2011年01月

下北沢は燃えているか 第二回下北沢映画祭グランプリ・準グランプリ作品上映会 片岡翔 『ゲルニカ』 今泉力哉 『最低』 ほか

110131_193859先日下北沢において、個人的に勝手に応援している自主映画作家・片岡翔監督の最新作が上映される機会がありまして、足を伸ばしていってきました。イベントの名は「第二回下北沢映画祭グランプリ・準グランプリ作品上映会」。秋に行われた同映画祭のグランプリ・準グランプリを取った作品の再上映と、各々の監督が撮った新作をあわせて上映しようという内容です。HPはコチラ。では順々にささっと紹介していきます。最初にあげてあるのが受賞作、二番目に書いてあるのが新作です。 ☆今泉力哉 『最低』『TUESDAYGIRL』 『最低』はとあるストーカーと、三股をかけている男と、彼らを取り巻く女性たちの人間模様を描いた作品。『TUESDAYGIRL』は結婚を決意したカップルと、お互いが「当たり前」になっているカップルの心の流れを追った作品。軽妙な会話でゲラゲラ笑わせてくれましたが、ラスト直前でぴたっと音がやんで、見るものの心にグサッと棘をさしていきます。 明確な悪意があるわけでもないのに、その優柔不断さがいつの間にか誰かを傷つけてしまったり。一方が幸せになるとき、対照的に不幸になっていく者もいる・・・  そんなわたしには縁遠い男女関係の機微が非常にリアルに描写されていて、恐らく(本人は否定してましたが)今泉氏も相当経験を積んでおられるのでしょう。実際美人の奥さんがおられるようですし。 不可解なのは、その今泉さんも作中の男たちもヒゲをもじゃもじゃ生やかしたむさ苦しい風貌(すいません・・・)なのに、どうしてそんなにもてるのかということ。でも思い起こしてみれば、同級生の中にも時々いましたね。顔もぱっとしないし、とりわけ性格がいいわけでもないのに、なんかやたらとモテてたヤツ。世の中よくわからないことばっかりです。 あと先も述べましたが男の方が大体無精ひげを生やしていたり、女性の方も突然ばっさり髪を切ったり、ドライヤーでなびかせて嫌がらせしたり、そんな「毛」の使われ方がいちいち印象に残る二作品でした。 今泉監督はすでに商業デビューを飾っておられ、その第一作『たまの映画』が現在公開中であります。 ☆奥田昌輝 『くちゃお』『オーケストラ』 こちらの二本はアニメ作品。『くちゃお』は年中口をくちゃくちゃさせている少年の日常と冒険を描いた作品。濁った色と奔放な輪郭、長唄のようなナレーション・音楽が愉快であるとともに、どこか不安をかきたてます。 個人的には伝説のトラウマアニメ『チコタン』に似たノリを感じました(『チコタン』はニコニコ動画で観られますが、これ本当にトラウマになるのでくれぐれもお気をつけください) もう一本『オーケストラ』は個人ではなく、三人で共同で作った作品とのこと。こちらは『くちゃお』とは対照的に、簡潔な線がクラシック音楽をバックに上品なダンスを見せるアニメ。こちらはYOUTUBEで観ることができます。 現在修士課程を卒業を間近に控えた奥田監督は、近々ドイツで行われる児童映画専門の映画祭「キンダーフィルムフェスティバル」に招かれているとのこと。ただ卒業後の進路に関しては「なにも決まってない」そうで。この感覚、下北沢ですね。片岡翔 『くらげくん』『ゲルニカ』 さて本命。『くらげくん』に関しては昨年夏にレビューしましたのでコチラをご覧ください。いや~、いい作品だとは思いましたが、その後国内の様々な映画祭で13個も賞を取るとは思いませんでした。 で、『ゲルニカ』の方。寒そうな歩道を歩いている少年と少女。少女はもうじき遠くに引っ越すと言う。寂しさを埋めるかのように、会話を交わす二人。その会話の節々に、人が住んでいない一軒の家に入っていく少年の姿が挿入されます。 片岡監督は「まったく違うタイプの映画を三本続けて撮ろうと思った」とのこと。うち一本が『くらげくん』。もう一本がさらにその前に発表された『Mr.バブルガム』。 確かにムードはだいぶ違いましたが、『くらげくん』と共通しているところも色々あり。母の都合で遠くに行かなければならない幼馴染み。子供であるがゆえにどうしてやることもできない少年。