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前回の記事では、震災からちょうど2年経った日に池上彰さんがハイパーインフレの心配をしている一方で、同じ日に総理がハイパーインフレの心配は不要と言った、と書いた。総理はアベノミクスの光の側面しかみていないけど池上さんは影の部分も見ている(ちなみにハイパーインフレとは物価が急激に上昇してしまう状態の事)。

●「可能性」を否定する人は危なっかしい。
「ハイパーインフレが起きる可能性は高く無い、でも絶対に起きないなんて考えは危ないから気をつけておこう」と書いたのに、「ハイパーインフレが起きる起きると脅しみたいに書くのはおかしい」とか「ハイパーインフレなんて絶対に起きない」というコメントがいくつかあった。可能性が「低い」と「ゼロ」の間には大きな差があるのだけど、世の中にはどっちも同じだと粗雑に考える人が結構多いみたいだ。ブラックスワンにも異常値を切り捨てて考える人は非常に多いと書いてあった。そういう考えは危ないよと丁寧に書いたつもりだったのだけど、全然伝わってない人もいたみたいで残念だ(まあ総理がそう言ってるのだから仕方がないのだけど)。

サブプライムローン問題やギリシャ危機は経済界の9.11みたいなものだった。後になってから危険な兆候はこんなに沢山あったと言われた(もちろんそういう指摘も大切だけど)。誰も予想できていなかったのに、今ではまるで起こるべくして起こったみたいに皆が思い込んでいる。アメリカはずっと住宅バブルだと言われていたけど、破綻した時に世界中に火の粉が降り注ぐとは誰も思って居なかった。ITバブルという史上空前のバブルが崩壊したのだから、それを克服するにはもっと大きなバブルが必要だった。昔より景気のサイクルは短く、そして大きくブレるようになった。これは良いとか悪いとかではなくただの事実だ。

日本の財政破綻についても散々危ないと言われているけど、爆発するかどうか、爆発するならいつどんな形で爆発するか、誰にも分からない。こんな状態で身を守るには爆発するかどうかなんて予想しても意味が無い。爆発しても、そして「爆発しなくても」大丈夫なようにしておくしか対処の方法は無い。昨日まで問題が起きなかった事は将来も問題が起きない事の理由にはならない(←この文章を読んで「財政破綻なんてしない!」と反論したくなった人は30回位読み返した方が良い)。

●100万分の1の確率で爆弾の入っている宝箱はあけても大丈夫か?
宝箱が100万個あって、ひとつは爆弾が、残りは全部100万円が入っているとする。この状況で宝箱を開けようと思うだろうか? 自分なら多分あけると思う。では10万個中1個が爆弾なら? これでもまだチャレンジするかもしれない。では母数が1万個なら? 1000個なら? ・・・もうこのあたりならば100万円と命を引き換えにする気になれない。ちなみに1万分の1の確率で100万円が当たるのはナンバーズ4くらいの確率とリターンだ。ナンバーズ4は1枚200円だが、「逆ナンバーズ4」は自分の命がチップだ(逆ナンバーズ4に参加したいという人とは多分友達になれないと思う)。

……と、こういう机上の思考実験はいくらでも出来るが、多分想定が甘い。爆弾の入っている確率は100万分の1だと思っていたら実は1万分の1で、調子に乗っていくつも宝箱をあけていたら爆発した、という事は起こりうる。世の中の多くの出来事の確率は事前に分からない。分かると思った時点でリスクは飛躍的に高まる。確率が低いのならリスクは無視をして良いと注意を払わなくなるからだ(だからハイパーインフレなんて起きないと思ってる人が国のトップに居るのは怖い事だ)。爆弾の入っている確率が分からないなら宝箱は開けないほうがいい。100万円欲しさに爆弾トラップに引っかかって死んでしまったら泣くに泣けない。宝箱を2個・3個とあけて大儲けしている人が居ても、命懸けだから儲かっているんだと思えば羨ましいとは思わないはずだ。

現実の経済に爆弾トラップは無いけど、「ぐるぐる輪転機」とか「日銀引き受け」という名前の爆弾はある。こういう爆弾はどれぐらい危険なのか「オッズ」が分からない以上、さっき説明した爆弾トラップと同じで触らない方が良い。そういう約束で大昔からやってきたはずが、100万分の1なら大丈夫と一部の人が急に言い出した。宝箱をあけて儲かるのは(選挙で勝てるのは)あけた人だけなのに、爆発したら皆が死ぬ。まるで「表が出たら私の勝ち、裏が出たらあなたの負け」と言われてるみたいだ。一番恐ろしいのはこの賭けは強制参加だという事だ。

