2010年06月13日

「子どもの権利条約」に関するささやかな妄想

●twitterで『国連で女子高生が「制服じゃなくて着ていく服の自由がほしい」というスピーチを特別にしたとき、ロシア代表から「あなた方は制服を着れるすばらしさを理解した方がいい。世界には着る服すらない国がたくさんあるのだから」という返答があったらしい。』という書き込みがあった。これは何度か目にしたことのある話だったが、今まで大して調べもせずにスルーしてきたんだけど、今回調べてみて、かなり問題の多い話で、しかも、最近話題の「リーク」や「メディアの誘導」とも非常に関係のある背景があることが分かったので、まとめてみる。まず、11日朝にtwitterでまとめたところまでを改めてまとめる(かなり追加・補足します)。

●国連で日本の女子高生が…という話がWEB上で繰り返し話題になっている。週刊文春が元ネタらしい。次の2chでの書き込みは19891998年週刊文春6月18日号を元にしたもののようだ。実際の記事では実名だったという話もある。2ch国連子供会議に制服廃止を訴えにいったキティ達
 しょせん週刊文春やし…と思ったけど、検索しているうちに、各地方議会でしばしばこの記事が引用されていることが分かった。例えば、制服の話では当事者でもある当時の京都府荒巻知事の次の発言。京都府議会1998年6月議会(6月15日)。当該部分を引用すると『ちなみにこの6月18日の週刊文春に載っておるわけでございますが(資料提示)、例の桂高校の制服の問題を国連の児童委員会に訴えに行った子供たちの話を聞きまして、国連の委員たちがみんなあっけにとられたと。そしてロシアのコロソフ委員は「我々の国では制服があっても貧しくて買えない子共がいる、それに比べたらあなた方は格段に幸せだ」と皮肉ったり、あるいはスウェーデンのパルメ委員長からは「スイスに来て意見が言えること自体が恵まれている。問題があるならまず親や周辺にアピールすることが重要ではないか」、このように言われたそうでございまして、私は、共産党の常識は世界の非常識とまでは言いませんけれども、やはり子供たちの教育につきましては、先ほどもいろいろ教育のことをおっしゃっておりましたけれども、やはりそういうことを十分頭に置いて皆さん方の主張をしていただきたい、このように思った次第でございます。』これは「生きる力を育てる教育ということが言われますが、それは生徒を管理するのではなく、信頼することから始まると思うのですが、どうお考えですか。」に対して、こどもの意見表明権については、国連でもこのように何でもかんでも許してるわけではないんだよ、という例証として文春の記事が引用されているように見えます。
 他にも広島県議会でも取り上げられてます(リンク先分からなくなったけど)。こうなれば、かなり由々しき話じゃないですか。元記事の真偽が分からないまま、議会で参考資料とされ、子どもの権利条約に於ける意見表明権の濫用の代表的事例とされ、国連の当該委員会の委員自身のお墨付きというわけだ。
 次に、この記事に対する反論を検索してみる。まずはここ。たしなめられた高校生?。読売新聞にDCI代表の話が載ってますが、DCIのHPは改装して以降、古い記事がなくなっています。わずかに次のページに話題になってるぐらい。国連こどもの権利委員会最終所見を読む。これは2回目の審査のときの話で、上の制服云々のときではありませんが、審査の話の参考になりそうです。
 こちらのページも検索で掛かりました。[ネタ]国連の会議でたしなめられた女子高生が好きな奴ちょっと来い。文春の記事の後で産経新聞でも記事になっていたようです。先のHPでもあった読売新聞がここでも引用されています。『日本の審査で議長を務めたカープ委員も同年十二月に来日した際、発言を改めて称賛し、「心ないメディアが彼らをおとしめた」ことに憤りを表明した。』という話は、かなり決定的に見えます。 
 また、こんなページもありました。フェミナチを監視する掲示板を監視する掲示板。これはたぶん2chからのコピペですね。他では見ない指摘が沢山ありますが、本当かどうか調べられなかったので、参考程度に。ただ、文春記事が全くの捏造ではなくて、なんかそれらしいことをリークした人物が居る感じ。パルメ委員長ではなくカープ委員長だったという記述は上の読売新聞と一致してます。
 と、ここまで来て、なんか非常に嫌な気分になってきました。国連の件の委員会には、政府側役人、NGOが出席しています。国連側からは「もっとNGOと連携するように」という勧告も受けてますね。なんか、このリークとメディアの関係って、どこかで散々見てきたような気がするんです。

