例によって週末サッカー離れ。
浦和さんがおめでとうだったり、清水さんが何しとんねんだったり色々あったようですが、話題になってるのが名古屋さんのアレ。
「レフェリーの判断が絶対」…“手に当たった”を目の前で見ていた千葉DF近藤「精神的な弱さ」を反省 | ゲキサカ
これについて、近藤選手の話によると、村上主審は
「手に当たったのは確認した」
とのこと。
そしてこの報道によると、
「脇を閉じていたからハンドリングではない」
と説明したように読めますが、これはゲキサカが勝手に付け加えただけかな?
おそらく村上主審はそのような説明をしていないはずです。
実際よく「今のは脇締めてたからハンドじゃないんだよ」とドヤ顔で語る方もいますが、必ずしも脇を閉じてたらセーフってことではございませんので。



まず、「手に当たっただけではハンドリングではない」という点。
これはこれまでも何度か書いてきまして、流石に当ブログの読者さんならみなさんご理解いただけてる範疇かと思います。
「ハンド:hand(手)」と思われがちなこの反則ですが、正確には「ハンドリング:handle(扱う)+ing」の略語であり、ホールディング同様「意図」がその判断基準になります。
「手に当たった」ではなく、「手を当てた」とき初めて反則になるのです。

で、その意図を判断するのに、現在の競技規則はこのようなことを考慮せよと書いてあります。
ボールを手または腕で扱う
競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為はボールを手で扱う反則である。
次のことを考慮しなければならない:
• ボールの方向への手や腕の動き(ボールが手や腕の方向に動いているのではなく)
• 相手競技者とボールの距離(予期していないボール)
• 手や腕の位置だけで、反則とはみなさない。
• 手に持ったもの(衣服、すね当てなど)でボールに触れることは、反則とみなされる。
• もの(靴、すね当てなど)を投げてボールにぶつけることは、反則とみなされる。
3つ目の「手や腕の位置云々」について、2015年までは「手または腕が不必要な位置にある場合は反則」と書かれておりました。
その位置に手を置いとくことでボールが当たることを期待した、いわゆる「未必の故意」を意図してる場合はハンドリング取りますよ~てな感じだったわけですが、現在はこの部分の判断基準が弱く設定されてます(完全に消えたというわけではありません)。

よって、重要度としては「ボールが手の方へ向かってきた」のか「手がボール方向へ動いた」のか。
そしてそれを「予期でき、避けられるだけの距離があったか」というのが判断ポイント。

ですから、今回「脇を閉じてたから」という理由だけで村上主審がノーとしたなら、それは判断基準としておかしいですし、村上主審レベルの方がそのような説明だけで済ませたとは到底考えられません。
おそらく村上主審は、
「手には確かに当たった。しかしボールから手の方へ向かう軌道で、避けられるだけの距離もなく、その上『手は体側からはみ出していなかった』」
これくらいの説明はしたんでしょうが、試合中のやり取りの中で伝えるのはまあ難しいでしょうね。
伝言ゲームのようになるのは致し方ありません。



ということで、そういう判断の上でノーとしたのであれば、この判定には納得はします。
ただ、位置関係も考慮すると、それが妥当だったかはちょっと疑問が残ります。
というのもこれが手に当たった時の位置。
2
村上主審は田口選手の真後ろから見る形です。
この位置からですと、たしかに
「ボールが腕の方に向かい、距離も短い。そして体側から出ていない腕部分に当たった」
という判断になるかと。

しかし、真横から見ますと
3
4
ボールが手に当たる瞬間、田口選手は腕を前の方に突き出しているとも見えます。
こうなると、「ボールが手の方向に動いた」のか「手をボールの方向に動かした」のか、議論が生まれてもおかしくないですし、村上主審の判断も変わってくる可能性が出てきます。



それでは、村上主審のポジショニングが悪かったために判断材料が不足していたと言えるのか。
無題
今回の事例について、おそらく後日のメディアブリーフィングにて、審判部より見解が出されると思います。
その中で「誤審であった」と認定された場合、審判部としては
「主審は今回A地点で事象を見極めようとしたが、矢印の先のB地点辺りまで移動していれば、この瞬間を真横から見ることができ、より正確な判断が出来ていた」
的なことを言うかと。
ただ、それは結果論でしかないんですよねー。
「今の失点はFWがゴール前に戻っていれば防げていた」的な。

実際村上主審の走力を持ってすれば、B地点まで入り込むことは可能だったでしょう。
しかし村上主審はあえてA地点に留まっていたと思われます。
というのも、近藤選手がボールを大きくクリアしようとしており、
・それが田口選手に当たる可能性(さらにそれが腕に当たる可能性)と、
・クリアが成功して反対側のPA付近まで飛ぶ可能性
そのどちらが高かったか。

もしB地点まで移動していれば、クリアが成功した場合、反対側PAまでのおよそ50mほどを、3秒程度で移動せねばなりません。
それはウサイン・ボルトにも不可能な数字。
ですから、反対側PAでの争点に間に合わない。
そこで重大な事象が起きた時、今度はそちらの判定に説得力が欠けます。
一方A地点からであれば、その半分程度の距離で済みますので、現実的な数字になります。

そういう次のプレーと争点の予測を踏まえれば、この時村上主審が取ったポジショニングが間違っていたと、私にはとても言えません。



となると足りない情報をどうやって補うか。
あるいは副審が見ていたら……というのもありますが、残念ながら他の選手が間に入っており難しい。
副審はラインキープが最優先である以上、該当プレーを見極めるために位置取りを変えることは許されません。
また、四審はこのカメラの視点に近い位置に立っているとも言えますが、本来の職務を考えると主審の判定を覆すだけの情報を伝えることは不可能かと……
よって、現状の四人審判制で、審判団としてはほぼマックスの情報を持っている状態であり、これ以上を求めるのは、どこの国のレフェリーでも難しいでしょう。

そこで取り沙汰されてくるのがVAR。
ビデオ判定が導入されると、これまでなかった視点も加わってきます。
しかし、そうやって不足した情報が補われたとしても、主審がどのような判定を下すのかは分かりません。
フィールド上と同じくノーとされる可能性もありますし、覆してハンドリングと認定するかもしれない。
これは私には判断つきませんし、今回のケースはおそらく国際レフェリーの中でも割れるんじゃないかと。

ただ、いずれかの判定をくださねばならないわけですし、そのブレがレフェリー間で少なくなるよう、審判部は日々判定を精査し、意見の統一を試みています。
それが下った時、みんなが納得できるか。
そしてそれを解説者やライターがきちんと説明できるか。
そういう環境が求められますねー。