忙しい先生のための社会科授業

 以前、私が勤務していた中学校には、生徒数の減少によって生じた空き教室がありました。理科室や音楽室はあっても社会科教室がないことに不便さを感じていた私は、校長先生にお願いして、その教室を社会科教室にリフォームさせていただきました。

 授業の流れを思い描きながら、使い勝手を考慮して教室をコーディネートする作業はとても楽しく、実際、その教室での授業はとてもやりやすかったことを覚えています。

 次の写真は、当時の正面の様子です。
教室環境の整備(正面)

1 正面掲示

社会科は、「見えること(様子や事実)」の理解を基にして「見えないこと(意味や特色など)」を考える教科と言われます。資料などから丹念に事実を読み取り、それを基に考え、対話し新たな発見に出会う…、そんな授業をイメージして作成した正面掲示です。

・新入生に対しては、この正面掲示をガイダンス資料として活用しました。これから社会科をどのように学んでいくのか、学びのベクトルをそろえたかったからです。

2 ホワイトボード

・子どもが思考を連続的に深めていくには、既習の資料が欠かせません。その時間に読み取ったことと比較したり関連付けたりしながら、思考をつなげ、深めていくことができるからです。ホワイトボードは、既習の資料の常掲を可能にします。

・黒板には、子どもたちが授業を理解しやすくするために、情報を整理して書きます。でも、それとは別に、子どもたちのきらっと光る発言や思いもよらぬアイデアに出会うことがあります。また、矢継ぎ早に意見が続き、板書が追いつかないときもあります。そんなとき、私は、貴重な意見を取りこぼさないよう、ホワイトボードに素早くメモしていました。いわば、全員が閲覧可能な「公開メモ帳」です。

3 パソコン用スピーカー

「音」も重要な資料です。例えば、「国家」は聞かないとイメージがわきません。イントロクイズ形式で提示すると、「んん?」とか「ああ~」といった実感のこもった反応を引き出すことができます。

・歴史的分野に出てくる「念仏」「題目」「ええじゃないか」「オッペケペー節」などは、実際のリズム(メロディー?)を聞かせると、関心がぐっと高まります。私は、社会科に関する音を集めた市販のCDを学校の教材備品で購入してもらい、授業で活用していました。

4 話型図

・分からないときには質問できる、考えが異なるときは「違う意見がある」と言える、そういったスキルを身に付けさせるために、全校体制で取り組んだものです。

・基本的なスタンスは、「型から入って、型をくずす」です。型に落とし込むことを目的とするのではなく、これを土台にして、最後は自分の言葉(表現)に返してあげないといけません。

5 テレビ、DVDプレーヤー、ビデオデッキ

・私は、教科書などから資料だけを切り取ってプレゼンに貼り付け、テレビで大きく提示していました。そうすれば、生徒に「今の意見は、資料のどこを見ると分かりますか」と問い返したりしながら、資料にこだわった授業を展開することができます。

・プレゼンであれこれ説明しようとすると、授業という名の講義になってしまう可能性があります。資料の拡大提示機ぐらいのスタンスでよいかと思います。



 写真は、今から10年ほど前のものです。10年一昔と言いますから、今はもっと便利な方法がある、そもそも電子黒板があれば事足りるとお感じの方もいらっしゃると思います。そこは、どうかご勘弁を(笑)。

教室環境の整備(正面2)

 側面と背面は、次回以降、紹介します。


 子どもたちは記述式の問題が苦手なのでしょうか。

 一概にそうとも言えないと思います。なぜなら、子どもたちは、「あなたの考えを書きなさい」と言われれば、意外と抵抗なく書けるからです。

 でも、「この資料から分かることを基に、○○について、あなたの考えを書きなさい。」だと書けなくなってしまいます。

 社会科における思考力・判断力・表現力とは、頭の中で思い浮かべたものを比較したり、関連付けたりするのではなく、目の前にある資料から必要な情報を取り出し、それらを比較、関連付けたりしながら考察することです。
 
  それは分かるけど,いざ授業となると、どのような資料を使って、どう考えさせたらいいのか具体的にイメージできないと感じている先生も多いのではないでしょうか。
 
 そこで、お薦めしたいのが、「入試問題を解いてみる」ということです。入試問題には、様々な資料が使われています。まさに、資料の宝庫です。入試問題を解いてみることは、「資料をもとに考える」という行為を子どもの立場で追体験することに他なりません。

 今回は、2015年の広島県の入試問題から抜粋したものを紹介します。

画像1


 地図から「なぜ製鉄所の立地場所が変わったのか」という問いを引き出し、その理由をグラフから読み取った情報を基に考えさせれば,「資料から生まれた問いを資料を用いて解決する」という社会科らしい授業になるのではないでしょうか。

 良問に出会ったら、それを授業づくりに生かしていきましょう。入試問題は、「授業改善のメッセージ」なのですから。

 まとめは、Q(問題)に対して、情報を集め、比較・関連したりし、課題に立ち返って、子ども自身がA(回答)を考える大切な時間です。

 にもかかわらず、先生が「じゃあ、まとめますよ。写してください。」では、たった一行の知識を全員に覚えさせる授業になってしまいます。そもそも、それでは、子ども一人一人が本当に理解できたかどうか評価することができません。

 もし、全体で「販売の仕事は消費者のニーズを踏まえて工夫している。」とまとめたのであれば、それに続ける形で「例えば」と書き、その具体を子ども自身の言葉で書かせましょう。

 ポイントは、「つまり」と「例えば」のセットでまとめること。

 概念的知識だけ覚えさせても生きて働く力にはなりません。抽象的なまとめの下に具体的な事実がぶらさがり、具体と抽象を行き来できるようになって初めて使える知識になります。

 他にも、「書き出しの部分は先生が書き、続きを各自にまとめさせる」「キーワードを使って自分の言葉でまとめさせる」といった方法もあるでしょう。

 大切なのは、「まとめる」という述語に対する主語が、「子どもが」になるようにするということです。「先生が」ではありません。

 子どもたちに「自分でまとめてごらん。」と声をかけた上で、「先生も黒板にまとめるから、どうしても分からない人は参考にしていいよ。」と伝える方法もあるでしょう。それであれば、先生が黒板に書いたとしても、主語は「子どもが」のままです。

 子どもたちは、これから社会の中で様々な問題に出会うでしょう。そのとき、最終的に問題を解決するのは自分自身です。その都度、先生がやって来て、「こうすればいいよ」とまとめてくれる訳ではありません。

 だからこそ、授業において、問題が解決する瞬間の主語が誰になっているかという意識は大切だと思うのです。

まとめ


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