シェアタイではタイ・ラオス国境地域であるウボンラーチャターニー県ケマラート郡にある病院のHIV陽性者自助グループ「ミッタパープリムコーングループ (意味:メコン川の友好)」を対象に、グループへの支援活動を行っています。

毎月陽性者がARV薬(抗HIV薬)を受け取りにくる日を利用して病院内のHIV陽性者自助グループに対して定例会を開催しています。シェアはグループリーダーが自分たちでグループメンバーへ活動を行えるように彼らの自立を目指して、グループリーダーの育成に力を入れてきました。シェアがリーダーを育成した結果、現在では3名のグループリーダーが158名のメンバーに対して家庭訪問やカウンセリングを行い、定例会が実施できるレベルになりました。

そのうちのHIV陽性者を対象とした家庭訪問の活動は、現在シェアが日本の宮城県で行っている被災者の巡回訪問による健康相談と大変類似しているのでご紹介します。

タイでは、HIV陽性者リーダーたちが、HIV陽性者の家庭を一軒一軒訪問しながら、陽性者メンバーやその家族に対して精神的な勇気づけをしたり、HIVと共生していくためのアドバイスをしながら病院への治療アクセスを促したり、身体的にも支援をするなどしています。また、重症ケースなどは病院で治療が受けられるように患者の情報を地域の病院に連絡し、場合によっては病院に連れていくこともあります。東日本大震災における活動と同様に、タイでの活動においても地域の医療機関との連携は大変重要です。

家庭訪問の対象となる人々の中には、日和見感染症にかかっている人や、薬を継続して受け取りに来ていない人など、様々な人が含まれますが、中でも新規感染者の人たちは、HIV陽性を告知された後、ネガティブ思考になり自殺願望を持ち気持ちが塞ぎ込みがちなケースが見られることもあります。そうした人たちが時間通りに薬を服用できているか、薬による副作用がないか確認をするなど、一人ひとりに対して細かいケアができるよう、常に優先順位を考えながら活動しています。

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シェアスタッフとリーダーが陽性者メンバーに話しかけている様子

タイの活動から学んだ事として付け加えておきたいのは、家庭訪問をする中で大切なのは、お互いがリラックスした雰囲気で会話できる環境づくりをするということです。一見すると活動には関係のない話題であっても、真剣な話からはじめるよりは、世間話などから始めることによってお互いの良い関係作りに役立ちます。タイでは、食べ物の話で会話が弾んだりするため、こうした話題づくりなどの細かな配慮が家庭訪問には不可欠なのです。

このように、シェアは国内活動にかぎらず、海外の活動においても、細かい気配りを忘れず、常に対象者の立場にたった思いやりの活動を行っていきます。

タイ事務所 アドミニストレーター 広本充恵

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スタッフとリーダーがアリとアリの卵の和え物を食べながら、家庭訪問先で盛り上がって笑いに包まれている様子(意外に試食してみるとおいしかったです!)

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Share Thailand Office is conducting support activities for "Mittraphap Lim Kong Group (amicability of Mekhong)" which is a self-help group of HIV positive people in a hospital in Khemmarat District, Ubon Ratchathani Province, the border area between Thailand and Laos. Utilizing the time when group members come to the hospital to receive ARV (anti HIV drug) each month, regular group meetings are held. Share has made a strong effort to nurture group leaders to independently carry out activities for the other group members. As a result of this support by Share, at this moment, based on the experiences of counseling and home-visiting 158 members, three group leaders have reached performance level for regular meetings. I would like to introduce home visiting activities for HIV positive group members by group leaders because it is similar to the SHARE health counseling service carried out during home visiting of disaster victims in Miyagi, Japan.

In Thailand, visiting families of HIV positive group members, one by one, the group leaders encourage the members and their families with moral support, giving them advice on how to live with HIV and encouraging them to go to the hospital for treatment. They give them physical support as well. In case of a serious case, group leaders contact the hospital to give information on the patient in order for the patient to be taken to the hospital for treatment, and in some cases, they even take the patient to the hospital. As with East Japan Great Earthquake victims, cooperation with local medical organizations is very important for activities. Among the targeted people for home visiting, are people who have been affected by opportunistic infections and those who haven't come to pick up medicines. In addition, people newly infected by HIV tend to become gloomy and suicidal due to negative thinking. Confirming whether such people can take their medicine on time or if there are side effects, group leaders always operate putting thinking priority on giving detailed care to each person.