ヒロインの衣装もどことなくくらげくんに似ています。二つの作品は、出発点を同じとして正反対に歩いていった、そんな関係にあるのではないかと(ついでに言うなら『Mr.バブルガム』も「○を決意したお父さん」というところでつながってるかも)。 現在と過去が交錯するにつれ、次第に明らかになっていく真実。孤独が狂気を産み、そしてその狂気がまた別の孤独を生んでいく。そんな哀しい連鎖が物静かに語られていきます。去る者も置いていかれる者も両方辛いのでしょうけど、きっと置いていかれる者の方が、ずっと辛いはず。これまた今泉監督とは別の形でこちらの心を深く突き刺していきます。そして21分という短さが、かえってその刃を鋭くしております。 少年は恐らくどうにもできなかったことを悔やみながら、この後の長い人生を歩んでいくのでしょう。それが少女との約束を果たすことになると信じて。少年が空き家で最後に見つけたもの。それは「本当は君とずっといたかったんだよ」という少女からのメッセージのように、わたしには感じられました。 110131_193934片岡監督は既に何本かの新作を準備中ですが、その前に下北沢の「トリウッド」において二月末より今泉監督と連動の特集上映が催されるとのこと。『Mr.バブルガム』『くらげくん』、そしてこの『ゲルニカ』が一気に見られるという大変オトクな機会ですが、HP見るとまだ予定に入ってないな・・・ ご興味おありの方はまめにのぞかれてみてください。 代わりといってはなんですが、それぞれの予告編を貼っておきます。 ・Mr.バブルガムくらげくんゲルニカ

ドーバー海峡冬景色 フィリップ・リオレ 『君を想って海をゆく』

110129_183353本日はフランスのアカデミー賞と言われるセザール賞に10部門ノミネートされた社会派映画の力作『君を想って海をゆく』をご紹介します。 フランスの港町、カレ。そこにはイギリスを目指して密航しようとする多くの難民が集まる。混乱したイラクから、恋人に会うためにはるばるやってきたクルド人の少年、ビラルもその一人だった。だがビラルはトラウマから二酸化炭素を出さないようにする袋をかぶることができず、税関で捕まってしまう。なおもあきらめないビラルが思いついたことは、自力でドーバー海峡を泳ぎきってイギリスへ渡ることだった。元メダリストのコーチ、シモンのレッスンを受けに、わずかな所持金を費やして水泳教室に通うビラル。初めは少年をいぶかしんでいたシモンだったが、彼のひたむきな姿を見ているうちに、いつか献身的に応援するようになる・・・ 原題は『WELCOME』。全然違うやん!とツッコミたくなります。まあ映画を見るとわかるんですけど、イギリス政府もフランスの人々も全然難民たちに対して「ウェルカム」ではないんですね。そんな大いなる皮肉のこめられたタイトルなのでした。 ドーバー海峡を泳いで渡ろうとする・・・というあらすじからスポ根のようなノリを想像しがちですが、どちらかといえばメインはビラルとシモンの世代・国境を越えた交流にあります。最初は難民たちと関わりたくない、という気持ちを露にしていたシモンですが、奥さんからのイメージを向上させるために、ビラルを家に泊めるようになります。 この辺からわたしが思い出したのは昨年サンドラ・ブロックがオスカーを取ったことで話題になった『しあわせの隠れ場所』。二作品とも、ろくに素性のわからぬ少年を、ふとした思いつきから自分の家で世話するようになるという話なので。実話が元で、スポーツが関わってくるあたりも一緒です。 ただ『しあわせの~』のマイクがリー・アンの愛情によって多少の逆風も乗り越えていくのに対し、こちらではビラルを取り巻くあまりの厳しい現実に、やるせない思いを抱かずにはいられません。 人によってはシモンが、なぜビラルに対し心を開いていったのかわかりづらい、という感想を抱く方もおられるようです。ただ、シモンとてかつてはトップアスリートだった男。自分が全てを注いだ水泳で、大きな目標に挑む少年の姿を見ているうちに、いつしか「力になってやりたい」という気持ちが強くなっていったのでしょう。。そして子宝に恵まれなかった彼は、きっともし自分に子供がいたなら、こんな子供がよかった・・・と思うようになったのではないでしょうか。