こんにちは。海外事業アシスタントの末永です。
5月の末から2週間、カンボジアへ出張に行ってきましたので、今回はそのご報告をしたいと思います。


今回の出張の的は、現行のプロジェクト質的評価を実施することでした。

現行のプロジェクト「プレイベン州スバイアントー郡保健行政区における子どもの健康増進プロジェクト第三フェーズ(ハンドオーバー事業)」の質的評価を実施をしました。
質的評価とは、「数字では表せないことを評価する」ということです。

たとえば、あるプロジェクトを実施した結果、「人々がご飯を食べる回数が1日2回から3回に増加した」とします。この、「2回から3回へ増加した」というのは、数的な評価です。数字だけを見ると、暮らしが改善したように思えます。

しかしプロジェクトの結果、「栄養たっぷりのご飯を美味しそうに食べていたのに、栄養の偏ったご飯をまずそうに食べるようになった」場合、このプロジェクトは成功したと言えるのでしょうか?
こうした、数次では表せない部分を評価することが、質的評価の目的です。

今回の出張では、地域保健専門家である工藤芙美子さんに、カンボジアに来ていただき、プレイベンでのハンドオーバー(引継ぎ)事業の、数字では表せない部分の評価に取り組みました。

カンボジアに到着してから1週間は、プロジェクト内容の見直しと、評価に必要なデータの抽出を行いました。毎日朝の7時半から夜遅くまで、作業が続きました。


次の週は、まずカウンターパートに対するインタビューとアンケートを作成

前の週に出したデータやスタッフの観察記録、そこから考えられるプロジェクトの効果などを踏まえたうえで、質問によって明らかにすべき項目を考えます。


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カンボジア事務所にてミーティングの様子


考えた質問をもとに、インタビューやアンケートを実施しました。
対象となったのは、郡保健行政局のチーフと母子保健担当官、保健センタースタッフ、村の保健ボランティア、女性子ども委員会のメンバーです。
みなさん、コミューン選挙の忙しい合間をぬって協力してくれました。


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インタビューの様子


インタビュー結果やアンケートの結果から、今度はキーワードを抜き出しました。その結果、現場から聞こえてきた声をご紹介します。


郡保健行政局長 トン・トール氏
郡保健行政局長 トン・トール氏
質問「以前、「保健ボランティアはキーパーソンで、健康へのアドバイザーだ」とおっしゃっていましたが、それについてどう思いますか?」
回答「それは今でもそう思っています。なぜなら、保健ボランティアはコミュニティによって選ばれた代表者であるし、保健センターとコミュニティの間で、必要な全ての情報を伝達・交換するメッセンジャーだからです」

郡保健行政局 母子保健担当官
質問「乳幼児健診、離乳食教室の重要性は何だと思いますか」
回答「これらの活動によって、養育者が子どもの健康に興味を持ち、さらに活動に参加するようになります。そうすることで、養育者が学んだことを家庭でも活かすようになり、村の低体重の子どもが減り、子どもの健康状態の改善につながります」


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母子保健担当官ミーティングの様子


全てはご紹介できませんが、このほかにも、離乳食教室を一緒に開催している女性子ども委員会のメンバーから「乳幼児健診のやり方を学びたい」という声もあがりました。

今後はカンボジアで、抜き出したキーワードをもとにレポートを作成し、数字ではわからないカウンターパートの成長や変化を評価していきます。
夏から始まる新事業に活かすため、カンボジア事務所で全力で取り組みます!


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休憩のときに食べた揚げバナナ。


つぶしたバナナに、ココナッツミルク・やし砂糖・黒ゴマを混ぜて作った衣をつけてカリッと揚げます。美味しいですよ!


〜お知らせ〜
カンボジアの活動報告会を開催します!
報告に加え、今回はゲストを迎えてスペシャル対談も実施!!
なんと元シェアカンボジアスタッフのチャンパが登壇します。

現在日本で子育て中、カンボジア人のお母さんチャンパと、カンボジアで子育て中、日本人のお母さんモーガンが、日本とカンボジアの子育てについて、それぞれの目線でお話をします

おもしろい報告会になることは間違いありません。みなさま奮ってご参加ください!!