●ここまでが朝に書き込んだものに一部追加したもの。では、この問題の本質に迫ろう(もちろん、題名で断ったように妄想なんで、騙されないように注意してください(汗))。

●まず、子どもの権利条約について基本的なことを整理してみる。まず、この条約の正式名は『児童の権利に関する条約』というもので、1989年に国連総会で採択、日本では1994年に国会で批准、同年5月22日に効力が発生している。この条約は、児童を「保護の対象」としてではなく「権利の主体」としている点に特色がある(wikipedia参照)。
 『子どもの権利条約』は日本語では制定されていない。したがって、日本語の翻訳にも見解の相違が生じる。以下のページに英語原文、政府訳、民間訳が掲載されている。DCI日本支部
 『子どもの権利条約』は条約なので、国内法に優先することは言うまでもない。したがって、この条約については国内に周知し、国内法を整合させる責務がある。第44条に基づいて、その進捗状況を国連の「児童の権利に関する委員会」に報告し、委員会はそれを審査する。報告は外務省が中心となって行うが、他に日本弁護士連合会(日弁連)子どもの権利条約市民・NGO報告書をつくる会(DCI)子どもの人権連、の3団体がカウンターレポートを提出する。つまり、政府報告を基にNGOの意見を参考にして国連の委員会で日本の進捗状況を審査する。

●問題の1998年5月の委員会というのは、このような審査の場であったわけ。審査は1国ずつ行われるので、当日は日本の進捗状況を審査するためだけに開かれており、日本からは政府代表、NGO、そしてプレゼンを行う子どもたち、そして委員会のメンバーが出席していたことになる。なお、当日の委員会のメンバーは次のようなメンバーである。
 Francesco Paolo Fulci (Italy)
 Judith Karp (Israel)
 Youri Kolosov (Russian Federation)
 Sandra P. Mason (Barbados)
 Nafsiah Mboi (Indonesia)
 Esther Margaret Queen Mokhuane (South Africa)
 Awa N'deye Ouedraogo (Burkina Faso)
 Lisbet Palme (Sweden)
 Ghassan Salim Rabah (Lebanon)
 Marilia Sardenberg Zelner Gon���alves (Brazil)
文春記事にあるように、イタリアやイスラエルやブルキナファソなど様々な国の委員が居り、ロシアのコロソフさんもスウェーデンのパルメさんも居られる。また当日の委員長を務めたとされるイスラエルのカープさんの名前もある。(COMMITTEE ON RIGHTS OF CHILD CONCLUDES SEVENTEENTH SESSION参照)

●この審査では、日本政府による第1回報告(1996年提出)を検討・審査して、問題点を探ることになるようです。ここで注目してるのは「子どもの意見表明」にあるので、第1回報告の当該箇所を拾ってみる。第84パラグラフ「As children are in the process of physical and mental development and schools are the places of group living, schools need to establish their own rules for students. The Government has instructed educational institutions to continue to review school rules which relate to day-to-day education and training activities with consideration for the conditions of children, the views of guardians, the current circumstances in the local community, changes of society, and movement with the times.」ここに政府の意見表明権に対する制限が表明されている。訳してみると「子どもは肉体的にも精神的にも成長の過程にあり、しかも学校は集団生活の場でもある。従って、学校は生徒のために自分の学校規則を作る必要がある。政府は、教育機関に対して、子どもの状況、保護者の見解、地域社会の現在状況、社会変化、時代の動きを考慮して日常教育や教育活動に関する学校規則を継続的に再検討するように指示している。」この84に書いてあることは、言論の自由は認めるが(83パラグラフ)、決定権はあくまで学校にあると解釈するということである。
 これに対して、子どもたちの行ったプレゼンテーションは、意見表明だけで決定に何ら影響を及ぼさないならば意味がないという例示として制服の問題を挙げたと思われる。プレゼンテーションがいつ行われたのか判然としないのだが、想像をたくましくすれば、本来の予備審査日(前日)は何故か時間が足りなくなり(上の書き込みでは10分予定が1分になった)、審査本番の昼休みに再度時間を取ったのではないかと思われる。

