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カテゴリー  保険 

前回の記事では、予定利率の引き下げにより保険料が上がる可能性や保険による運用は不利になる可能性を指摘した。また、保険には大勢の加入者で貯めたお金を一部の人が受け取る「保険機能」と、自分のために積み立てる「貯蓄機能」がある事も説明した。


■保険会社にお金を預けるとどうなるか?
タイトルに「お金は保険会社に預けるな」とある通り、保険はあくまで保険としての機能だけを利用すべきで、貯蓄機能の部分を利用する必要は全く無い事も指摘した。元本を確保できるタイプの運用方法は保険以外にも多数あるからだ。

具体的には、預貯金、個人向け国債、確定拠出年金経由での預金、小規模企業共済(自営業者や中小企業経営者向け)などだ。これらと比較して、終身保険、養老保険、学資保険などの積み立て型の保険は、元本の保証性・流動性・金利上昇・所得控除などの要素において、いずれも中途半端だ。

元本の保障性や流動性では預貯金に負ける(早期に解約すると大損をするほか、企業破綻時の保護が弱い)。金利上昇では個人向け国債に負ける(積み立て型保険の多くは固定金利)。所得控除では確定拠出年金・小規模企業共済に負ける(控除対象は保険料の一部だが、この二つは全額が控除対象)。

現在唯一勝っているのが利回りだが、これも将来金利が少し上昇してしまえば「元本の保証性が弱く、引き出しがしにくく、控除も僅かで、利回りも低い、使い勝手の悪い定期預金」といった状況になってしまう。現状であえて保険でお金を貯める理由は全くと言って良いほど無い。

にも関わらず、保険会社は膨大な額の資金を運用している。以前アゴラの記事で指摘された通り、保険会社は大量の国債を保有し、しかも都市銀行と比較して残存期間が長い国債を大量に抱えている。これは金利上昇時には保険会社に多額の評価損が発生する可能性がある事を意味する。

積み立て型の保険は、いずれも10年以上、長いものでは30年とか40年といった超長期で保険会社にお金を預ける事になる。これを保険会社側から見ると、それだけ長期にわたって元本を確保する形で運用しなければいけない事を意味するので、嫌でも大量に国債を大量に保有せざるを得ない。

■金利が上がるとどうなるか?
金利が1%上昇した時に、どれ位債券価格が下がるかは、利率が低いほど、そしてデュレーション(元本が戻ってくるまでの期間・残存期間とも言う)が長いほど下落率が大きくなる。この計算方法の一つに、以下のページで説明されているような修正デュレーションがある。
http://japan.pimco.com/JP/Education/Pages/durationprimer.aspx

計算式は「-デュレーション÷(1+債券の最終利回り)」となる。例えば残存期間10年、最終利回り1%の債券が、1%金利上昇したときの債券価格の下落率は、-10÷(1+0.01)=-9.9となる。
大雑把に言って1%の金利上昇で残存期間が10年ならば10%価格が下落する事になる。

計算式で説明するとややこしく見えるが、現実の取引を想定すればさほど難しくは無い。運用期間10年で利息が1%の国債と2%の国債があった時に、好き好んで低い利回りの国債を買う人間はいない。そこで利息1%の国債を買ってもらうには、利息2%の国債との差である1%の10年分、つまり10%ほど購入時の価格が安ければ同じ条件になる。これは上の計算式で求められる数字とぼと同じだ(いずれも相当大雑把に計算しているので、細かい突っ込みはどうかご容赦願いたい)。

■会計ルールでは・・・?
この計算に則れば、上のリンクで説明されている通り兆単位の国債を抱える保険会社は1%の金利上昇で数千億の損失が発生する・・・かというとそれほど単純ではない。

債券の帳簿価格は保有目的によって異なる。満期保有目的債券(その名の通り満期まで持つ意図がある債券)は、多少価格が下落しても取得価格のまま帳簿に載せ続ける事になる。では「多少」の基準はどうなっているのかというと、まずは30%が目安になる。

これは減損会計と呼ばれ、満期保有目的債券であっても、取得価格の50%以下まで価格が下落すれば、著しい下落とみなされ、原則としてほぼ強制的に時価で評価せざるを得なくなる。一方30~50%までの下落であれば、回復の見込みがあるかどうかが、取得価格のままか時価評価されるかの分かれ目となる。つまり、30%と50%が非常に大きな境目となるわけだ。

減損会計が適用されるかは、簡易的には以下の図のように判断される。
http://www.azsa.or.jp/b_info/ps/kouza/kinyu_kiso_05.html#2

が、30~50%の下落を著しい下落とみなすかどうかは判断が非常に難しい(以下、減損処理の解説箇所を参照)。
http://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/financial-instruments/2010-10-13-03.html

もし危機が現実化すれば国会ですったもんだの議論が繰り広げられる事は間違いないだろう。

こういった問題が表面化するのは、おそらく金利が現状から2~3%上昇したあたりだろうと推測される。金利が10%まで上昇したら、といった極端な状況ではない。もちろん金利が2~3%も上昇すれば、銀行もただで済むとは思えないが、現状でも預金の保護と積み立て型保険の保護の度合いには大きな差がある。危機においてもどちらがより強く保護されるかはいうまでも無いだろう。

住宅購入における予算の決め方 その2では、変動金利でローンを組むリスクを指摘した。保険でも積み立て型の保険を買う事は金利上昇リスクを取る事に他ならない。

これまでの記事でもリスクという観点で家計の説明をしてきたが、今回説明した話でも金利が実際に上がるかどうかは大きな問題ではない。金利が上がると問題が起きるような状況自体がリスクという事だ。

繰り返しになるが、タイトルにあるとおり、保険会社にお金は預けず、保険はあくまで保険として利用するべき、というのがシンプルな結論だ。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長
ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェのブログ
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●マネーリテラシーの本を書きました。 ●住宅購入の本を書きました。




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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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