お申し込みはこちら

イベントの詳細はこちら


海外事業部
末永 明日香


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6月より東ティモール事務所へ赴任しました、吉森です。

南半球なので季節は冬へ向かっています。とは言え、熱帯の島。
シェアの学校保健活動地があるディリ県は、連日30度近く日差しがまぶしいです。


シェアで販売している、東ティモールコーヒーを飲んだことはありますか?

コーヒーが苦手な人でも飲みやすい、と評判の高いコーヒーですが、実はおいしいコーヒーの証として、世界で流通しているコーヒーの中で10%程度しかない「スペシャルティコーヒー」に評価されています。

海抜0メートルのディリから四輪駆動車で山に登り、標高1450メートルを超える高地にコーヒーの産地、エルメラ県レテフォホ村があります。レテフォホとは、現地語のテトゥン語で「山の頂上」を意味します。その名の通り、山の尾根にあります。土地は朝夕の寒暖差が大きく、たっぷりの霧と年間3000ミリの雨量が、美味しいコーヒーを育んでいます。レテフォホはコーヒーの産地であるとともに、山の頂上にそびえる大きな教会とキリスト像が名所です。

エルメラ県レテフォホ村の家
エルメラ県レテフォホ村の家

エルメラ県レテフォホ村
エルメラ県レテフォホ村

山頂の教会
山頂の教会


昨年10月、岩崎事務局長と一緒に東ティモールコーヒーの森を訪ねました。

このコーヒーの生産をしているのは、シェアと同時期に東ティモールへの支援活動を始めた、特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンです。品質向上やフェアトレードコーヒーとして生産者の生活向上に取り組んでいます。シェアでは、オリジナルラベルでコーヒーを販売し、売り上げをシェアの学校保健普及活動に使わせていただいています。

案内してくれたのは、ピースウィンズ・ジャパン 東ティモール事務所で働く日本人の職員の方々です。暑いディリの街を出て数時間。さすがに標高が1500メートル近くなるとひんやりと涼しくなってきます。茅葺屋根の家がいくつか集まる村々を通りながらコーヒー農園に向かうと、農園というより、森。初めて見る人には、どれがコーヒーの木なのかわからないほどです。長く世界市場には出回っていなかったため、土壌が農薬や化学肥料に汚染されていない希少な土地で、今も無農薬を大事に守り、日本の有機JAS認証も取得しているそうです。

訪れた時には、すでに収穫の季節は過ぎ、ほんのいくつかの実が枝に残っているほど。自然の森のようですが、大きくなりすぎたり古くなったコーヒーの木は剪定したり、苗木を育てたり、虫がつかないように自然の堆肥を使っているようすなどを見せて頂きました。様々な工夫をしながら、無農薬の自然栽培を守り高い品質を保つ努力がされていることを感じました。これらコーヒーは木の手入れから収穫、選別、洗浄、脱皮、乾燥などのプロセスを、本当にシンプルな道具だけをつかい、そのすべてをほぼ手作業で行っています。

東ティモールコーヒーの森
東ティモールコーヒーの森

スタッフの作業の様子
スタッフの作業の様子

事務局長が現地見学に行きました。
事務局長が現地見学に行きました。


農場から戻った翌朝。目の前に雲海が広がる標高1400メートルほどの事務所から、乾燥させた生豆が入った袋をたくさん乗せたトラックが、港のある首都のディリに向けて出発するところでした。美味しさを保つために、生豆で輸入し、日本で焙煎されます。土ぼこりを立てて次々に山道を下っていくトラックを見ながら、この小さな熱帯の島から、船に乗ってはるばると日本まで届くのかと思うと「気を付けていってらっしゃい!」と送り出したいような気分でした。

コーヒー豆が入った袋を乗せたトラック
コーヒー豆が入った袋を乗せたトラック


こうしてたくさんの人の手を経て、大切に日本に運ばれ、ちょうど良いかげんに焙煎してできた東ティモールコーヒーです。ご家庭用に、大切な人へのギフトにどうぞお使いいただけると嬉しいです。

東ティモールコーヒーのご購入はこちらから!