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SHARE staff and group leaders talking to a HIV positive member

What I would like to add about what I learnt from the activities of Thailand is that the important thing in the home visiting is creating an environment for relaxed conversation. Starting with small talk rather than serious talk could be much useful for making a good relationship. In Thailand, since conversation often becomes lively by talking about food, it is essential for home visitors to be sensitive about bringing up topics. Like this, SHARE is always conducting thoughtful activities on behalf of targeted people without forgetting careful consideration not only of activities in Japan, but also overseas.

Mitsue Hiromoto, Administrator, Share Thailand Office,

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Eating marinated ants and egg of ants, leaders and members are getting moving surrounded by laughter at a family visited. (It tasted better than we imagined!)
イタリアに在住する加藤さんが、勤務先であるイタリアンレストラン「オステリア マデルナッサ」で一緒に働くイタリア人の同僚や近くのレストランで働く日本人の友人の皆さんに呼びかけて、被災地の復興支援を目的としたチャリティ夕食会を開催してくださいました。夕食会は3日間に渡って開催され、胡麻和えや玉子豆腐、蕎麦や寿司などの和食が主に出されました。お料理は、現地のイタリア人の方々にも大変好評だったようです。

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(綺麗に盛り付けられた日本料理)

普段は日本から遠く離れたイタリアに住む加藤さんですが、日本の東北地方が地震や津波で大変な被害に遭っている状況をテレビ等で見て、「日本のために何かしたい」という思いから、今回の夕食会を開催されました。夕食会で集められたご寄付は、加藤さんよりシェアにお送りいただきました。

レストラン「オステリア マデルナッサ」のスタッフや地域の方々を始め、多くの主催・協賛各社の協力を得て開催された今回のチャリティ夕食会。加藤さんの、「遠く離れていても、困っている被災者を支援するために行動する」という熱い思いとその実行力のある姿勢から、私個人的にも、「まずはできることから行動する」という、基本的ではありますが、とても大切な姿勢を再認識させられたように思います。

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(日本料理を作る「オステリア マデルナッサ」のイタリア人スタッフの皆さん)

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(レストランのシェフ石河淳啓さん<最前列左から2番目>と、夕食会の開催に協力してくださった皆さん)

加藤さん、「オステリア マデルナッサ」のスタッフの皆さん、ご協力してくださった皆さん、素敵な夕食会を開催してくださり、心より御礼申し上げます。

シェアは、加藤さんをはじめ、遠く離れた人々のこうした熱い思いを被災地域に届けるべく、いただいた寄付を現地での支援のために大切に活かさせていただきます。

現在、シェアが活動している気仙沼市では、仮設住宅への入居が始まっています。緊急支援から復興支援へとフェーズが移行している中、今後の被災地域の体力づくりにつなげられるよう、一人ひとりに寄り添った長期的な保健医療支援を行っていきます。

シェア広報アシスタント 井川摩耶
(2011年6月24日)

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(素敵な笑顔を見せてくれた加藤さん)

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Ms. Kato living in Italy held a charity dinner party with the aim of contributing to reconstruction of disaster area in Japan. She invited her Italian colleagues at Italian restaurant "La Madernassa" where she works, and Japanese friends working in restaurants nearby. The dinner party was held over three consecutive days, serving Japanese cuisine such as vegetables mixed with sesame seeds, steamed egg curd, soba noodles, sushi and so on. The foods were very popular with the Italians as well as Japanese who attended.

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Japanese food beautifully placed in a serving dish

Ms. Kato, living in Italy far from Japan, got news of the Tohoku region damaged by earthquake and tsunami through TV and other media. She decided to hold a dinner party out of a strong desire to do something for Japan. The money raised at the party was sent to SHARE by Ms. Kato. I learned a basic but important attitude from Ms. Kato: from her passionate desire to "take action to support suffering victims even when you are far away from Japan," and her ability to get things done. It reminded me of the importance of "taking action by doing what I can do."

