最初はこのハナシから。

AIJ投資顧問という会社が企業から預かった年金について、大損をしていたのに隠していた、もしかしたらサギ行為もあったのでは、という事で大騒ぎになっています。
この年金はいわゆる「3階部分」と言われる企業年金です。

年金の仕組みは次のようになっています。
自営業・フリーター・専業主婦の加入する1階部分(国民年金とか基礎年金という)、公務員や会社員が加入する2階部分(共済年金と厚生年金)、そして福利厚生の一環として企業によっては準備している3階部分(企業年金・種類はいくつかある)です。

年金という意味では公的、企業が独自にやっているという意味では私的、という事で微妙な位置づけの年金が企業年金なのですが、今回の事件はAIJが問題というだけでなく、企業年金全体の問題、ひいては年金全体の問題とも言えます。

そこら辺を理解するに当たっては、下記の記事が今のところ一番です。

AIJ投資顧問事件、企業と個人への教訓|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/16355

この記事を読む前提として知っておいて欲しいのは、ハイリスク・ハイリターンの意味です。
ハイリスクハイリターンを思い切り分かりやすく日本語にするなら「不安定」です。
大儲けする場合もあれば大損する場合もある、と言う事です。
今回AIJから運用方法として説明されていたデリバティブは、ハイリスク・ハイリターンの運用商品です。
つまり、こういった商品で「大儲け」はあっても、「安定して長期間ずっと大儲け」はありえない、という事です。

結果を安定をさせようとすると、リターンも減ってしまいますので、ローリスクローリターンになります。つまり、安定と大儲けは両立できない、という事になります。
これは投資をちょっとでも知っている人ならば常識ですから、サギを見抜けなかった企業側の責任も軽くは無いと山崎さんは指摘しています。

この話は年金の性質にも関わります。山崎さんはツイッターでも「そもそも年金の運用にデリバティブなんて不要」といった事も書かれています。
企業は一定の利回りで運用する事を社員に約束していますので、それを達成しないといけません。達成できないときは企業が費用を負担する、つまり損をします。いうまでもなく、高い利回りを約束すれば損をする可能性は高くなります。

現在のように株価が下がる状況では企業は年金の損失でつぶれかねないほどの大損をしている会社も珍しくありません。
これを解消するには、1.利回りを下げる、2.運用のリスクを社員に転化する(確定拠出年金への移行)、3.企業年金をやめる、のいずれかしかありません。
1.3は簡単には出来ないので、2が良いのでは、というのが山崎さんの提案です。

なお、1階部分と2階部分でもAIJと同じような状況が発生しています。結果をごまかす事は出来ませんが、将来の支払いのための原資は全くと言っていいほど足りていません。細かい説明は省きますが、不足額は800兆円とも言われています。つまり、年金の不足分も加えると、日本が抱えている借金は2倍になると言われている状況です。
上場企業ならばこれを年金債務という形で負債(実質的な借金と同じ)として決算に反映させていますが、国はこれを反映させた決算を行っていません。

日本という国は年金でAIJと比較してもケタ違いのごまかしをしている、というあたりに年金の闇の深さを感じないではいられません。

シェアーズカフェ 店長ナカジマ

*レッスンのご予約・お問い合わせはHPからお願い致します*

追記
山崎さんの記事でもうひとつ、良いのがあったので追記。
張り切る金融庁をよそに、やる気のない厚労省の怠慢。AIJ事件が暴いた「企業年金の危ない実情」 http://bit.ly/xXn3nP






著者プロフィール


中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー(FP)、シェアーズカフェ店長、シェアーズカフェ・オンライン編集長。「保険を売らないFP」。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。開業から10年間、一貫して対面相談とウェブで情報発信を行う。2014年、シェアーズカフェ株式会社に法人化。現在は日暮里駅近くに事務所を構える。

情報発信は東洋経済オンライン、ITmediaビジネスオンライン、プレジデントオンライン、JBプレス、日経DUAL等の経済誌で執筆する他、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等で執筆・出演・取材協力多数(めざましテレビ、報道2001、スッキリ他、メディア掲載・取材協力の詳細を参照)

著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」、「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人(大和書房)」。住宅本はAmazon・楽天ブックスの住宅ローンランキングで最高1位、Amazon総合ランキングでは最高141位。

対面ではファミリー世帯向けにプライベートレッスン(相談)を提供。生命保険の販売を一切行わず、金融機関・不動産会社のセミナー・広告等の業務も全て断り、相談料だけを受け取るFP本来のスタイルで営業中。

プライベートレッスンでは独自のカリキュラムを顧客ごとに最適化、相談・アドバイスと組み合わせて高度なコンサルティングを提供。特に住宅購入の資金計画、ライフプラン全体のアドバイスを得意とする。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。

2013年にはマネー・ビジネス分野の士業や専門家が参加する自社メディア、シェアーズカフェ・オンラインを設立、編集長に。2014年よりYahoo!ニュースに配信中。他にも編集プロダクション、専門家向けの執筆指導(オンラインサロン)、社長専属の編集者などの業務も提供。FP事業とメディア事業を車の両輪としてシナジーを経営者として日々追求。

お金よりも料理が好きな79年生まれ。

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