7月のコーヒー豆収穫時期の様子
7月のコーヒー豆収穫時期の様子


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東ティモール事業担当 吉森悠



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在日外国人支援事業担当の廣野です。
シェアの東京事務所は台東区東上野にあります。そして今、この上野界隈は赤ちゃんパンダの誕生でちょっとしたお祝いムードです。私と机を並べているスタッフの山本は上野駅でパンダのシールとクッキーを貰ったとのこと。幸せのおすそ分け、といったところでしょうか。今回は無事に育ってくれることを願っています。


外国人療養支援セミナーの概要

さて、facebookでも速報させていただいた通り、6月3日(土)に新宿区の早稲田奉仕園において、医療従事者向け外国人療養支援セミナー「知っていますか?医療通訳を活用するメリット−医師、病院の経験を通じて−」を行いました。このセミナーは、昨年10月にクラウドファンディングを実施した際、開催を約束していたものです。当日は医師、看護師、助産師、視能訓練士、薬剤師、臨床検査技師、そして、医療通訳の方などさまざまな職種から17名の参加がありました。

今回のセミナーではシェアから副代表の沢田、在日外国人事業担当の山本が外国人医療の概要や既存の通訳制度の成り立ち、医療通訳活用のテクニックなどについて話をしました。また、通訳ユーザー(医師、患者など)と通訳者双方を体験するロールプレイの機会も設けました。

医療者向けセミナー質疑応答

活発だった質疑応答。講師陣は右から沢田、河北総合病院講師、山本


地域病院での外国人対応への取り組み

そして、今回はゲストスピーカーを外部から招くことができました。社会医療法人河北医療財団河北総合病院経営統括部の広報担当者です。同院がある東京都杉並区は2013年にネパール人学校が開校したこともあり、現在ネパール人の集住地域になっています。それに伴って同院でも外国籍の患者が増加する中、この講師や医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)からシェアに医療通訳派遣依頼やケースの相談が寄せられるようになりました。また、母子保健事業の活動候補地を調査していた私達も、講師やMSWから地域の在日外国人の状況やニーズについて教えてもらうなど情報交換の機会が増えていきました。こうしたやりとりから、同院の外国人対応の経験をこのセミナーで参加者に伝えてもらいたいと考えたのです。

当日、講師からは、同院には外国人患者受け入れに対する戸惑いはあったものの、現状を分析して課題を明確にしたこと、目標をたてることで現状とのギャップを埋めるための具体的なアクションに繋げてきたことなど、これまでの対応の経緯の紹介がありました。具体的なアクションの第一歩として英語・ネパール語の受付票の作成、そして、医療通訳を活用したことなどがあげられました。通訳活用には、院内の理解や費用負担の問題などの難しさはあるようです。しかし、初めて訓練を受けた通訳を導入したことによって、それまで親族や知人が通訳をしていたことで家族が患者の状況を正確に理解していなかったことが把握できたなど、通訳導入が治療や療養支援の情報収集に欠かせないことが具体的に語られました。


信念を持った人を支えるシェアでありたい

今回講師のお話から医療機関が地域のニーズを把握し外国人対応の取り組みをしてきた経緯が、参加者の皆さんにもよく伝わったと思います。それと同時に、外国人対応の取り組みを「外国人患者の医療を支える上で必要なこと」として、こつこつと諦めずに前向きな姿勢で臨んできた講師やMSWの熱意に心を動かされた参加者は多かったのではないでしょうか。ゼロから何かを始めるには財源など大切なことがいろいろありますが、まずは信念を持った「人」がいるかどうかが物事を大きく左右すると改めて感じました。
同院や今回の講師のように、こうして地域で外国人対応に孤軍奮闘している病院や医療従事者はいると思います。シェアは情報発信をしながら、ニーズのある病院や医療従事者と繋がり、必要な情報や資源を提供できるようになりたいと考えます。今回のようなセミナーもそうした試みのひとつであり、外国人対応に意欲のある医療従事者が横のつながりを作って自身をエンパワーする一助になればうれしいです。

