「2年前に来た時は無かった柵が校庭にできてる!」、
「この学校、前はトイレが使えてたのに今は鍵がかかって使えない・・」、
「水が十分に無いのに頑張って学校菜園してるなぁ」、
「せっかく研修して、配った保健教材、なんでまだ先生たち使っていないんだろう」・・・


10月はこんな一喜一憂の日々を過ごしていました。

何をしていたかというと、ディリ県内の全小中学校97校を訪問してのエンドライン(プロジェクト終了時)調査です。2016年から始まったディリ県での学校保健プロジェクトも、いよいよ終わりが見えてきました。そこで今回はエンドライン調査結果から見える「3年間の変化」についてお話します。

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写真1:各学校を訪問するシェアスタッフ


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写真2:離島アタウロ島には漁師の小舟でしか行けない学校も多いです


改善したこと

この3年間での最も大きな変化は、保健が小学校で一つの独立した教科になったことです。そのおかげで、現在は全97校が保健教育を実施していると回答しました(グラフ1)。以前は「保健体育」という教科がありましたが、体育が重視されがちでした。教育省が今年2018年に学校にわかりやすい新指導要領を配布したこともあり、保健の知識が十分に無い先生でも保健教育がしやすくなったようです。

グラフ1

グラフ1


改善したこと

第二の変化は学校健診を実施する学校が増えたこと。学校には2014年に教育省が配布した身長・体重計がありますが、研修もせずに配布されたため、以前は一部の学校だけが手探りで身長・体重測定をしていました。せっかくある機材を有効活用し、学校で子どもたちが自身の健康に関心を持つ機会をもてるようにしたいと思い、シェアは身体測定と簡易的な視力検査、歯科健診の実施手引きを開発し、その後実施方法を先生たちに研修しました。そのような働きかけの効果か、健診を実施する学校は22%から48%に増えました(グラフ2)。

グラフ2

グラフ2


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写真3:視力検査を学校ですることで、視力の低い子どもたちは黒板の字が良く見える席に座らせたり、眼鏡の使用を促したりすることができます。(医療費が無料の東ティモールでは眼鏡もタダで作れます!)


その他、日本で言えば保健委員会にあたる「児童保健委員会」がある学校は32%→49%に、菜園がある学校は11%→28%に増えました。また、私たちの訪問中に喫煙している先生がいた学校は27%→11%に減少しました。

改善が難しい学校の衛生環境

改善したことがある一方、変化があまり見られないのは学校の衛生環境。学校環境の中でも校庭や教室の状態は比較的良かったです。8割以上の学校では校庭と教室は、ゴミのポイ捨てが減るなど、衛生状態が改善するか、良い状態を保つことができていました(グラフ3)。

グラフ3

グラフ3


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写真4:掃除の習慣はほとんどの学校で定着しています。



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写真5:教室のゴミをまとめる児童たち


一方、課題が大きく残るのは水と衛生の設備。依然として、きれいな水が常に確保できている学校は半分ぐらいしかありません(グラフ4)。水が無いと、トイレや手洗い設備を使えないことが多く、子どもたちの学校生活には影響大。子どもたちに「トイレが無くてどうしてるの?」と聞くと、「学校のトイレは使えないからいつも我慢している」、「学校の近所の家のトイレを借りているよ」という可哀そうな答えが返ってきて、シェアとしても、非常に「何とかしたい」問題です。しかしながら、地域の人が敷地に入ってトイレを壊してしまったり、そもそも地域全体で水の供給自体が不足していたりと、水・衛生問題は学校だけでは解決が難しいのです。

グラフ4

グラフ4


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写真7:シェアが推奨している簡易手洗い設備「Tippy Tap」があれば、水が十分に無くても多くの子ども達が手を洗うことができます。


政府への提言

エンドライン調査の結果は学校長や県行政の関係者と既に共有し、「すでにできていることは何なのか」、「もっと改善が必要なことは何なのか」を話し合う際に役立てています。教育省と保健省に対しても、政府として優先的に取り組むべきことを提案しています。
例えば、水・衛生設備の改善や、全国の教員対象学校保健研修の実施のための予算を確保するように働きかけています。良くも悪くも東ティモールの「学校の現実」を浮き彫りにしたエンドライン調査結果。この調査結果は引き続き、政府関係者だけでなく他のNGOや国連機関など、より多くの関係者と共通の目的意識を持つために活用し、シェアだけでは手が届かない地域にも学校保健の輪が広がることを願っています。

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Services for the Health in Asian & African Regions

Maki Akiyama 秋山真輝
Project Coordinator