本格的な雨期が始まる直前の10月29日。後ろにせまる山々もすっかり緑を失い、砂ぼこりが舞う広場で、完成したばかりのヘルスポストと医療者用宿舎の竣工式を行いました。

保健省規格の公的なヘルスポスト(地域の診療所)は、ここに暮らす400世帯、2000人にとって最寄りの医療施設となります。無医村だったこの村からは、長年政府へヘルスポストの建設要望が出されていましたが叶わず、シェアのプロジェクトでようやく実現することができました。


※本事業は外務省による日本NGO連携無償資金協力の助成の他、皆さまからのご寄附やご支援を受けて実施しています。

シェアが建物の建設?
これまでは、人材の育成や能力強化、保健医療の仕組みを整えるお手伝いをしてきたのがシェアの主要な活動でした。建設を決めたのはちょうど2年前。ディリ県保健局長から、予防接種率など保健指標の向上や、住民への健康増進活動に、施設建設を含めて力を貸してほしいと強く要望されたことが始まりです。

保健局から戻り事務所で「ヘルスポスト建設かあ・・・」と、しばし無言で現地スタッフたちと見つめあったのを覚えています。

それからは、分厚い建築図面や資材リストに聞きなれない用語の数々。実績のある建設会社探しや土地の使用許可取得、設備の確認など、初めてのことばかり。聞ける人にはなんでも聞き、保健省の関係部署を連日はしごしたのが昨日のことのようです。


完成したヘルスポスト
完成したヘルスポスト

ヘルスポストの横に建つ医療者用宿舎
ヘルスポストの横に建つ医療者用宿舎


350人が参加した式典
竣工式の式典には地域住民のほか、保健省副大臣や事務次官、日本大使館書記官、県知事、郡知事なども出席しました。隣にある小学校の子どもたちは施設利用を促す寸劇や、予防接種の大切さやたばこの害の歌を大きな声で披露してくれました。

この学校は去年までの3年間、学校保健プロジェクトの対象校でもありました。学校保健研修を受けた先生が、日ごろの保健教育の成果を見せてくれました。


銘板へのサイン
銘板へのサイン

テープカットの様子
テープカットの様子

マンゴーの木から落ちた同級生をヘルスポストにみんなで運んで助かった!という寸劇を、先生と一緒に考えたそうです
マンゴーの木から落ちた同級生をヘルスポストにみんなで運んで助かった!という寸劇を、先生と一緒に考えたそうです


首都にもある僻地地域
東ティモールの首都ディリ県は30万人都市ですが、最寄りの医療施設まで山道を歩いて1〜2時間かかるような地域が今もあります。

新しく完成したベサヘヘルスポストがあるマヌテルラオ村も、全6集落のうち130世帯が暮らす2集落は道が悪いために救急車が入ることができません。

ほとんどの人が自宅で出産し、妊産婦検診や生まれた赤ちゃんを予防接種に連れていくにも、郡の中心地にある保健センターに行くか、月に一度の移動健診SISCaが来るのを待つしかありませんでした。


赤ちゃんを抱えて、乾いた川の中を歩くお母さん
赤ちゃんを抱えて、乾いた川の中を歩くお母さん


新しいヘルスポストでできること
村人はこれから、いつでも近くのヘルスポストで、無料で予防接種や基本的な診療が受けられ、薬ももらえます。来年から助産師が常駐すれば出産もできるようになります(東ティモールの公的な医療費はすべて無料と憲法で定められています)。重篤な病気やレントゲン検査などが必要な場合は、ここから郡保健センターや国立病院に搬送します。

ここで働く医療者はまずは2名。ヘルスポスト勤務経験のある中堅看護師と新任看護師が常駐し、On the Job Training(現任研修)をしていきます。年内は医師や助産師が交代で診療し、来年からは医師と助産師も常駐することを保健省副大臣が式典で、住民の前で約束してくれました。

予防接種のワクチンを保管する冷蔵庫など業務に必要な書類や設備も、県保健局の手配によってさっそく設置されました。


ヘルスポスト勤務経験もある看護師のオクタビオさんが当面常駐します
ヘルスポスト勤務経験もある看護師のオクタビオさんが当面常駐します

ヘルスポストの中
ヘルスポストの中


シェア東ティモール20年目の新しいチャレンジは山あり谷あり
3月には建設を開始、なんとか順調に9月に完成しましたが、いろんなことがありました。

  • 建設会社の見積計算が大いに間違っていて慌てて算出しなおした

  • 建設地の選定で郡知事と話の折り合いがつかずに、助けを求めた県知事が急遽会議を開いてくれ、住民の合意を得ることができた

  • 建築現場を任せられるスタッフを雇用できて順調に建設が進んだかと思えば、完成したばかりの建物にひびが見つかってたびたび修復した

それでも無事に竣工式の日を迎えることができました。


シェアと長年活動を共にしてきた元エルメラ県保健局長でもある現保健省副大臣のボニファシオ氏とシェアスタッフで記念撮影
シェアと長年活動を共にしてきた元エルメラ県保健局長でもある現保健省副大臣のボニファシオ氏とシェアスタッフで記念撮影

さて、こうして建物ができてからが、シェアの本領発揮です。地域住民が必要とする時にベサヘヘルスポストが活用されるように、そこで働く医療者の技術やサービスを強化していきます。住民への健康情報の提供も行います。

このヘルスポストを拠点に、さらに奥地にある集落に、医療者が定期的に訪問するモバイルクリニックなども展開します。シェアの理念でもある「Health for all」そして、UHC(※)の達成を目指して、誰もが保健医療サービスを受けられることを目指して活動を続けていきます。これからも応援よろしくお願いします。



*UHC:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ
国際社会の中で認められている世界各国における開発目標です。「すべての人が、適切な予防、治療、機能回復に関する保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指します。(厚生労働省HPより)


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文責:吉森 悠(シェア 東ティモール事務所 現地代表)