シェアは今年度後期にも医療従事者向けのセミナーを実施する予定です。次回のセミナーのご案内を楽しみにしていただければと思います。


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在日外国人支援事業担当
廣野 富美子



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こんにちは!三度の飯も好きだけど甘いモノも大好きな、海外事業担当の末永です。
今回は出張先のカンボジアからお送りします。

私は本当に甘いモノが好きで、小さい頃は冷蔵庫にある練乳チューブをこっそり吸って中身を食べ尽くし、母親にバレて怒られたのを思い出します。カンボジアでは、毎日「カフェー・タック・ダッコー・タッコー(練乳たっぷりアイスコーヒー)」を飲めるので幸せです!


地方選挙

さて、カンボジアではこの週末の日曜日、6月4日にコミューン(=村の集合体、1つのコミューンに80〜100の村が含まれます)選挙が実施されます。この選挙では、コミューン長とコミューン議会のメンバーが選ばれます。コミューン議会は、地方の予算割を決める権限を持っているため、重要な選挙です。

そのため、カンボジアではいま選挙キャンペーンの真っ最中です。与党・野党が総力を挙げて、有権者に対してアピール活動を実施しています。キャンペーン最終日の今日は、そこかしこでパレードが繰り広げられていました。

シェアの活動地のプレイベンでも、あちこちから人が駆り出され、大キャンペーンが実施されています。シェアのカウンターパートである郡保険行政局のスタッフも、今日は地方のパレードに参加するため、不在です。


パレードの様子

活動地のプレイベンから、首都のプノンペンへ帰る途中、与党(Cambodia People’s Party)の長〜いパレードに会いました。突然道路を封鎖されたため、しばらく彼らが通り過ぎるのを待たなければいけませんでした。

選挙パレード1
バイクパレード

選挙パレード2
バイクパレード

選挙パレード5
パレードで使用されているバイク


トラックの上に乗って旗を降る人々、バイクでパレードに参加する人々、巨大スピーカーからは音楽が響きます。


選挙パレード3
トラックの上で旗を振るパレードの参加者の人たち

選挙パレード4
パレードで使用されている選挙カー

選挙パレード7
パレードで使用されている選挙カー


それにしても、このパレードにかかる費用(お揃いのシャツ、帽子、パレード参加者に支払われる日当やガソリン代、昼食代などなど…)は、一体いくらかかっているのでしょうか。

この費用を、カンボジアの子どもたちが元気に成長していくのを支えるため、もっと保健の分野に(もちろん教育や農業などにも)使ってくれればいいのになぁと、思わず願ってしまうのでした。


海外事業部
末永 明日香


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先日、代々木公園で開催されたタイフェスで念願のドリアンを丸ごと1個購入し、3日かけて完食しました。ドリアンのお蔭で幸せいっぱいの在日外国人支援事業担当の横川です。


シェアの外国人医療電話相談

 シェアにおける外国人医療電話相談は在日外国人支援事業が始まった、1990年初めに活動を開始しました。統計を取り始めた2006年、シェアにおける医療談話相談の相談対応回数は67回でした。その後、うなぎ昇りに相談対応回数は増加し、2010年は541回の相談に応じています。東日本大震災後は300回前後で推移し、昨年の2016年は347回となっています。相談者は外国人の方よりも病院に勤めているソーシャルワーカーや保健師さんなど保健医療従事者が多くを占め、相談内容は出身国の医療情報、健康保険、在留資格や外国人の療養支援のことなどで、特に多い相談は医療通訳派遣や言語の障壁に関することです。


医療通訳の大変な側面:重病で難しいケースの通訳が求められる

医療通訳を派遣することは、大変な側面があります。
「患者さんは末期がんです。告知とこれからの話をお願いしたい。」
「患者さんの意識がなく、今後意識がもどる可能性はありません。家族はもどると思っているようです。ちゃんと説明を入れたい。」
「移植をしないと助からない。移植について説明をするので通訳をして欲しい。」
このように、シェアに寄せられる医療通訳派遣の相談は、重病なケースが多くを占めます。結核やHIVなど感染症を中心に派遣されているシェアの医療通訳者にとっては、負担が増えます。しかし一方で、このような相談者からの悲痛な声を聴くと、通訳を通して、外国人の患者や家族の方にきちんとした説明が入り、安心して治療や療養に取り組んでほしいと願うばかりです。現状では、上記のような通訳依頼がくると、東京都の結核患者に対する医療通訳として活躍している人でかつシェアの医療通訳としてもお願いをしたことがある人に個別に声をかけて派遣しています。初めて聞くような病名の時には、通訳内容の詳細や、病気についての説明をすることで事前準備をしてもらい通訳派遣にのぞんでもらっています。