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Italian staff of La Madernassa cooking Japanese cuisine

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People who assisted with the dinner party

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Ms. Kato

I would like to express my deepest gratitude for the wonderful dinner party to Ms. Kato, everyone at La Madernassa, and all who offered assistance. SHARE is going to make the most of the contribution, using it in quake zone activities. We will deliver the heartfelt feelings of people living far away, like Ms. Kato, to the devastated area. In Kesennuma where SHARE is working, disaster victims have started to move into temporary housing. In the transition of the phase from emergency relief to construction relief, SHARE will continue to carry out long-term health care assistance, standing beside the people it works for.

Maya Ikawa, Assistant, Public Relations, SHARE

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日本哲学会の場で聴く「持続可能性」の思想
− 原発事故と大震災の中で働く哲学者たちの危機意識


1.愛智(フィロソフィア)の場へのいざない
 日々、医療の仕事に追われている身には、哲学的な思惟というのは最も縁遠いものなのかもしれません。ほんとうはそうであってはならないのですが、ペーパーワークやパソコン・携帯端末のディスプレーに向かう時間があまりに増えた現代の医療現場では、機械的で反射的・反復的な作業に埋没する中で、医療者から人間性を失わせていく危険が潜んでいるようにも思います。そのことを反省的に意識する自分もまた、どこかに消し飛んでしまっていることを、稀に気づいて、ぞっとすることがあります。
 過去にもこのブログで、すぐれたキルト作家として紹介させていただいたことのある、岩渕扶美子さん(Dr.本田のひとりごと(19)「キルトに籠めた思い − カンボジアに運ばれる日本人の愛の手仕事 2007年5月10日」)から、ある日、日本哲学会発行の学術誌「哲学」の62号(2011年4月)と、5月14−15日に東京大学で開かれる日本哲学会の抄録が送られてきたのには、驚いたというか、「あなたはいつも忙しい振りをしているけれど、たまには、哲学者たちの真剣な思索の場に立ち会ってみてはどうですか?」と諭(さと)されているような、虚を突かれるところがありました。そこで思い出したように書棚から引っ張り出してきた、西田幾多郎の「善の研究」には、哲学的思惟について、こんな文章があります。
 「思惟を進行せしむる者は我々の随意作用ではない、思惟は己(おのれ)自身にて発展するのである。我々がまったく自己を棄てて思惟の対象即ち問題に純一となった時、更に適当にいえば自己をその中に没した時、始めて思惟の活動を見るのである。思惟には自ら思惟の法則があって自ら活動するのである。我々の意志に従うのではない。」
(第一編 第二章 思惟)
 たまには、こういう本物の思惟と思惟がぶつかり合い、「火の玉」を生む場に立ち合いたいと思い、5月の土曜日の午後、東大のキャンパスにのこのこと、私という門外漢は向かってみたのです。赤門を潜り抜け、会場の法文2号館入口に辿り着くと、能筆の岩渕さんが墨書された「日本哲学会」の美しい文字が掲げてありました。岩渕さんご自身も受け付けにいらして、フィロソフィア(愛智)の地に流れ着いてすっかりまごついている「唐変木」(とうへんぼく)の私を笑顔で迎えてくださり、安心しました。

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みずから筆をおろされた「日本哲学会」の墨書と岩渕扶美子さん