当局や周囲の容赦ない仕打ちに暗い気分にさせられる中で、二人の心が通い合っていく様子には心温まるものを感じました。 そしてやはりビラル少年のどこまでもまっすぐな姿に心打たれます。シモンがいかにそれが無理なことを解こうとも、彼は決してあきらめません。恋人に会うために極寒の果てしない海を迷うことなく乗り出していきます。「目の前の君でさえ、オレは諦めてしまうのに」 ・・・・そうつぶやくシモンの言葉が、胸を突きます。わたしたちはビラルような情熱を持って、誰かを想うことができるでしょうか。 以下は結末を割っておりますので、ご注意ください。 [E:wave] [E:wave] [E:wave] [E:wave] [E:wave] わたくしてっきりこの話、少年が努力と根性でもってイギリスまでたどりついた、そういう話だと思っていたのですね。しかし実際はご覧になった方ならおわかりのように、とても悲しい結果に終わりました。シモンが見つめるテレビの中でビラルが活躍していた・・・そんなラストを一瞬期待したのですがね・・・ やはり現実は甘くないです。 ただわたしはこの話を、「かわいそうな話」というだけで終わりにしたくありません。確かに死んでしまっては何にもならない・・・という気持ちもあります。でも、こんな一途で純粋な少年がいたこと、そしてそれを知れたことを素晴らしいと思いたいです。 「クルド」とはトルコ語で「狼」を意味しているそうです。狼は雄々しく、情愛豊かで、美しい生き物であります。これはそんな狼のような少年と、それをつかの間のあいだ見守った男の話。「狼少年」というとなんか違うものを連想してしまいますが。 110129_183424『君を想って海をゆく』はメインの東京の劇場ではあともう一週間、というとこですが、その他の都市ではこれから初夏にかけてゆっくりゆっくり回っていく模様。本当にフィルムの本数が少ないのね・・・ 

台湾極道青春記 ニウ・チェンザー 『モンガに散る』

110128_182946本日は昨年台湾で映画最高動員記録を樹立し、先の東京国際映画祭においても好評を博した『モンガに散る』をご紹介します。 1986年、台北一の歓楽街モンガ。母の事情で学校を転々としてきた少年モスキートは、新しいクラスでさっそくイジメにあう。だがイジメに屈せずに懸命に抵抗する彼の姿が、学校を仕切るボス、ドラゴンとモンクの目に止まった。モスキートは彼らの義兄弟として受け入れられ、ケンカにあけくれるようになる。そうしている内にモスキートたちは、ドラゴンの父である極道「ゲタ親方」の組織で働くようになるのだが・・・・ 台湾といえば日本において最も身近な国のひとつですが、そこの映画はほとんど見たことがありません。でもまあ最近のラインナップ・・・・『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』『九月に降る風』『台北に舞う雪』『海角七号 君想う国境の南』(これだけ観た)・・・・の情報を読むと、あちらの方って甘酸っぱくて切なくて心ときめくような、そういうラブストーリーが大好きなんだろうな、と。この『モンガに散る』は暴力と血しぶきに彩られた映画ではありましたが、やはりそうしたスウィーティーでリリシズムなムードが全編に漂っております。 今まで親しい存在といえば母親ただ一人だったモスキート。ですがある日を境に彼は多くの絆を手に入れます。楽しい仲間であり兄弟であるモンクたち。怖い時もあるけれど、近づきやすくて頼りがいのある父親のようなゲタ親分。わたしも学生時代はそんなに周囲と打ち解けやすい方ではなかったので、ずっと欲しかった仲間を得て、毎日が愉快でたまらなくなってくるモスキートの気持ちはよくわかります。ただ、彼にとっての不幸はその仲間たちが暴力の世界に身を置く者たちだったということ。気がつけば華やいでいた周囲の景色には暗闇が立ちこめ、いつ殺されるともわからぬ恐怖に彼らは怯えることになります。 モスキートはどこで間違ったのか。最初にモンクから差し伸べられた手を振り払えばよかったのか。私がもし彼であったなら、そんなことは到底できません。彼にとって希望と言えるものはその「手」だけだったのだから、どうしようもなかったというほかないでしょう。 