●つまり、このときの国連審査では、政府の見解と、子どもたちの見解が真っ向からぶつかってるわけです。その結果、審査の結論がどうなったか。ここである程度、審査にあたった委員の見解が分かるはずです。審査後のニュースレターを見てみましょう。ここでは重要項目が太字になってるので、最終結論の正式な文書よりも力点が明確になってます。「It was also concerned about the widespread use of corporal punishment in schools and the existence of numerous cases of bullying among students.(学校における体罰の広範囲の使用と、生徒間のイジメの多発についても懸念される)」として、この回の審査では体罰やイジメを最重要と考えていることが分かります。レターでは意見表明や決定権には言及ないようです。最終所見は子どもの権利委員会の訳がありますので、これを利用します。当該部分は13のこの部分『および社会のあらゆる分野、とくに学校制度において、一般の子どもたちが参加権(第12条)を行使する上で困難に直面していることを、とりわけ懸念するものである。(原文は"The Committee is particularly concerned about ... the difficulties encountered by children in general in exercising their right to participate (art. 12) in all parts of society, especially in the school system")』 最重要とは捉えていなかったようですが、一応所見では、子どもたちの見解を採用しているように見えます。

●さて、この所見は6月5日付けになっていますが、レターの方は9日に出されています。週刊文春は6月18日号ですから6月11日が発売日でしょうか。上に挙げた京都府議会の議事録は6月15日で符合しています。
 ここまで来れば、妄想は一直線です。誰が本来非公開の予備審査のことを漏らしたのか、誰がカープ議長が怒るほどに内容を変えて伝えたのか。その片棒を文春は担いだ。その結果、本来注目されるべき審査会の所見はふっとび、文春記事の方を参考文書とするような効果を産んだわけです。もう一度書くと、審査の結論は、最重要とは考えなかったようではあるが、あくまで「子どもたちが参加権を行使する上で困難に直面している」と言明しているにも関わらず、文春記事によって「条約の意見表明権は制限される」という180度違う結論へと利用されてしまったことが分かるでしょう。

●これは「リークとメディア」の非常に悪い代表例に見えます。

【追加】2010/10/20
●リンク先が分からなくなったと上で書いていた広島県議会での発言ですが、2008年3月14日の石橋良三議員の発言に登場します。当該部分を抜粋しますと、
「また,国連の児童の権利委員会に,日本の高校生が派遣され,日本では子どもの権利が保障されていないと訴えたことがある。
 そのとき,どのような事実があるのか問いただされたところ,「学校で制服を着ることを強制されている」と高校生が答えると,驚かれ,「制服さえもない子どもたちが世界にはたくさんいる」と一蹴されたとのことであった。
 このような間違った「権利」を教え,思想を持たせるような「子どもの権利条例」は,本県が今まで着実に進めてきた教育改革を真っ向から否定するものとなり,是正指導以前の教育体制に逆戻りさせるものである。」
石橋良三議員のサイトより(PDF)

【追加2】2010/10/20
産経新聞社説2009/02/22 元記事リンク先不明、孫引き注意
「 家庭のしつけや学校の指導を難しくするような条例づくりが全国に広がっている。広島市でも子供の権利条例の制定作業を進めている。こうした条例は権利をはき違えたり、わがままを許す風潮を助長している。慎重に検討すべきである。
 子供の権利条例をつくる自治体が出始めたのは、日本が平成6年に国連の「児童の権利条約」を批准してからだ。
 条約の目的は18歳未満の子供たちを飢えや病気などから保護することである。だが問題は、こうした本来の目的を外れて特定の政治的狙いのために子供の「意見表明権」といった権利ばかりを強調するケースが多いことだ。
 例えば、京都の高校生らが国連児童の権利委員会で「制服導入は意見表明権を定めた条約に違反する」と訴え、海外委員から「制服もない国の子供に比べて格段に幸せ」などとたしなめられた。…」


