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新築マンションの販売状況に関して興味深い記事があった。

「新築の9割売れ残り?人気エリアでもマンションが売れないワケ」

住宅ジャーナリストの方が言うには、竣工(完成)までに完売にいたらないマンションは都心部でも9割以上だという。郊外エリアや千葉・埼玉・神奈川にいたっては完成から1年以上経っても販売を続けている物件まであると説明している(具体的な物件名も挙げられているので、詳しくは上記記事を参考)。特に顕著な例として挙げられているのが本来人気エリアである川崎市だ。原因は単純で数百から1000戸を超える大型マンションが相次いで販売され、マンションが大量供給されたせいだという。

これは新築物件の話だが、現在日本全体で20%程度の空室率は、野村総合研究所のレポートによれば2040年には40%近くまで上昇すると試算されている(野村総研「人口減少時代の住宅・土地利用・社会資本管理の問題とその解決に向けて」)。近い将来、日本全体で半分近い家が空室になるというのだから相当に恐ろしい状況だろう。同レポートによれば、ドイツの例を挙げながら空室率が30%を超えるとさまざまな問題が発生すると説明している。例として上下水道などインフラの運営効率が低下し、さらに管理費も増えるという(下水に流れる水量が減ると定期的なクリーニングが必要になるなど)。これらの費用は当然の事ながら全て利用者に跳ね返るだろう。

日本でもコンパクトシティ(土地利用の拡大を制限して効率的な街づくりを目指す考え方)という発想はある程度浸透し始めているが、住んでいる地域によって公的なインフラはもちろん、お店・病院の数や距離など、ざっくりといってしまえば「住まいの利便性」が今後数十年でガラっと変わる可能性がある。近所に大きなスーパーと大きな病院があるから生活には問題が無いと思っていたら、その生活拠点が消えて困った事になる……という例はすでに各地で起きている。今後はそれがさらに深刻化する可能性はある。

特に大型スーパーの撤退などは、それ以前には大型スーパーの進出により商店街が壊滅しているせいで、スーパーが撤退すると何も残らない、という悲惨な状況になる。つまりどこに住まいを確保するかは、今まで以上に慎重に決めないといけないという事だ。終の棲家と思って買った家の周辺が寂れてしまったら泣くに泣けないだろう。当然の事ながら、そうなれば生活がしにくくなるだけではなく家の資産価値は大きく下がり、移住する事すら困難になる可能性もある。

これまでは収入や雇用の安定度を考えて住宅の購入は慎重に判断すべき、という事を繰り返し説明してきたが、同様に環境の変化についてもより慎重に考えるべきだろう。現在では購入にあたって地盤の安定度を確認したり、ハザードマップで危険度を確認したり、といった事をやっている人は少なくないだろうが、今後は住む地域の人口動態なども確認した方が良いかもしれない。上記のような病院や大型スーパーの撤退などを含めた住まいの利便性は、周辺の人口動態に大きく影響されるからだ。

例えば当店の事務所がある埼玉県川口市は元々都心へのアクセスが良いベッドタウンだ。それに加えてタワーマンションがここ10年ほどで大量に作られた事も影響しているのか、15~64歳のいわゆる生産年齢人口の割合が高く、65歳以上の高齢者の割合は約19%(2012年1月時点)と、日本全体の数値である23%(2012年版高齢社会白書・内閣府)より低い。人口も子供が生まれたり他地域から流入してきたりで年々増えている。こういった情報は役所のHPでも公開されているので、家を買う前に確認すべきだ。高齢者の割合が高く、人口が減り続けている地域などは避けた方が良いだろう。

話は変わるが、自分が使っているブログは、どこからアクセスがあったのか、かなり細かくわかる機能がある。その中のいくつかを確認をしてみると、マンションや住宅を買う人が情報交換をする掲示板にいきついた(ブログのURLが張られたようだ)。匿名掲示板で皆が好き放題に語れる場所のようだったが、その中に賃貸だと子供が可哀想とか子供がいじめられるとか、凄い書き込みがあってひっくり返りそうになった。

その掲示板はこれから家を買いたい人が集っているので、そう書いている人もまだ家を持っていないのだろうが、賃貸である事にすさまじいコンプレックスを感じているのだろう。もし家を買えば、今度は賃貸住まいの人を心の中でバカにするに違いない。なんとも理解不能な感覚だが、家を持つ事が目的になってしまうと、このような感覚に陥る。

そういう人は、世の中には収入が高くて貯金もあり、買おうと思えばいつでも買える状況でありながら、買っても大丈夫かどうか慎重に見極めようとしている人が多数居る事は想像も付かないだろう(自分のところへ購入の相談に来るお客様はほぼそういった慎重派だ)。

いずれにせよ、引用した記事で書かれているように、売れ残っているものをあわてて買う必要は全く無い。「住宅ローンは借り時か? ~過去最低を更新した金利の低下について~」でも書いたが、外部要因によって買うか否かの判断が左右されるべきではない事は明白だ。実際、住宅ローン減税は最大でも200~300万円程度しか影響が無い(入居時期や所得税の額による)。300万円値引きしてくれるから、という事は3000万円の買い物を急ぐ理由にはならない(加えてこのような損得は需要と供給に吸収されて、優遇制度の前後で大差が無くなる事は「住宅ローンは借り時か?」と「高額商品は消費税増税後に買え~価格は市場が決める~」でも説明した)。

結局、家が余っているのなら自分が「買えるタイミング」と「買いたいタイミング」が重なった時に買えば良いというだけの話だ(同時に上で説明したような、優遇制度とは全く別の外部要因に関しては留意されたい)。

重要な事は自身の状況をシビアに見極める事、つまりどのような基準で妥当な購入予算や返済が可能なローンの範囲を判断すれば良いのか、という問題だけだ。

「自身の状況をシビアに見極める方法」に関しては過去の記事である程度説明しているので、参考にされたい。

住宅の購入を検討されている方には以下の記事が参考になる。
■小学生でも分かる住宅ローンの計算方法 
■持ち家の予算はチキンレースか?
■住宅購入における予算の決め方 その1 その2
■繰り上げ返済は本当にお得なのか? 前編 後編
■「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1  その2

買うかどうか迷っている方には、持ち家と賃貸の比較に関する以下4つの一連の記事が参考になる。
■持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
■そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
■「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り)
■リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

以前の記事でも書いたとおり、結局は買うか買わないか、それが一番の問題だ。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、37歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経DUAL、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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