●変動金利はお得なのか?ハイリスクなのか?
自分の専門分野で言うと、例えば住宅ローンの変動金利は金利上昇のリスクを負って利払いを抑えている(現在、変動金利は固定金利より1%以上低い)。10年前に変動金利で借りた人はかなり得をしている。そんな人にはオメデトウ!と拍手を送りたい。株で大儲けした人への賞賛と同じ意味でだ。リスクを取った見返りにリターンを得た、というわけだ。

ただ、この成功体験を元に変動金利最強論を唱えるのは止めて欲しい。株のデイトレードやFXで運良く大儲けした人が、ウン億儲けた私の方法、みたいな恥ずかしいタイトルの本を書くぐらいみっともないし間違っている。これが宝くじならば偶然だと指摘すれば分かるのだけど、投資とか住宅ローンとなると適当な事を言っても「論より証拠」という事で信じてしまう人は結構居る(これは偶然と必然をごちゃ混ぜにする、あまりよくないことわざだ)。

もっと困るのは「この売り場では1等が沢山出ている」とか宝くじも偶然ではないと思っている人が結構居る事だ。ここまで行ってしまうともう手の付けようが無い。結果に偏りがあればその後に出やすい数字は推測出来る・・・とか考えてる人は統計の入門書をちゃんと読み直してから同じ事を言えるか試して欲しい。

●不安定だから安定する。
世の中には安定しない事、つまり不安定な方が普通、というものは結構ある(というかそっちの方が多い)。景気とか企業の売上とかIT技術とか。だから揺れ動く事が異常で、安定してる事が普通だと思い込んでいる人は目をつぶったまま全力で走ってるようなものだ。日々の小さい揺れを無理に抑えると、いつか大爆発する。鉄は堅ければ堅いほどポキリと折れる。今安定しているのは将来にツケをまわした結果ではないか、と慎重に考えた方が良い。ちょっとくらい不安定な方が長い目で見ると安定してる事は、まだ一部の人しか気づいていない。ブラックスワンの著者のタレブは世界で一番最初にそれに気づいた人だ。

30年間同じ会社で働き続けて、あと10年もすれば定年退職だと思っていた人が突然リストラされそうになったり会社が潰れそうになったら、中には不安のあまりノイローゼになってしまう人もいるかもしれない。一方、2・3年に1回転職してるような人はそんな状況でもなんとも思わないに違いない。どっちが本当に安定しているかは死ぬまで分からない。

企業の売上とか収益が激しくブレているのに雇用も給料も安定させろというのは、揺れる船の上でコップに入った水をこぼすなというくらい無茶な注文だ。足元よりコップに注意を集中させたら、いつかその人は海にドボンと落ちる。その時はコップの水がどうこうなんていってられなくなるはずだ(なぜならコップの持ち主=雇い主がもう海の藻屑と消えているから)。だからコップの持ち主には余り無茶な事は言わず、たまに水を少しこぼすくらいなら許すから、コップを落としたり海に落っこちたり、そういう事態だけは避けてくれ、という位に要望をとどめておいた方が良い。そうでないと誰も船上でコップを持つなんて危険な事はやらなくなってしまう。

経済関連の記事はこちらも参考にして欲しい。
●池上彰さんが心配して、総理大臣が否定するハイパーインフレについて。
●国が1兆円もかけて電機メーカーの設備を買い取るらしい ~エコポイントの斜め上を行く、呆れた仕組みについて~
●生活保護費は増やしても良い。
●薬のネット販売が再禁止されるらしい。
●災害より老後を怖がる日本人 ~20代と60代の利害は一致する~
●年金がいつから・いくらもらえるのか、ハッキリさせた政党は政権を取れる。
●2012年、バブル真っ只中の日本


これだけ将来が不安とか先行きが不透明といわれるようになったのに、まだ目の前の損得の話ばかりしている人が居る。ファイナンシャルプランナーなんてその代表選手だ。そういう人はよっぽどお客さんが来なくて脳内顧客を相手にバーチャルなシミュレーションをしているんだろう。緻密に損得の話をする人が居たら、それがFPでもFPじゃなくても適当に聞き流しておくと良い。なぜなら人生に大きな影響を与えるのは損得ではなくリスクなのだから。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、37歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経DUAL、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

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現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

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