金融庁が標準利率の引き下げを発表した。

金融庁「標準利率」12年ぶり引き下げへ 生命保険料値上げの可能性

予定利率とは、保険会社が顧客から預かったお金を運用する際の利率のことだ。標準利率は保険会社各社が自社の予定利率を決める際に参考にするもので、昨今の金利低下を受けて引き下げが発表された。記事にあるとおり、従来1.5%だったものが1%に引き下げられる。


■予定利率が下がると何が起こるか?
長期金利が1%前後をうろうろしている中で、保険会社が1.5%での運用を顧客に約束するのは厳しい。当然1.5%で運用できなければ、損失となる(いわゆる利差損)。

現状では、銀行の定期金利は0.2%もつけば高い方だ。個人向け国債でも変動金利型は現状で0.5%とか0.6%程度だ。これらの数字と比べると保険会社が約束する1.5%という利率が突出して高い事が分かる。

ここでありがちな誤解は以下の二つだ。

1.予定利率の引き下げは終身保険や学資保険、個人年金保険などの「積み立て型」の保険にしか影響せず、掛け捨て型の保険には関係がない。
2.保険会社の利回りは銀行や国債より高いので有利。

いずれも間違っているのだが、まずは1から説明したい。結論から言ってしまうと、予定利率の引き下げによって掛け捨て型保険の保険料も上がる事が予想される。この誤解は保険料がどのように徴収されているか理解できれば簡単に解けるだろう。

積み立て型の保険とは、保険料を貯金のように積み立てることで、死亡時に保険金を受け取れる以外に、解約時や満期時には支払った保険料を上回る額の返戻金を受け取れるタイプの保険だ。一方、掛け捨て型は払った保険料が戻ってこないタイプの保険をさす。

加入者が払う保険料は、加入から10年とか20年、あるいは65歳まで、といった区切りで、更新をするまで保険料は変わらないのが一般的だ。しかし、本来人間の健康状態は年齢が上がるほど悪化しやすくなる。保険料は全て確率で計算されているので、病気や死亡しやすくなるほど、つまり年齢が上がるほど保険料を高くしなければ保険は成り立たない。しかし、毎年ちょっとずつ保険料を変更するのは事務作業の上で手間が伴うし、加入者も保険料は頻繁に変わらない方が支出の管理をしやすいというメリットもある。

結果として、例えば30歳の男性が10年で更新するタイプの生命保険に加入する場合、10年間保険料は変わらないが、上で説明した本来の保険料(自然保険料)と比較すれば、加入当初は本来より保険料を多く払い、9年目・10年目といった後の期間では本来より少ない保険料を払う事になる。

これは実例を見ると分かりやすいが、例えばライフネット生命で30歳の男性が3000万円の生命保険に加入する場合、10年定期ならば月額の保険料が3484円、20年定期ならば月額保険料は4909円、差額は月額1425円となる。これは20年定期の保険料は10年定期と比べて、より保険料が高くなる40歳以降の部分まで若いうちから負担するという仕組みになっているため、その分割高になる(これはどの会社でも同じ仕組みだ)。

勘の良い人ならばこの話と予定利率の関係はすでに分かったかもしれない。加入当初は多めに払い、後の期間では少なく払うという事は、当初多めに払った保険料を後々取り崩す事になり、掛け捨て保険であっても保険会社に一時的にお金が貯まる事になる。

この保険会社に貯まったお金は予定利率で運用され、運用で得られた利息は保険料(掛け金)から割り引かれる。つまり、予定利率が高いほど掛け捨て保険でも割安になる、という事だ。今回は予定利率の引き下げなので、当然保険料は上がるという事になる(どれ位保険料が上がるかは保険会社によって異なる。コストダウンや利益を減らす事によって保険料の引き上げ幅を抑える、といったやり方もあるからだ)。

では保険料が上がる前に保険に入っておこう、というのは正しいのかというと、これは微妙な判断だろう。完全に間違っているわけではないが、今後金利は下がる余地はほとんど残されていないが上がる余地はいくらでもある。今回は予定利率が引き下げられるが、数年後には上がっているかもしれない。引用した記事にもあるとおり、標準予定利率は国債の利回りを参考に決められるからだ。

■積み立て型の保険はお得なのか?
さて、1に関してはこれで理解していただけたと思うが、2の誤解も解いておきたい。先に説明したとおり、保険会社の予定利率は銀行や個人向け国債よりも高い。だから有利、として子供がいる方は学資保険に入り、掛け捨てはもったいないからと終身保険に入る方も珍しくない。これは果たして正しいのだろうか。

基礎の基礎から説明すると、保険には保険機能と貯蓄機能がある。保険機能は大勢でお金をプールして、死亡したりガンに掛かったりしたごく一部の人がそのお金を受け取る、という仕組みだ(宝くじや競馬などギャンブルと同じ仕組み、と言えばもっと分かりやすいだろう)。

一方、貯蓄機能は自分のためにお金を貯めて自分自身で受け取る仕組みだ。当然の事ながら、積み立て型の保険は自分のためにお金を積み立てる部分が大きいので、保険機能へ回すお金が減り、保障される額は小さくなる。積み立て型の保険と掛け捨て型の保険を比較した場合、もらえる保険金はおよそ7倍も違う(40歳の男性が20年間1万円の保険料を払う場合・生命保険文化センター「保険のキホン」による試算)。

あえて保険機能と貯蓄機能とを分けて説明した理由は、保険機能は保険でしか出来ない事だが、貯蓄機能の部分は保険でなくとも出来る事だからだ。ここでやっと記事のタイトルにつながる。

様々な運用方法がある中で、あえて保険でお金を貯める必要性はあるのか? 結論から言うと現状では全く無いと言って良い。これは次回に説明したい。

続きを書きました! → お金は保険会社に預けるな その2


中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長
ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェのブログ
ツイッターアカウント @valuefp (ブログ更新は不定期なのでツイッターで告知します)

*レッスンのご予約・お問い合わせはHPからお願い致します*
*レッスンの内容はこちら*


●マネーリテラシーの本を書きました。 ●住宅購入の本を書きました。



シェアーズカフェからのお知らせ
シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、個人のお金に関するレッスン・相談・アドバイスを提供しています。SCOL編集長でFPの中嶋が直接指導します。
シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋が士業・企業・専門家向けの執筆指導・ウェブコンサルティングを提供します。


著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、37歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経DUAL、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

メディア掲載・取材協力の詳細はこちら。

※レッスン・セミナー・相談は全て中嶋が直接対応します。ご予約・お問い合わせはシェアーズカフェの公式HPからお願い致します。


このページのトップヘ