ある意味、主人公よりも強烈な光を放っているのが、メンバーの中でサブリーダー的な存在であるモンク。多くの才能に恵まれながら、ドラゴンへの愛情のため、全てを捨てて彼に尽くします。しかし別の義理やゲタ親分へのわだかまりから、彼の心はやがて大きく引き裂かれていくことになります。 そうした人間模様のほかに、目を引くのは80年代なかごろの台湾の描写。当時の日本の影響がちらほら見えます。それは『ビー・バップ・ハイスクール』そのまんまの荒れ果てた高校や、スーパーマリオブラザーズの効果音。モスキートも想像の中で「かめはめ波」を放っていたりします。そのころの台湾にとって日本は憧れの存在だったようで、伝え聞くところでは松田聖子や近藤真彦が大層人気だったとか。 一方で中国から流れてきた人々に対しては、蔑んだ眼差しを向けます。当時は中国の経済の改革解放が進み、台湾にその脅威が最初に押し迫っていた時代。その不安が、そうした気持ちをことさら強くしたのかもしれません。実際、それまでの台湾は(どこまで本当かわかりませんが)ヤクザ社会においても銃はご法度だった模様。男なら飛び道具は使わず、拳と刃物で戦えと。どっちにしろ暴力なのは変わりありませんが、確かに銃が入ってきたことによって、多少は仁義を重んじていた台湾の極道は滅んでいくことになります。この映画はそんな古いタイプのヤクザへの鎮魂歌とも言えるかも。 以下、ラストについて触れます。 [E:cherryblossom] [E:cherryblossom] [E:cherryblossom] [E:cherryblossom] [E:cherryblossom] この『モンガに散る』というタイトル、いささかネタバレの感もあり、確かに人も死にます。ただ散ったのは命というよりも、彼らの友情のことを言ってるのではないかと思いました。モンクに両手を広げたあとで、彼を刺すモスキート。一見理解に苦しむ行動ですが、モスキートにしてみれば彼なりの「心中」だったのかもしれません。 主人公の生死に関してはぼやかしたまま幕となりましたが、二十年以上経った今、もし彼が生きていていたらどうしているだろうとふと思いました。恐らく異国の地で、かつて愛した女性と帰らぬ友を思いながら、日々を淡々と生きているのかな・・・なんて。 090408_150635さてこの『モンガに散る』、レビューがボヤボヤしているうちに東京方面では大体公開が終ってしまいました[E:shock] が、その他の地方都市においてはこれから順次回っていくようです。わたしのよく行く静岡東部の劇場でも来月から二週間限定でかかることになりました。新宿まで見に行ったんだけど・・・ 最近そんなことばっかりです。

新・ばったり倒れ野郎 中村誠 『チェブラーシカ』

110125_181255ウラウラウララ~ ウララ~ウララ~ ウラウラウララ~ウラウララ~  ロシアアニメ史上最も愛された未確認生物が、27年ぶりに日本で復活。人形アニメ映画『チェブラーシカ』をご紹介します。オリジナルはコチラを。 それはいつ、どこで生まれたのか誰も知らない(またかよ)・・・・ 物語はとある果物屋のミカン箱から猿とコアラの合成生物が発見される所から始まる。虚弱体質なのか、すぐにぶっ倒れてしまうため、その生物はチェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)と名づけられた。ある日彼は「ともだち募集中」と書かれた貼り紙を見つける。チェブラーシカが向った先は、孤独で優しいゲーナというワニが住む家だった。 思い起こせば二年ほど前の夏。テレビの宣伝で「お家は電話ボックス」というのを聞いてなぜか無性に興味が湧き、渋谷はシネマアンジェリカ(現在休館中・・・)までリバイバルされていたオリジナル版を観にいったのでした。 わたしはその時初めてこの生物のことを知ったのですが、ファンは日本にも前からたくさんいたようで、それ以来いろんなところでチェブちゃんを見るようになりました。ドトールとのタイアップや、TV東京での絵アニメ版の放映、はたまた冬季五輪でのロシア代表のマスコット(青くて不気味だった)として。そしてとうとう満を持しての人形アニメ版の公開です。