最低限の医療通訳派遣体制を整えるために、今できることを

シェアとしては、シェアの医療通訳派遣システムを整え、通訳者の方々にもっと様々な疾患に関する勉強の機会を増やし、医療用語や医療知識に対する不安を軽減したい、きちんと謝礼を払いたい、傷害保険をかけてあげたいと思う気持ちが常々ありました。そんな折、平成29年度日本郵便の年賀寄付金配分助成の支援を得ることができることになったため、医療通訳者に研修を開く機会と通訳への謝礼や傷害保険にかけることが可能になりました。そこで、2017年5月14日に第一回シェア医療通訳研修を開催しました。参加者は今までにシェアの通訳派遣に協力して下さった方々15名。また、講師にはシェアの理事やシェア支援者の医師、3名にお願いをし「がんについて」「AIDSの基礎知識」「難病」の話をして頂き、和気あいあいとした、楽しく学べる機会となりました。

IMG_0212シェアの理事である仁科さんが「がんについて」講義をしているところ

私たちが目指すこと

 私たちシェアは、医療通訳者が少しでも不安なく派遣先に行けるように知識向上の研修を組んだり、医療知識を共有したり通訳への補償を整えていくことも大切と考えていますし、それをサポートしてくれる医療者を巻き込んでいく事も、非常に大切だと考えています。シェアが現在通訳派遣をしている理由のひとつは、医療通訳の意義を保健・医療従事者に知ってもらい、医療通訳の活用の道を開くことにもあります。1本の相談電話から、困っている外国人の方や保健・医療従事者の声が聞こえてきて、私たちシェアとせっかくつながったのですから。私たちシェアにも、通訳派遣を行うにあたり制約があり、今後どこまでできるのかわかりませんが、
「私は日本のお金で大学に行かせてもらいました。だから、日本のために恩返しになることをしたい。」
「お金は関係ありません。」
などと言ってくれる、シェアの医療通訳者の熱い情熱に支えられながら、在日外国人の健康に関するサポートを今後も一緒に頑張っていきたいと思います。




在日外国人支援事業部
横川 峰子


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「共生主義宣言 − 経済成長なき時代をどう生きるか」(コモンズ)を読んで

西川潤 共生主義宣言 本カバー
共生主義宣言 表紙


1.はじめに

先日、尊敬する開発経済学者で、早大名誉教授の西川潤先生(ここから先は、親愛をこめて「西川さん)と呼ばせていただきます)から、フランスの経済学者マルク・アンベールさんとの共同編著「共生主義宣言 − 経済成長なき時代をどう生きるか」(コモンズ)をお贈りいただきました。

文章は平易ですが、少し横文字の用語もありますし、内容は必ずしも簡単に頭に入るものではありません。一つには、東京のような大都会に暮らして、「外」から与えられた食物や消費財に頼っているだけの私のような人間には、ほんとうの意味で「共に生きる暮らし」をしている自信がなく、実感として「共生主義」を受け入れ、実践することが、まだむずかしいのかもしれません。

しかし、この本に盛られているマニフェスト(宣言)とそれを支える考え方、そして豊富な国内外の事例は、たぶん人類や地球の未来と運命に深くつながる重要なものなのだ、という確信はもてました。ですので、一知半解な知識だし、まちがった理解に基づいたデタラメを言うリスクが大いにあると、思いつつ、この一文を草し、皆さんにも一緒に考えていただければ、嬉しいです。

