鳥栖@清水
主審:飯田淳平
副審:数原武志、小椋剛
四審:岩田浩義

連休後半出かけてまして、いくつかネタを持ち帰ったところ、Jでもやはり色々あったようで。
一つ一つ消化ということでまずはここから。

62分のシーン。
v1dQQG
右サイドから大前のクロス。
これを中央のウタカが決めますが、ミンヒョクのハンドがあったとして、その前に笛。
得点は認められず、清水にPKが与えられ、ミンヒョクには警告が示されました。

これ見た時の第一印象は、
「イルマトフと佐藤さんのヤツだな」
というもの。
ので、過去の事例も参考にしつつ振り返ってみましょう。



まず、ミンヒョクのハンドに関しては、特に異論はないかなと。
クロスに対してブロックに入ってるわけで、当然予期出来るボール。
その上で、ボール方向に対して手が動いてますので、これは意図が認められてハンドリングが認定されるべきでしょう。
飯田さんが見極めたのか、小椋さんのサポートがあったのか不明ですが、これはよく見たものであります。



続いて、「得点を認めずPKにした」という判断ですが、これは笛を吹いてしまった以上は仕方ないもの。
もうワンテンポWaitして、ウタカのプレー結果をSeeする余裕は欲しかったですが、それはそれで結果論なんですよねー。
外した上で改めてPKにすると「失敗したのにロールバックするのか!」ということにもなりますし、PKにしなければ清水側は「ハンドのせいで外しただろ!」と抗議するでしょうし。
これがFKだったらまたちょっと話は変わりますが、PKってのは絶対的に有利な判定のはずなので、それに対してアドバンテージを見る必要は、基本的にはないんですよね。。。

ただ、この時やっちゃいけないのが、「PKと吹いたけど、ゴールが決まったから得点を認める」というもので、それがイルマトフの例。
2013J1第28節大宮@浦和 - とりあえず
コンフェデの試合で、「PKとして吹いたけど、ゴール決まったからそっち優先でPKは取り消し」という大失態を演じてしまいまして、その大会からは追放。
その年のAFCアウォーズはノミネートすらされなくなりましたし、実際ブラジルW杯の出場もかなり危ぶまれたんですよね。
誰もが認めるアジアナンバーワンレフェリーにして、世界トップクラスのイルマトフですら、そういうミスを犯しますし、犯した時にはド級の懲罰が待ってるミスだとご理解ください。
今回も、清水側は当然「PKいらないからゴール認めてよ!」と言いますし、飯田さん自身も「笛が早かったな~」と後悔はあったでしょうが、ここで毅然とはね除けたのは良い態度でした。



と言うことで、ここまでは異論のない判定。
しかし気になるのが、「カードは警告で良かったのか」という点。
「得点を取り消してPKにする」という形ですから、「得点機会の阻止」で退場にするべきでは?という疑問が浮かびます。

しかし困ったことに、競技規則にはこう書かれてるんですわ。
主審と副審は、得点または決定的な得点の機会の阻止で競技者に退場を命じるとき、次の状況を考慮に入れなければならない。
・反則とゴールとの距離
・ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
・プレーの方向
・守備側競技者の位置と数
・相手競技者の決定的な得点の機会を阻止する反則が直接フリーキックまたは間接フリーキックとなるものであること
①反則とゴールとの距離
これは十分に近いですね。決定的な位置と言えるでしょう。
②ボールをコントロールできる可能性
今回問題になるのがこれ。実際にウタカはコントロールしてゴールしてる訳ですが、大前のクロスは早くて微妙な高さのボールでした。これを必ずしもコントロール可能なボールと認定するのはちょっと難しい……というのが競技規則的な考え方なんでしょう。
③プレーの方向
これも困ったものですが、今回のボール自体はクロス、即ち「ゴールに対して平行に進んでいる」わけで、「ゴールに直結してない」とこの時点では考えられてしまいます。
④守備側競技者の位置と数
実際にはウタカはマーカーを振り切った訳ですが、一応付いてはいたわけで、足りていたという見方を、競技規則さんはしちゃうんでしょう。
⑤直接FKとなる云々
PKなので当然これには該当。

と言うことで、①と⑤は満たすけれど、②③④については、競技規則的な「決定的な得点機会」の認定条件を満たしてないんですわこれ。
ですから、ここで赤を出さないのは、当然と言えば当然の話。
実際にウタカが決めたけど、そんなもんは知らねえよと言うのが現在の競技規則なのであります。

そのサンプルとして浮かんだのが、昨年のゼロックスでの佐藤主審の判定。
2014ゼロックス・スーパーカップ 広島対横浜FM - とりあえず
栗原と広島のFWが2対1になってる状況で、フリーの選手へのクロスを栗原が手で阻止しましたが、警告止まりでした。
あれも「赤じゃないの?」と思ったものですが、やはり「プレーの方向」などを考慮すると、「得点機会」の認定はできないというもの。

また、タイムリーなことに3級審判員さんが得点機会阻止をまとめておられます。
決定機の阻止のサンプル(第1弾)
決定機の阻止のサンプル(第2弾)
決定機の阻止のサンプル(第3弾)
決定機の阻止のサンプル(第4弾)
決定機の阻止のサンプル(第5弾)
このうち第5弾は、先日の磐瀬の退場に関わるヤツで、後日また追記しますが、これだけ「得点の阻止」ですね。
それ以外の4つが「得点機会の阻止」ということで、いずれも「抜け出してゴールに向かう選手がGKと1対1になったシーン」をファウルで止めてレッドカードが出されています。
逆に言うと、競技規則に書かれている「得点機会」を満たすのって、ほぼこのパターン一択なんですよね。
よって、クロスを手で止めるのは基本的に「ボールを手または腕で扱って、相手競技者がボールを受け取るのを妨げる」という項目で処理され、警告止まりと考えておいた方が良いのでしょう。

しかしー。
「GKと1対1になったシチュエーションって、GKが止める可能性も十分あるじゃん。それは本当に得点機会なの?」
って点にも疑問が残ります。
特にGKをやってた身とすれば、そこは美味しい場面でもあるので、「俺止められたって!勝手に得点できたとか決めんなよ!」と言いたいところ。
でも、そういうGKの技量、FWの技量というのは考慮されず、あくまで競技規則に定められたシチュエーションで判断されるもので、主審はそれに従って判定を下さねばならんわけです。
翻って今回のケースも、
「ウタカは競技規則の想定以上の技量でこのボールをゴールしたが、この状況は競技規則的には得点機会ではない」
と言わざるを得ないかと。



よって。
飯田さんは間違ってない。
でも競技規則が現実に必ずしも即してない。
文句があるならFIFAの規律委員会に言うしかない。
と言うのが私の結論です。



なお。
最近、実際に「得点機会阻止の三重罰(PK+退場+出場停止)」について議論がなされており、近々改正があるかもしれません。
私も、「PK+レッドは厳しいよな~。PK決まったら警告でいいんじゃないの?」と考える口なので、それに近い形になるかも。
それに伴って、今回のような例も、もう少しウェイトして結果を見てからの判断というのが推奨されるようになるかもしれません。
ま、どんな形になっても、審判団が競技規則に基づいて判定を下すというのは変わらない訳で。
その根本を理解するというスタンスを大事にしたいですね。