これがロシア人ではなく、日本人の監督の手を通して作られることになったというのがなんとも驚きです。 なぜ時空を越えて、この現代日本にチェブラーシカが復活したのか。わたくし脳髄をフル回転させてその答えを導き出したところ、「よくわからない」という結論に達しました。 ・・・あーでもそうですね。今話題になってる『ソーシャル・ネットワーク』。思えばあの映画も孤独感を埋めるためにプロジェクトに没頭していく青年の話だったような気がします。「一人ではさみしすぎる。喜びをわかちあえる友が欲しい」 そう願う気持ちは時代も国も関係なく、人間がいつも抱えてる望みなのかもしれません。 では今回新たに作られた『チェブラーシカ』は、果たしてオリジナルのスピリットをちゃんと受け継いでいたか? わたしはこの点、見事に合格に達していると感じました。 以下チョイバレしながら語らせてもらうと、序盤でチェブとゲーナはサーカス団に憧れ、ろくな芸もないのに入れてもらおうとします。ここでチェブはジャグリングに挑戦。しかし二個の玉さえ上手に扱えず、結局一個の玉をポンポン空中に放り投げるだけ。しかしチェブは意気揚々と叫びます。「ゲーナー! 僕ジャグリングできたよー!」 こいつ頭悪いな・・・・ まあ「バカな子ほどかわいい」とはよく言ったものです。その必殺技でもってチェブは面接に望みますが、予想通り団長はあっさり一言「おひきとりを」。これです! この疎外感! つまはじきにされ感! でも最後には二匹のがんばりで、暖かく迎えいれられる。これこそまさに『チェブラーシカ』の真髄そのものだと思います。 そしてワニのゲーナは相変わらず底なし沼のように優しい。「ゲーナ、ご飯なんにする?」「君が食べたいものにしよう」 なんて優しいんだ・・・ 僕は上トロとウナ重が食べたいです。 この映画の前に作られたTOHOのオマケムービーも、ゲーナの優しさをよく表しています。「ゲーナは絵がじょうずだね」「君もとてもじょうずだよ。でも一体何を描いたんだい?」 何が描いてあるかもわからないのにとりあえず「じょうず」と言う。男子たるもの、こんな雄大な海のような心を持ちたいものです。 あとオリジナル版は時代を置いて製作された四つの短編からなっているのですが、こちらはほぼ一本の長編といっていい構成。そのためチェブたちの住む町の様子・人々が丁寧に描かれ、エキストラのようなキャラクターも何度も登場するうちにだんだん親しみがわいてくるようになっています。 この新作『チェブラーシカ』、ロシア版と日本版が製作されました。どう違うかというと日本版では旧作とほぼ同じ導入部のエピソードが大幅にカットされ、頻繁にナレーションが入れられています。まあこのナレーションが大人にはちょっと野暮ったく感じられたりして。 大橋のぞみちゃんの声も悪くないと思うのですが、ロシア版の評判を聞くにつれ、わたしもできればそっちで見たかったなあと。恐らく子供たちについてきやすいように・・・・という配慮でこんだけナレーションを追加したのでしょうが、わたしが見た回では後半二人ばかりお子様が劇場を走り回っていたので、あまり効果はなかったものと思われます。 ともあれ、好きになってまもないうちにチェブラーシカの新作が観られたのは嬉しかったです。ぜひここで終わりにせず、ひきつづきロマン・カチャーノフの遺産を活かし続けてほしいものです。 同時上映の『くまのがっこう』もまた心温まる一編。生きた熊のぬいぐるみたちを主人公にした話で、ぬいぐるみ特有のボフボフ感が上手に出せていました。だいぶ前のロシアの方が作った童話かと思ったら、これ、最近の日本の作家さんが作られた話なんですね。ここまで作った人の国籍を感じさせないのは、ある意味見事であります。 101225_172323a劇場版『チェブラーシカ/くまのがっこう』はまだ全国で上映中ですが、既に終了したところもあり、残りも大体今月いっぱいにようです。観そびれている方はお早めに。 また今年は三月に『ファンタスティック・ミスター・フォックス』、五月に『メアリー&マックス』と人形アニメの話題作が公開予定。こちらも楽しみなことであります。

地中の花嫁 『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat. スカル MOVIE 大戦 CORE』

