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「ゾゾタウンとかどうですか?」

前回の「女子大生でも分かる、3年間の育児休暇が最悪な結果をもたらす理由」で女性の雇用環境に憤慨していた女子大生から、就職先としてこんな事も聞かれた。


●時短勤務は3年で十分か?
ゾゾタウンはスタートトゥデイが運営する洋服のネット通販ショップだ。アパレル業界に興味があるのかと思いきや、6時間の短時間勤務に興味を持ったという。これは子供の有無などは関係なく社員に短時間で集中して働いてもらうと言うユニークな制度で、興味深い取り組みとして自分も過去に「俺が苦しいからお前も苦しめ」という奇妙な嫉妬 ~スタートトゥデイの英断~」で取り上げた。

新興企業で女性役員が居て、6時間勤務を取り入れるなど、働き方に関しては他の硬直した大企業よりは柔軟性があるかもしれない。企業は大学生がいかに働く環境を重視しているかよく理解した方が良い。軍服に体を合わせろ、といった昔ながらの考え方をしている限り、学生からそっぽを向かれるだけだ。

前回言及した育児休業について、3年も休んだら浦島太郎状態になるから良くないといった指摘があった。これは仕事の内容は時間がたってもさほど変わらない企業と、3年も経てば業務内容がガラっと変わっているIT系のような企業では事情が異なる。したがって、3年という期間が良いか悪いかは一概にはいえない。問題は強制・義務付けされた場合だ。

社員にとって重要な事は長期間休める事よりも辞めずに済む事だろう。そうであれば前回書いたような育児休業の確実な取得と時短勤務の継続性が特に重要だ。現在、時短勤務(短時間勤務制度)は子供が3歳になるまでしか取得できず、それ以上は企業の裁量による。これは非常に中途半端な区切り方だ。3歳で時短勤務が終わったら、それ以降サポートを受けられない夫婦は働き続ける事が出来なくなる可能性がある。せめて小学校入学までを義務付けるべきだ。もちろん、育児休業と同様に確実に取得出来る事も重要だ。

●男性の働き方を変えるには?
前回言及しなかった男性の働き方については、男性の育児休業取得や時短勤務も促進した方が良い事は間違いない。しかし、現状で1ケタの取得率を急激に引き上げるにはよっぽどのインセンティブを与えなければ実現は出来ないだろう。長時間労働が当たり前の状況と育児休業の取得率引き上げは、理想と現実の落差があまりにかけ離れている。

企業に対して取得拒否を禁止する事は出来ても、男性従業員に対して取得を強制させる事は出来ない。育児休業を男性社員に取得させたら会社に1億円払うとか、無茶なルールを作ればいくらでも可能だろうが、現実的なルールやインセンティブを考えると相当に難しい。

男性の育児休業取得率はこつこつと引き上げていくとして(急激に引き上げる方法があれば誰か教えて欲しい)、まずは経営者にとって「男性の使い勝手」を悪くする所からスタートするのが現実的だ。前回も書いたように、女性の雇用が敬遠される理由は男性が使いやすすぎるからだ。時短勤務の延長も結局は女性の使いにくさになってしまうので、それに合わせて男性も使いにくくする必要がある。

具体的には「ブラック企業は「公表」ではなく「取締り」をするべきだ。」で言及したように、サービス残業の厳しい取り締まりや残業時に適用される割り増し賃金の率を引き上げるなど、一人の社員を酷使できないようにすれば良い。男女どちらも使いにくければ、制限のあるなかでいかに効率よく働いてもらうか、という事を考えざるを得なくなる。

これらのムチとは別にアメも無ければ経営者は人を雇えなくなる。時短勤務や育児休業には税金を今までに以上に投入しても良い。補助金か減税か、企業にとって何が最適か一概に言えないが、子育て支援が最も有効なお金の使い道であることは間違いない。

●住宅購入の相談は奥様の人生相談。
前回も書いたが、普段住宅購入の相談に乗っていると、必ずと言っていいほど女性の雇用の問題にぶつかる。夫婦の世帯年収が高く、毎年貯金も沢山出来ているので今は問題が無い。ただ、今後仕事が継続できなければ住宅購入の予算は下がり、貯金どころか赤字になってしまうというケースは少なくない。

例えば旦那様が500万円、奥様が300万円の収入で毎年200~300万円の貯金が出来ていた夫婦が居たとする。家を買うにはなんら問題の無い収入だが、奥様が正社員からパートになり年収が100万円まで下がるとどうなるか。世帯年収は800万円から600万円となり、子育て費用も考えれば貯金はゼロになる。こうなると家の予算は大幅に下がるか、買う事すらためらう状況だ。

