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2018年度・米・130分 GREEN BOOK
監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ

実話をもとにした作品。

室内工事にやってきた2人の黒人作業員に妻が飲み物をふるまったグラスを、まるで汚いものを触るような手つきで捨てるトニー。
この場面で、黒人に対する夫婦の感覚の違いが非常によく表されていた。

トニーは天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーにドライバー兼用心棒として雇われ、黒人専用ガイドブック〔グリーンブック〕を頼りに黒人差別主義が色濃く残っている南部地域へと旅をする。やがて旅先で度重なる差別を受けるシャーリーを目の当たりにして、彼に対する気持ちが変わっていく。

以下、ネタバレ注意
粗野なドライバー兼用心棒役のヴィゴ・モーテンセンと、品の良いピアニスト役のマハーシャラ・アリの二人が適役だった。

初めのうちは無表情だったシャーリーだが、トニーと徐々に打ち解けて笑顔をみせるようになる。
ケンタッキーで本物のフライドチキンを食べるときの二人のやりとりが楽しい。

ともすれば重くなってしまう題材だけれど、黒人差別の描写の部分は弱めとなっていて、ところどころにユーモアが挟まれているのがいい。

トニーのファミリーネームが「ヴァレロンガ」で、発音がしづらいから変えたらどうか、という場面があったけど、共同脚本家の一人がニック・ヴァレロンガという名前だった。彼も似たような体験をしていたのかもしれない(笑)

シャーリーが「黒人でも白人でもなくて、完全な男でもない私は一体何者なんだ!」
と、ついに心の叫びを言葉で発する。これを機に二人の信頼関係が深くなっていく。

南部地域で黒人が夜間外出していたというだけでパトカーに止められ、拘束されてしまった2人だったが、後日再びパトカーに止められるが、今度はパンクしていることを教えてくれただけだった。そしてその警官はシャーリーに「メリークリスマス」と声をかける。もう北部まで戻ってきたことがよくわかるシーンである。

コンサート会場での酷い扱いに、演奏を断りホテルを出て行くシーンは胸がすく思いがした。
食事に立ち寄った黒人専用バーで、「シャーリーにしかできない演奏」が素晴らしい。
様々な場面にたくさん伏線があり、見ていて楽しくなる。

帰宅後シャーリーが訪ねてきた時、ハグをしながら手紙のお礼を言う妻もいい。
文句なしに良い作品。

第91回アカデミー賞 作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞受賞。


オープニングのコパカバーナでのショーで歌われたThat Old Black Magic。
音楽もいいね!