2.「持続可能性の哲学」とは? 里山からのまなざし
 岩渕さんにお別れしてからのぞいてみた、最新のフランス哲学を論じ合う分科会は、聞いてもちんぷんかんぷんでしたが、その後に共同討議として開かれた「サステイナビリティの哲学」というセッションには非常に引き込まれました。ひとつには、「持続可能性」と普通訳されているサステイナビリティ(Sustainability)が、シェアのような開発協力に携わるNGOにとって重要な鍵概念であり、哲学者がいかにこの言葉を解釈し、使っているのか、とても気がかりだったということがあります。もう一つ、この共同討議に参加している哲学の徒たち皆さんが、東日本大震災と福島原発事故の直後に開かれる哲学会の主要な討議のテーマとしての、「社会の持続可能性」に、なみなみならぬ切実な関心を寄せていて、そのことが、会場の張りつめた空気に感じられたためでもありました。
 パネリストの一人である、龍谷大学の丸山徳次教授の発言にとくに私は共感を覚えました。丸山さんは、近年注目されている「里山学」の提唱者の一人で、人の手の入った「文化としての自然」とも言える里山がもたらしてきた生物多様性が、21世紀の地球環境保全に資することを信じて、里山学の理論化、哲学化に取り組んできました。丸山さんにとって、龍谷大学の瀬田キャンパスがある滋賀県大津市瀬田丘陵に残る里山こそ、学際的・集学的なフィールドワークを組織し、多くの市民を啓発し、里山にいざなっていく上での「学びと交流の場」となってきました。彼らの広範で豊かな仕事は、「里山学のまなざし」(昭和堂)にまとめられています。
 この本のいくつかの章を読んで私が感じたのは、私たち日本人の祖先が、長い歴史を通して里山的自然を形成してきた一方で、里山こそが逆に、自然といういのちと魂を持つ存在として、人間社会へまなざしを注ぎ返し、私たちが真に智慧ある存在として振舞っているのかを、見張っているという言い方もできるのだろう、ということでした。これはあたかも、あの「アイヌ神謡集」で知里幸恵さんが美しい日本語に移し替えて歌ってくれたように、ふくろうや鮭などの動物が、みずからのいのちや魂、文字通り全存在を犠牲にしてまで、アイヌ(人)に教え諭そうとしていたことにつながるものと思えたのです。あるいは、宮崎駿監督の「もののけ姫」にも通底する思想でしょう。

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里山学のまなざし <森のある大学>から

3.世代内および世代間正義としての持続可能性
 丸山教授のお話でもうひとつ私が心惹かれたのは、持続可能性を世代内および世代間正義という文脈の中で捉え、考察していこうとする姿勢です。
 福島原発事故は、持続可能な社会という意味ではもっとも深刻な脅威と生みだし、この先何十年にわたり、その脅威は取り除かれない可能性があります。孫・子の世代を超えて、私たちの世代が生み出した放射能汚染問題が、日本列島に住み続けるであろう何百万・何千万もの人間に、大きな環境的負荷を強い、健康被害を与え続けることになった場合、そのこと自体、世代間の正義にもとり、持続可能社会を壊す要因となります。一方、このような原子力発電に伴う事故は、ある意味で、日本の中にある「南北問題」を照らし出す結果となりました。私たち都民の生活の利便と快適さのために東北地方の福島に建てられた原発が、安全神話を裏切って事故を起こし、福島県はもとより、そこを超えた多県にわたって環境的・農漁業的な被害を与えたという意味では、世代内の不正義をもたらしたということにもなります。これは、日本の安全保障政策の中で、常に沖縄が負わされてきた、過重で不正義な、米軍基地受け入れの負担という問題にも共通するものと言えます。同時代において、日本という「先進国」のある地域と別の地域の間に横たわる格差の問題には、資源や利便や安全を安価に提供する後背地対それらを受け取る首都圏いう、途上国と先進国の間にある、経済的な従属関係としての「南北問題」に重なるものがあります。とは言え、世代内不正義は、ある意味では、歴史的に形成されてきたものでもあります。植民地主義や帝国主義時代の「負の遺産」がそのまま解決されず、依存や格差の問題として持ち越されてきたという意味では、いまある世代内不正義は、過去の世代間不正義の変型(metamorphosis)として捉えることもできます。いずれにしても、私たちは、丸山先生が提唱するように、広い視野と歴史的展望に立って「社会の持続可能性」を考え、その実現・再生のために真剣に取り組んでいかねばならないのでしょう。現在、シェアが、訪問看護ステーションコスモスをはじめ、さまざまな組織・個人のご協力・支援をいただきながら、気仙沼の人々との真の信頼関係に立って、進めようと努力している地域の保健・介護・福祉・看護・医療の仕事は、その意味で、国際協力NGOとしてのこれまでの私たちの経験や蓄積の真価を問われる営みでもあるのです。そのことを真摯にかみしめつつ、息長くがんばっていきたいと、哲学者たちの真剣な討議に聴き入りながら、私は改めて強く思いました。

シェア代表理事  本田 徹

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