてください。現在進行中のブログは大文字のMからはじまるURLです。
2. Posted by ふくちゃん   2006年12月24日 11:29
marcoさん
コメントありがとうございます。
またいろいろとやりとりしましょう。
3. Posted by SakuraPlan   2007年07月29日 20:06
5 はじめまして。
「ウェブ人間論」を検索してこのサイトにたどり着きました。
いくつか記事を読ましていただきましたが、共感できる記事が多かったです。
私も最近ブログを立ち上げ、少し視点は違いますが、いろいろと考えていきたいと思っています。よかったら見てください。
4. Posted by ふくちゃん   2007年11月14日 01:37
SakuraPlanさん
はじめまして。返信遅れてすみません。
サイト拝見しました。また意見交換しましょう☆

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