簿記試験の勉強というのは、すべてそうではないが、「仕訳」の勉強である。個別的な取引をどのように仕訳で表現するか。それを細かく学んでいくわけである。
その練習はもちろん必要なことであり、会計について、また経済についての認識を、基礎から強靱なものににするための作業である。であるから、この地味な作業を怠るわけにはいかない。
しかしながら、その作業の細かさゆえに、全体としての企業の動きというものが見えてこない。そして、その取引一つ一つが、企業の活動においてどのような位置を占めるのかがはっきりしない。ただ、個別的に「この取引には、この仕訳」の仕方を覚えていくだけである。「木を見て、森を見ず」の通りになってしまうのである。
そこで、企業の運動の全体の流れをつかむことが必要となる。そのためには「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の関係を、大まかにつかむことが必要だろう。そして、大まかにつかむことが出来れば、個々の仕訳で示される取引を全体の企業の運動の流れの中に位置づけることを可能にして、かくして、個々の仕訳の意味の認識を、さらに深めることが出来るはずである。
そのような目的のために適していると思われるのが、今回読了した『書いてマスター!財務3表実践ドリル』(國貞克則著・日本経済新聞社)である。
このドリルの何かがいいかと言えば、手を動かして読み進める事が出来る、理解しながら先に進むことが出来ると言うことである。僕の読書は従来理解しないでも字面を眺めるだけで先に進んでしまうもので、その結果ほとんど収穫がなかったのである。簿記の学習を始めたのは、そんな無駄なことに飽き飽きしていたからということもある。理解できなければ先に進めないような学習が良い学習なので、簿記はその条件を満たしている。
このドリルでは、財務3表のつながりを個々の取引を通して理解し(第2章)、第2章で学んだことと有機的に関連づけられた財務分析を学ぶ(第3章)。こまかいことは省かれているので、全体的に素早く理解することが出来る。財務分析の章は、たくさんの財務分析指標があって、学習者はそれを見れば途方に暮れてしまうが、しかし、著者は、まず4つだけの指標を理解すべきものとして提示するので、学習者に混乱はない。何を学べば良いかということがはっきり示される事は、初学者にとって安心を与えるものである。特に、時間がない人々にとっては、本当に助かるものだろう。
このドリルは出版の日時的には逆だが、同じ著者の『財務3表一体理解法』『財務3表一体分析法』の入門書となると思う。最初からこの2冊を読むよりも、手を動かしてドリルを終了してから、読み始めたほうが、いきなり読み始めるよりも効率が良いと思う。