●広島県議会での発言が2008年、産経新聞社説が2009年。10年以上経過した現在も進行中であることに注目。

shanghai_ii at 00:30コメント(6)トラックバック(0) この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
リークxデマxマスコミ 

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コメント一覧

1. Posted by 鞍馬   2010年06月15日 07:08
まず、制服。大阪出身の友人は高2の時に制服が無くなりました。その人は大喜びでしたが、その親友は「だって・・制服しかないし、私服買えない」からと、ずっと制服だったとか。

それより下については・・また来訪いたします。
2. Posted by ジョニー   2010年07月13日 08:27
○ィリップから2337の情報が来たので載せておきますね。

Shanghai Forte (2337, HK) - Sales in 2010 will exceed RMB 10billion

Summary
Sales and GFA sold in 1H2010 was 3.98billion and 0.328million sq.m. respectively, up 15% and down 24% YoY. We expect that the full-year GFA sold of Forte will be 0.85million sq.m., and sales are expected to be RMB 10billion.


Performance in 2010 will increase obviously than that in 2009, more revenue may boost more core profit. We expect that Forte's net profit in 2010 will be RMB 720million, EPS at 0.28 Yuan. Considering the relative valuation of peers, we give Forte 8x forecast P/E, 12m TP at RMB 2.24, representing to HKD 2.54, 21% higher than current close. We give Forte “Buy” rating.


Sales in 2010 will exceed RMB 10billion
Sales and GFA sold in 1H2010 was 3.98billion and 0.328million sq.m. respectively, up 15% and down 24% YoY. And ASP increasing by 49.4% to 12100 per sq.m., Per Figure1, view of sales in 1H2010.
3. Posted by ジョニー   2010年07月13日 08:28
Forte's sales target in 2010 is 1.06million sq.m.. In 1H2010, Forte completed GFA sold of 0.33million, 31% of full-year sales target, lower than peers. At the end of June, sales completion rate of property sector is 42%. As planned, in 2H Forte needs to complete 0.73million sq.m.. Considering the current sales situation, we hold cautious attitude towards Forte's sales in 2H. We expect that Forte will complete GFA sold of 0.85million, and sales in 2010 will exceed RMB 10billion.


Industrial investment funds will be new highlight.
As planned, industrial investment funds will be new highlight. Forte is depending on its industrial experience and financial channel to invest property development, and acquiring higher risk profit.


On the whole, development and investment are the two core business. About development business, Forte will focus on development of residential properties. About investment, investment fund and equity investment are the highlights. Innovative profit model on property finance is Forte's character on operation and future main performance driving power.
4. Posted by ジョニー   2010年07月13日 08:29
Per figure, since 2005 Fore's profitability declined obviously, operating profit margin dropped form 40% to about 20%, because national-based location of projects, lower-profit land development, sharp increasing land cost and rising administrative expense.


For optimistic sales in 1H and more property supply in 2H, Forte will have to cut selling price. We expect that the projects for sale in Shanghai will cut price by 10% to 15%, which may boost its sales in 2H at certain extent. Currently its some projects have began to cut price, the next two months will be the fight time to check the result of price cutting. On the whole, we expect that Forte's operating profit margin in 2010-2011 will keep 23% to 25%.


Risk
Regulation on property sector will enforce continuously.


Price cutting may not boost increasing sales effectively, and sales will not hit the expectation.


Valuation
Performance in 2010 will increase obviously than that in 2009, more revenue may boost more core profit. We expect that Forte's net profit in 2010 will be RMB 720million, EPS at 0.28 Yuan. Considering the relative valuation of peers, we give Forte 8x forecast P/E, 12m TP at RMB 2.24, representing to HKD 2.54, 21% higher than current close. We give Forte “Buy” rating.
5. Posted by hetian   2010年07月14日 00:08
はじめまして。
中国株に興味があるので、
訪問させていただきました。
応援ポチ!
6. Posted by UGG 通販   2011年10月20日 12:17
今日は^^
新作入荷しました^よろしくお願いします

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