まず、「共生主義」とは何かについて、フランス発のこの運動のホームページに掲げられた宣言をお読みになってください。原語はフランス語ですし、全体を知るには仏語の理解が必要ですが、要約版は日本語を含むいくつかの言語でも読むことができます。

共生主義宣言(要約版)


ずばり「共生主義」(Convivialisme:仏語)とは何か? アンベ−ルさんは第2章の「共生主義宣言―相互依存宣言」の中で、こう語っています。
「共生主義は、『自然資源が有限であることを十分認識し、この世界を大切にする気持ちを分かち合いつつ、競い合ったり協力し合ったりして人類が生きていくには、どのような原則が必要か』を考える。もちろん、われわれはみなこの世界に等しく属しているということを念頭に置く」
なるほど。得心の行く、考え方ではあります。


2.「いのちの思想」の滔々たる系譜

さて、先日アーユスのNGO大賞を、ありがたく、また慎んでお受けしたときのスピーチで私は、青い地球に生命が宿って38億年くらいの時が経ち、宇宙船地球号は、膨大な<いのち>とそのゲノムを乗せてどこへ向かおうとしているのか、と言った意味のことをお話させていただきました。

核戦争や過度な経済・産業活動によって地球環境自体を滅ぼしてしまう、破壊的な能力を人類が獲得してしまった今、私たちが生命界全体に対して負っている責任の重大さは一層ぬきさしならないものになっています。

アーユス(サンスクリット語の「いのち」)の名を冠するNGOの賞を授与されるという栄誉をいただく以上、そのことにはぜひ触れさせていただきたいと思った次第です。
 

 私の乏しい読書や学習の経験からは、アンベールさんや西川さんの「共生主義」は、古くて新しい、人類共通の生命哲学の系譜を受け継ぎ、危機にある現代にもう一度実践的な知恵として位置づけし直そうという、模索の中で生まれてきたもののようにも見えます。
 
 釈迦、老子に始まり、近現代で人類に大きな知恵を残してくれた、ソロー、トルストイ、チェーホフ、ガンジー、宮沢賢治、南方熊楠、レイチェル・カーソン(「沈黙の春」の著者)、シューマッハ(「スモール・イズ・ビューティフル」の著者)などの人びと。そして、共生主義という言葉の直接の生みの親は、イヴァン・イリッチのConviviality(自立共生)にあることを、私は西川さんの筆になる本書の第1章を読んで初めて知りました。

そう言えば、イリイチの「コンヴィヴィアリティのための道具」(ちくま学芸文庫)の訳者・渡辺京二さんは、「逝きし日の面影」の著者でもあり、「苦海浄土」の石牟礼道子さんの同志とも言える人です。このお二人がどんなに深く人のいのちを見つめ、慈しみ、語って来たかを、すこしだけ、学んできた者として、共生主義の広い裾野を感じることができます。


3.プライマリ・ヘルス・ケアから皆生農園まで − 実践を通して学ぶ

 プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)は、共生主義を保健・医療の分野で展開したものと考えることもできるな、と私は本書を読んで、改めて感じました。西川さんはかつて、鶴見和子さんらと共に「内発的発展論」を唱えた先駆者でもあります。

彼が同名の書(東大出版会 1989)の第1章「内発的発展論の起源と今日的意義」で紹介しているのは、1977年にダグ・ハマーショルド財団が提言し、当時世界的な反響を生んだ「もう一つの発展(Alternative Development)」論の基本原則でした。 

つまり、1)人間の基本的必要に志向(Needs-oriented)、2)内発的(Endogenous)、3)自立的であること(Self-reliant)、4)エコロジー的に健全であること(Ecologically sound)、5)経済社会構造の変化が必要であること(Based on Structural Transformation)。これは、途上国の主導で1970年代に、新国際経済秩序(New International Economic Order)が国連総会で採択され、それに呼応する形で1978年にPHCに関するアルマ・アタ宣言が発布されたのと、軌を一にする動きだったわけです。その意味では、PHCは、より公正で、普遍的な「もう一つの開発」を、保健・医療分野で実現しようとした、試みだったとも言えます。

