在日外国人支援事業を担当しています、山本裕子です。
久しぶりにブログ登場です。テレビ情報なので効果が本当にあるか分かりませんが、最近は、悪玉コレステロールを減らすために、トマトをなるべく毎日食べるようにしています!

さて、本日は、10月21日に開催した「母子保健のためのネパール語通訳基礎研修」で気づいたことについてご報告したいと思います。


通訳の訓練を受けたことがない同国人が“通訳代わり”となっている実情

シェアと一緒に活動しているネパール人女性ボランティアのうち、通訳として活躍できるよう日々努力している人がいます。彼女は、知人やコミュニティから相談を受けて、まだ通訳として訓練を受けたことがない段階から、妊婦健診への同行通訳や、大変なときには病院から帝王切開の際の同席による通訳まで求められたりしてきました。当然全てボランティアです。“通訳代わり”は、通常通訳の訓練を受けていない人たちですので、誤訳が起きていてもこの人たちの責任ではないのですが、無謀な通訳を求められていると感じたときは、“通訳代わり”の皆さんの身を案じてしまいます。

彼女たちがそうせざるを得ない背景として、外国人妊婦が日本語を話せない場合、多くの病院は“通訳代わり”として妻よりも日本語ができる夫や友人・知人などを、妊婦自らが確保して健診の際に“毎回”連れて来られないと出産を病院に受けてもらえない、という切実な事情があります。夫が一回だけ同席できない状況が起きたことで病院はその後出産受入を断った、というケースもありました。

また、東京都内の多くの保健センターは、母子保健分野で通訳を活用できる環境が整っていません。医療現場ほどの切実さが“保健”の現場では感じられないからだと2015年にいくつかの保健センターからお話をお聞きした際に把握したのですが、その後母子保健分野での通訳派遣依頼におけるやりとりを通して感じた、現場の保健師さん達の本音は、通訳が活用できる環境があればどれだけ助かるか!ということです。中には、まず通訳に来てもらうための予算を獲得するところから奮闘し、結局理解を得られず困っている保健師さんもいらっしゃいました。

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保健や医療の通訳の基礎について説明する講師の森田さん


母子保健のためのネパール語通訳基礎研修を開催

このような状況を少しでも改善していくために、医療通訳まではできなくても保健センターが実施している赤ちゃん訪問や乳幼児健診などの、医療用語や複雑さが少ない母子保健の場面での通訳ができる人たちを育てたいという思いで、「母子保健のためのネパール語通訳基礎研修」を計画しました。東京都内で当会が活動でつながりのある地域のネパール人コミュニティを中心に広報し、5名(ネパール人3名、日本人2名)が参加してくれました。日本人のネパール語通訳も増えていけばうれしいと思っていましたので、ネパールの青年海外協力隊OGが参加してくれ、有難いと思いました。

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通訳練習のロールプレイを終えての質疑応答の様子



実は母子保健分野の通訳は一般医療通訳よりも難しかった!


研修では、まず、日本の母子保健サービスについて簡単に説明をしながら、どのような場面で通訳が必要とされているのか説明をしました。そのあと、保健や医療の場面での通訳の基礎について、シェアの医療通訳であり全国医療通訳者協会(NAMI)代表理事の森田直美さんが講師として、ワークを交えながら講義を行ないました。そして、妊婦健診や赤ちゃん訪問における通訳場面をシナリオにして、通訳を実際にやってみるロールプレイを行ないました。

そのロールプレイを通して、通訳する上での疑問がいろいろ出てきました。“陣痛”をネパール語で伝える際に直訳できる言葉はあるのですが、陣痛はどのような痛みなのか、おなかが引っ張られるような痛みなのか、収縮するような痛みなのか、膨らむような痛みなのか、などという議論になりました。また、お腹が「張る」は、ネパール語にはそのまま訳せる言葉がないということで、お腹が張るとは引っ張られる感じなのか、どんな感じなのかについてもみんなで確認しあいました。その他、子宮底長とは、など母子保健分野独特の専門用語があることにも改めて気づかされました。それを助産師や保健師がそのまま使ってしまっている現状がありそうです。臨月、おしるし、腹帯、などなど日本独特の伝統的な表現もあります。母子保健分野が、医療現場での通訳より難しくないと勝手に思い込んでいた私としては、“あれあれ、母子保健分野の通訳って実は難しい!”と気づくことができました。その話を講師にしたら、「風邪などの一般医療の通訳よりも母子分野の通訳は難しい」と教えてくださり、医療通訳と同等のスキルが求められ、さらに母子保健分野独特の用語への対応が求められることを学びました。

1月には、参加してくださった方々がステップアップできるように新たな研修を企画しています。今回の学びを活かして、より良い研修ができるよう準備していきたいと思います。



在日外国人支援事業担当
山本 裕子