110123_185140一月ももうあと一週間。そんなころになって、ようやく今年最初に見た映画を紹介できます。 ・・・・って一番最初がこれかい!(これです!) 『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat. スカル MOVIE 大戦 CORE』参りましょう!(しかし長いタイトル・・・) フィリップが帰ってきてから数ヵ月後。照井竜との結婚式を控えた亜希子は、そんな中でも「仮面ライダー」であることをやめない照井にヒステリーを起こし、式場の外へ飛び出す。そこで謎の怪人と接触した亜希子の脳裏に、なぜか死んだはずの父、鳴海壮吉の姿が甦る・・・ 一方相変わらず欲望の研究に情熱を注ぐ鴻上ファウンデーション会長は、「この世で最も欲望の強かった人間」織田信長のミイラを発見する。ホムンクルスとして現代に最誕した信長だったが、そのありあまる欲望は鴻上ファウンデーションの思惑を越えて暴走する。 このまま年末の恒例となってしまうのでしょうか。『仮面ライダーMOVIE大戦』。昨年の『2010』がまあまあ楽しめただけに、今年も期待してたんですが果たして結果は・・・ とりあえず『W』の方から参りましょうか。 今回『W』は『仮面ライダーW』というより『仮面ライダースカル』な内容でした。翔太郎とフィリップのコンビが好きな方はちょっと納得いかないかもしれません。 しかし帽子を目深にかぶったダンディ吉川晃司もなかなかのもの。かつて布袋寅泰と組んで「チャチャ」とか「チェチェ」とか歌ってた人が、劇場オンリーとはいえ仮面ライダーをやってるんですからねえ。しかも主題歌まで歌っちゃってノリノリでした。人間どうなるか本当にわかりません。 横浜っぽい情緒にモダン風の衣装、妙にレトロチックな言い回しは石原裕次郎か赤木圭一郎を連想させます。そして途中から忍び寄ってくる怪しげな空気は江戸川乱歩。ちょっと恥ずかしいところもありましたが、在りし日の「探偵物語」をそれなりに再現できていたと思います。 で、もっと恥ずかしかったのが『オーズ』の方[E:coldsweats01] 大体やっぱり仮面ライダーに織田信長をからめるって、今の大河ドラマに出ているからとはいえ強引にもほどがあるのでは・・・・ その上登場人物の言動・行動がどうにもちぐはぐだったり、今時誰もやんないようなベタベタな演出があったり(笑) わたくし一作目から平成ライダーを見ているので井上敏樹氏のことは少なからず評価しておりますが、今回はちょっと彼の悪い面が出ちゃったかなと。 ただこの『MOVIE大戦 オーズ編』、意識してかはどうかわかりませんが、井上ライダー集大成のようなところがあります。映児くんのキャラがまんま「アギト」津上翔一になってたり、クラシックが流れる中ライダーと怪人がとっくみあってるところは『555』の第八話のよう。あと甦ったばかりに信長が妙に純真なあたりは『キバ』の大ちゃん編を彷彿とさせます。ライダーに付き合いの長い方はそのあたりで楽しめるかも。 そしてクライマックスはご想像通り、偶然ばったり出くわしたライダーたちが共闘。地球の底へとラスボスを退治に向います。この辺がまた強引なんだよな~ 110123_185448ちなみにわたしが見た回のお子様たちは大変お行儀がよく、上映中ずっと騒いだり暴れたりということはありませんでした。そんだけ夢中になるほどライダーが好きだ・・・ということならうれしいんですけど。わたしのお隣の坊ちゃんも概ね静かに見てましたが、途中二度だけ「アンク出てこないなー」「アンク出た!」とつぶやいてました。アンク子供に人気あるのね・・・ あんな凶悪面なのに。 それにしても最近年中やってる感のある仮面ライダーMOVIE。当然のように次の企画が出来ています。いまだ正式タイトルは決まっていないものの、「仮面ライダー40周年記念」と銘打たれたこの作品は4月上旬に公開。オラなんだかワクワクしてきたぞ! あとこの『MOVIE大戦 CORE』もまだ一部で上映中。もう終っちゃってるところも出てきたので、見損ねている方はお早めに!
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