この「ひとりごと」の45回(2013年6月)で私は、「草木国土悉皆成仏」という天台密教思想の根幹にある(梅原猛さんの説)ことばに触れながら、UNESCOの文化多様性宣言の中のある文章を紹介しました。以下、その部分を引用します。

草木国土悉皆成仏をめぐって


2001年にユネスコは、「文化多様性に関する世界宣言」(Universal Declaration on Cultural Diversity)を出しています。その第1条で、文化多様性は人類共通の遺産(the common heritage of humanity) だとして、「人類にとって文化多様性が必要なのは、自然にとって生物多様性が必要なのと同じだ」(Cultural diversity is as necessary for humankind as biodiversity is for nature) と強調しています。

そして、この宣言は、2005年にユネスコが出したもう一つの宣言「バイオエシックスと人権に関する世界宣言」(Universal Declaration on Bioethics and Human Rights)と「対」になっているものです。

生物多様性と文化多様性の両方を尊重していくことが、人類と地球の生存と発展のために不可欠だという価値観は、この共生主義を貫くものともなっているのです。
 
 本書では、理論的なことにとどまらず、フランスや日本で共生主義に基づく、環境に親和性の高い農業実践と、それを都市の消費者を直接つなぐ運動の成果事例が豊富に紹介されています。またアフリカ学の勝俣誠さんによる、現場と理論をつなぐ丁寧な解説も、たいへん参考になります。

 私自身は、元・JVCのスタッフで、ソマリアで「風の学校」の創設者・中田正一さんとの出会いが機縁となって、農業の道に進んだ鴇田三芳さんたちによる「皆生農園」の働きに共鳴し、小さな定期購入者になっています。毎月どんな新鮮野菜が届くのかなと、楽しみにしています。彼のところの農産品はほんとうにおいしく、解説付きできちんと送ってくれますので、皆さんにもお薦めしたいと思います。皆生農園のHPは下記の通りです。

皆生農園のHP


 昔、鴇田さんがまだ農園を始めたばかりのころ、小学校入学前の三男の耕(こう)を連れて、当時江戸川区小松川にあったシェアの事務局を支えてくれていた、大嶽さんの息子さんと一緒に彼の農園を訪れ、芋堀りをさせていただいたときの、子どもたちの喜びようはいまだに忘れられません。そういう土になじむ体験を通して、都会の子どもたちが、食べ物を作り、いただくことが、どんなに大変で、でも楽しい営みなのかを、学んでいく機会を増やすことはとても大切です。その意味でも、こうした、志ある農業実践家と、私たちはもっと結びつき、協力していく必要があるのでしょう。

おーい里山 ビッグイッシュ―
ビッグイッシュ―「おーい、里山」(#310、2017年5月1日号)


4.結びとして―里山資本主義とSDGs
 
 2011年3月11日の東日本大震災とその直後に発生した、福島第一原発事故は、今に続き、またいつ終息するとも言えないたいへんな試練を日本列島とその住民にもたらしました。その帰結はたぶん、22世紀になっても本当の意味では見えてこないのだろうと思います。

 路上生活者支援の週刊誌「ビッグイッシュ―」が2017年5月1日号で、「おーい、里山」という特集をしているのはとても時宜にかなったことでした。この雑誌は一貫して、福島からの避難民のためのメッセージを発信し、事故の被災当事者たちの声を伝え、専門家の意見や助言を掲載し、当事者たちを助ける働きをしてきたからです。同時に、危機に瀕する福島の美しい里山をどう蘇らせるかは、住民と「外からの」協力者や専門家が一致して考えていかねばならない、長期に及ぶ課題なのでしょう。このプロセスで、行政が果たさねばならない役割にも大きなものがあります。
 
 その意味で、私たちが学ばなければならないのは、「里山資本主義」という考え方なのかもしれません。提唱者の藻谷浩介さんと、NHK広島取材班の共著については、以前紹介したことがあります。

「里山資本主義」 藻谷浩介、NHK広島取材班(角川Oneテーマ21)