正社員ならば300万円、派遣・契約社員なら200万円、パート勤務ならば100万円と、将来の収入がどうなるか分からない状況で住宅の予算を考える状況は決して少なくない(結果として住宅購入の相談は人生相談になる)。雇用が不安定な事により住宅購入の予算を抑える、子供の出産をためらう、といった経済的な損失は非常に大きい。余計な景気対策を辞めて子育て支援に集中すべき、というのはこういったケースにいつもの相談風景で繰り返し遭遇しているからだ。

子供向けの予算も使い方を工夫したほうが良い。現在児童手当は中学校を卒業するまでおよそ200万円が支給される。3歳までは毎月1.5万円、中学校卒業までは毎月1万円と長期間に渡って小額がダラダラと支払われる仕組みだが、これを一番手のかかる5歳まで毎月3万円以上支払うなど、同じ額でも形を変えれば貰う側の感覚も大きく変わる。集中して児童手当を支給すれば認可外保育園でこんなにお金がかかるなら仕事をやめて自分で育てた方が・・・と目先の支払い額だけを見て長期的なキャリアを放棄してしまう事も防げる。

●公務員の働き方はヒントになるか?
自分はFPとして様々な職業の方と接するが、学校の先生や役所勤めの方など、公務員のお客様も来店される。公務員の待遇で良いと思うのは育児休業が確実に取れる事だ。そのような状況について、周りから文句を言われないのかと聞くと「上司も同僚も女性は育児休業を取得するもの、という前提でみんなが仕事をしている」という。もちろん、これは営利企業で無いから出来るとか、非正規雇用者によって穴埋めされている部分などもあるとは思うが、意識が違う事の影響は非常に大きいだろう。

毎日何時間も残業するのが当たり前の職場環境では、育児休業の取得や短時間勤務で働く社員を邪魔だと思う方が普通だ。考えるべきだはそのような働き方が本当に利益を生み出しているのか?という事と、仮に利益が出ていたとしてもそれは公害を撒き散らしながら操業する工場と同じで、周りの犠牲の上に成り立っている以上そもそも許されないという事だ。

●女子大生へのアドバイス。
冒頭でゾゾタウンが良いと言った学生には「多分働きやすさだけを考えれば公務員が鉄板だと思うけど、仮に育児休業を取得するとしても、それは10年位先かもしれない。10年もあれば世の中は相当大きく変わる。だから働きやすさだけを理由に仕事は決めないほうが良い」とアドバイスした。

例えば時短勤務の義務化を含む両立支援が法律で強化されたのは平成22年6月、従業員数100人以下の企業まで義務化されたのはつい最近の平成24年7月だ。10年もすれば法律はまた変わるだろうし、労働人口の減少による人手不足で、時短勤務でもなんでも良いからとにかく辞めずに働いてくれと、企業の方から頭を下げてくるような状況になる可能性すらある。

働き方や経済に関する記事は以下も参考にされたい。
●池上彰さんが心配して、総理大臣が否定するハイパーインフレについて。
●池上彰さんも心配するハイパーインフレと、リスクに関する考察。
●ブラック企業は「公表」ではなく「取締り」をするべきだ。
●サービス残業は日本の文化だ ~ブラック企業が生まれる下地~
●ブラック企業を消す方法。 ~解雇規制・雇用流動化について~
●ライフネット生命の新卒採用に挑戦してみた。 
●日本の不景気は女性差別が原因だ


なんともいい加減なアドバイスだが、保守的でイシアタマの高齢議員が牛耳っているようなイメージの自民党ですら、党三役のうち2人が女性だ。上場企業で役員の2/3が女性の企業など聞いたことも無い。それどころか女性役員が1人も居ない企業の方が普通だ。最も変わりそうに無い所ですら変わるのだから、多少の期待は持っても良いのではないかと思う。


中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
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●マネーリテラシーの本を書きました。 ●住宅購入の本を書きました。



著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。1979年生まれ(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。ヤフートップに度々掲載されるなど、ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経DUAL、ブロゴス、ハフィントンポスト等で執筆する他、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなど多数の媒体で執筆・出演・取材協力など情報発信を行う(メディア掲載・取材協力の詳細はこちら。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスンを提供。生命保険の販売を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。

現在はマネー・ビジネス分野の専門家が多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。

著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」、「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人(大和書房)」

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