在日外国人支援事業部で外国人医療相談の担当をしている廣野です。シェアの事務所がある台東区の上野動物園で生まれた赤ちゃんパンダ香香(シャンシャン)は、無事に成長して来月公開とのこと。ぜひ観に行きたいなぁと思っています。

セミナー開催の背景と目的
さて、9月末から当会ホームページやfacebookでも告知させていただいた通り、11月4日(土)に、台東区立ふれあい環境館ひまわりにおいて、シェア・セミナー「医療通訳にできる20のこと~医療従事者にとって医療通訳とは何か?~」を開催しました。当日は看護師、保健師、医師などの医療従事者を始め、医療通訳も多く、約60名の参加者で会場は満席となりました。

このセミナー開催の背景には、留学生や技能実習生の増加に伴い、外国人の受診機会がますます増えることが見込まれる中、医療現場でインフォームドコンセントを得るために、訓練された医療通訳の存在が不可欠であるという認識は未だ十分に行き渡っていないという現実があります。一方で、医療従事者が医療通訳の必要性を認識して医療通訳を手配したいと考えても、地域によって通訳確保が制度面、財政面でも十分に整備されていないという実態もあります。

そこで、シェアではまずは医療従事者の皆さんに医療通訳を活用する意義、メリットをお伝えし、医療現場で通訳活用の機会が創出される一助になること、そして、それがひいては医療通訳制度整備の充実に繋がることを目指し、医療通訳活用をテーマとしたセミナーを開催することにしました。

医療通訳にできる20のこと
今回は当会副代表で医師の沢田貴志、公益法人結核予防会総合健診推進センター呼吸器科医師高柳喜代子さん、当会医療通訳(ネパール語、ヒンディー語)のマラ・スミタ・マンジャリさんを講師として迎えました。沢田からは外国人診療に関わる課題や背景、言葉の問題の現状、通訳活用の技術などについて話しました。そして、高柳さんからは自身の外国人の結核治療において医療通訳を活用されている立場から、医療通訳が医療チームの一員として果たしている役割などについて、マラ・スミタ・マンジャリさんからは医療通訳としての経験から、医療通訳が入ることによってもたらされる患者さんの変化や、文化的な解釈の違いなどの話がありました。

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【ユーモアと示唆に富んだマラ・スミタ・マンジャリさんのお話に聴き入る参加者】


そして、それぞれのお話の中から、医療現場に通訳者が入ることの意義やメリットをとりまとめ、以下の通り、このセミナーにおける「医療通訳にできる20のこと」としました。20番目を「あなたにとって」でブランクとしたのは、参加者が講師の話の中から自分の視点で「医療通訳にできること」を見つけたり、医療従事者がこれから医療通訳と共に働く中で、新たな「医療通訳にできること」を見出すであろうという思いを込めてのことです。

20のこと


医療通訳の大変さを知ったロールプレイ
参加者は講義を聴くだけでなく、ペア(患者/医師役1名、通訳役1名)になって、がん治療を題材にした医師と患者のやりとりの台本をもとに、通訳の仕事を少しだけ体験できるロールプレイをしました。このロールプレイでは医師役が日本語で話した内容を、通訳役もそのままメモを取るなどして、日本語で話します。日本語話者にとっては、「日本語→日本語」ですから、それほど難しくないように思われるかもしれません。しかし、実際に取り組んでみると、その予想は覆ります。「耳で聞き取った日本語を、正確に日本語に訳すのがこんなに難しいとは!(ましてや外国語に訳すのであれば・・・)」「集中力が続かない。」「医療従事者が一息に長文で話すと、日本語であっても訳すのが大変だ。」などの声が聞かれ、医療通訳が現場で求められる集中力、知識と訓練などを伺い知ることができます。一方で、医療通訳を介して話す医療従事者にとっては、使う用語、話すスピードや文章の長さなど、どのようなことに気をつけながら医療通訳を活用すればよいのか、通訳の立場から考えることができたと思います。

おわりに
参加者から回収したアンケート結果をみると、医療従事者の方からは「医療通訳について理解を深めることができてよかった」、医療通訳者からは「医療通訳について医療従事者に知ってもらうことができてよかった」というものが多かったように思います。つまり、医療従事者と医療通訳が相互に理解を深める機会が普段あまりない、ということなのではと感じました。こうした参加者の声に、これからシェアがどのように関わっていけるのか、これからも考えて行きたいと思います。
最後に、今回のセミナーは2016年に多くの皆さまからお寄せいただいたクラウドファンドを活用して開催することが出来ました。ご支援下さった方々に深く感謝を申し上げます。





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在日外国人支援事業担当
廣野 富美子