ひとりごと37:2011年3月
日本哲学会の場で聴く「持続可能性」の思想 − 原発事故と大震災の中で働く哲学者たちの危機意識


 「共生主義」は本当に可能なのか、そして、日本の社会で多数派と言わないまでも、きちんと影響力や発言力をもった考え方として、定着し、広まっていくことができるのか。
そんなことを思いながら、この有意義な本の最後のページを閉じたのでした。

 最後に、シェアの現場での仕事に関わりの深いSDGsについて。国連が2015−2030年の15年間にわたって世界全体の(途上国だけでなく先進国にも必要なものだから)開発目標として定めたSDGs(持続可能な開発目標)は、まさに共生主義にもとづく社会を創っていこうという野心的な企図でもあるわけです。

SDGsを通して、私たちの暮らしを成り立たせている、モノやカネや情報やサービスによる、世界的なつながりや構造的差別・搾取の関係を見直し、少数者や生態系に対してより配慮し権利尊重を旨とした、生き方が問われてきます。人びとの健康に関わるNGOとしては、シェアはやはりSDGsの中でもUHC(Universal Health Coverage:普遍的医療保健保障)に関する分野において、参加型で、インクルーシブ(包摂的)な活動を目指していきたいと願っています。

さて、今日からは東北タイにでかけ、デビッド・ワーナーさんや、HSF(Health SHARE Foundation)の仲間たち、工藤芙美子さん、広本充恵さんらと活動をともにしてきます。

また帰国したら、ぜひ、この「ひとりごと」で、タイからのつぶやきを皆さんと共有したいと思います。



2017年5月20日
シェア代表 本田 徹
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ワニのぬいぐるみ&マラカス作りのワークショップ

先週、GW中になりますが5月3日(水・祝)にJICA市ヶ谷にて
幼児から小学生向きの東ティモールのコーヒーを使った、
ワニのぬいぐるみ&マラカス作りのワークショップを開催しました!

現在、小学校教諭として活躍されていて、青年海外協力隊としてタンザニアへ
赴任経験のある山中先生と、シェアからは海外事業部の吉森が講師として参加しました。


東ティモールイベント
JICA市ヶ谷 地球ひろばのスタッフの方々がイベントの説明をしてくれました。

東ティモールイベント
子どもたちへ東ティモールについて質問をしてみました。


イベントには、保育園や幼稚園児から小学校中学年くらいの
沢山の子ども達が参加してくれ、みんな事前に東ティモールについて勉強してきてくれたのか、
吉森からの東ティモールのクイズにも、正確な答えが沢山でていました。

まだまだ知名度が低い国の東ティモールですが、
東ティモールの正確な国の位置も答えられる小学生もいて、驚きました。

こういったイベントを通して、小さい子にも東ティモールという国を知ってもらう
ということは、とても嬉しく感じました。


東ティモールイベント
東ティモールの「タイス」といった伝統的な布で作られた民族衣装も着てみました。


クイズのあとは、いよいよワニのぬいぐるみづくりです。

なぜ「ワニ」のぬいぐるみかというと・・・
東ティモール人はワニに人間が食べられたとしてもワニを殺すことはしません。
ワニを神聖な動物として崇めているからです。ワニを形どったモニュメントやワニの絵、
ワニの柄が入った製品などを至る所で目にします。

お父さんやお母さんと一緒になって、消臭剤になる東ティモールの使用済みコーヒーかすがぬいぐるみの中に入るよう一生懸命、時間いっぱい使って、ぬいぐるみを作ってくれました。


東ティモールイベント
お母さんと楽しみながら、ぬいぐるみ作ってくれました。

東ティモールイベント
男の子も夢中になって、ぬいぐるみに綿やコーヒーを詰めてくれています。

東ティモールイベント
イベント中の全体の様子

ワニ人形
子ども達が作ったワニのぬいぐるみ


みんな、ワニのぬいぐるみを楽しく作ってくれ、
一人ひとり個性のある「ワニ」のぬいぐるみを作ってくれました。

これをきっかけで東ティモールを身近に感じてくれたら嬉しいです。

5/20(土)には上智大学で、東ティモールフェスタが開催されます。
詳細はこちら

東ティモールにご興味のある方も、ない方でも是非東ティモールを体感しに来て下さい!


広報担当
比田井 純也



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