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昨日、日経新聞でサイバーエージェント社長の藤田晋氏が書いたコラムが話題になっている。退職してライバル企業に転職した社員を厳しく叱りつけるような内容だ。

私が退職希望者に「激怒」した理由 (藤田晋氏の経営者ブログ):日本経済新聞 2014/10/1
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77749270Q4A930C1000000/

コラムでは、かつて何億円も費用をかけたプロジェクトを失敗させた従業員がいた、彼に再チャレンジで新規事業立ち上げを任せた、それにもかかわらずライバル企業に転職してしまった、これは恩を仇で返す行為で企業経営上マイナスだ、だから示しをつけるためにあえて「意図的に」怒った、といった事が書かれている。

立つ鳥跡を濁さずといった主旨だと見れば常識的な内容ではあるが、記事への反応は散々だ。こんな事をわざわざ社外に向かって言うなんておかしい、そんなことをやるから社員が辞めるんだなど、ほとんど炎上の様相を呈している。

■成金社長か豪腕社長か?
この記事を読んでそういう感想を持たない人は居ないだろう。自分も同じように「なんてバカな事を書くんだろう」と思ったが、周りの反応が全く同じだったため心配になってしまった。「多数派」に属しているということはそれだけで危ない。しかもその反対側には藤田氏がたった一人しかいない。どちらが正しいのかは明らかだ。

藤田氏を「頻繁にメディアで見かけるチャラチャラしたIT系の成金社長」という色眼鏡で見ると、うっかり変な事を書いてしまった駄目な人にしか見えない。しかし、藤田氏を「わずか十数年で創業した会社を社員3000人、売上1000億を超える企業に育て上げた豪腕社長」と考えれば、全く別の風景が見えてくる。

まずこの記事は藤田氏が自ら書いているか、インタビューの書き起こしか、いずれかのスタイルだろう。公開にあたって中身も本人が確認していることは間違いない。であれば突撃取材を受けて準備する間もなく変なことを言ってしまったとか、突発的な事件・事故でトラブルに巻き込まれたとか、そういうわけでは決してない。記事の内容は意図的に、その後の影響まで考慮して情報発信されたものと考えるべきだ(うっかり者が会社を上場させられると思う方がよっぽど不自然だ)。

当然、批判や炎上も承知の上だろう。つまりそれ以上のメリットがあると考えてのことだ。

■メディア通じて社員にメッセージを届ける脅威の経営手法。
ではこの記事から得られるメリットとはなんだろうか。それは社員がライバル企業へ転職してしまう事に歯止めをかける抑止効果だ。記事の中では社員が引きぬかれた事について組織を守るためにあえて怒った、と書いてある。

そんなことは社員に向けて言えばいい、わざわざネット上で公表したら意味が無いと思われるかもしれないが、全く逆だ。考えてもみて欲しい。勤務先の社長が辞めた同僚を日経新聞で「意図的に」罵倒しているわけだ。日常生活を送りたいごく普通の社員からすれば恐ろしい事態であり、恐怖の極みだ。自分が同じことをやったら同じように日経新聞で罵倒されるかもしれないと考えれば、強力な抑止効果になるだろう。

■メディア経由のアメとムチ。
記事では退職した社員をただ罵倒しているわけではなく、失敗した社員にはチャンスを与えると書いてある。つまり、アメとムチだ。真面目に働けばしっかり報いる、ライバル企業に転職するなら絶対に許さない、という方針をはっきりと打ち出している。引きぬかれたら激怒する方針に決めている、とも明確に書かれている。これは日経新聞で読者に向けて一般的なビジネスの話をするふりをして、社員に向けて話しかけているわけだ。

会社の朝礼やテレビ会議、社員への一斉メールで「立つ鳥跡を濁さず」、といった話をした所で右から左にぬけていくだろう。しかし、これがメディアを通じて社員に伝われば効果は全く違う。

普通の社長ならば、日経新聞で連載が出来るとなれば少しでも読者に良い印象を与えて売上アップにつなげようと考えるに違いない。しかし売上が1000億円超の企業になればちょっと周囲に良い印象を与えた所でプラスの効果は誤差の範囲だ。テレビで取り上げられて行列のできる飲食店とは全くレベルが違う。

逆に言えばマイナスの効果もほとんど無い。アメーバブログで芸能人のブログを読む人や、ソーシャルゲームをやる人は日経新聞を読む層と全くかぶっていないからだ。

藤田社長の手法はメディアを通じて会社の内側、つまり社員に経営方針を伝えており、外部への情報発信を目的とする企業のメディア戦略とは正反対だ。

■IT系企業にとって人員確保は経営課題。
現在、IT系のエンジニアは人手不足で給料が大幅に上がっている。同社の社員は半分以上がエンジニアだというが、社員の引き止めや人員確保は経営に直結する課題に違いない。優秀な社員にやめられて、しかもライバル企業に転職となれば二重の損失だ。

給料の高いエンジニアが他の職業につくケースはほとんど無いだろう。そして自社で培った経験を活かすのなら、転職先は高い確率でライバル企業だ。コラムにある通り、失敗の経験を他社で活かされたならたまったものではない。億単位の援助を優秀な社員付きで競合にプレゼントするような状況を放っておくのなら、経営者として失格だ。

罵倒された社員にとってはネタにされて良い迷惑だろうが、コラムにもある通り「引き抜きに寛容な企業は良い会社に見える、しかし結局は引き抜きに対してカンカンに怒る会社が生き残っている、優秀な社員の引き抜きには毅然とした態度が必要」という指摘は多分正しい。

引き抜きが良い悪いというより泥臭い会社が最後は勝つというだけの話だ。社員には転職の自由が確保されるべきだが、経営者が法律・契約の範囲内でライバルの引き抜きを防ぐのは当然だ。

■ブログでも社員に檄を飛ばす藤田氏。
藤田氏個人のブログでも、サービスのスタートを遅らせた社員をあえて怒った、というほとんど同じエピソードが過去にある。話の中身はウチのようなIT系企業はサービスのスタートを遅らせるほど失敗する確率があがる、というさほど変わった話ではない。しかしブログによる情報発信で社員を刺激する、というスタイルは今回の記事と全く同じだ。

記事による炎上は発生したが、この程度の批判はかつて自身の離婚報告でアメーバブログをダウンさせた藤田氏にとっては蚊に刺された程度にもならないのだろう。一代で上場企業を築く社長の感覚はこんなにも凡人と違うものか、と驚愕とするばかりだ。

嫌われ役を買ってでも会社を成長させる姿勢は正しすぎるとしか言いようが無い。一方でメディアリテラシーとして、周囲が一斉に同じ方向へと傾いた時に、果たしてこの立場は正しいのか?とよく考えたほうが良い。しかもその反対側に上場企業の社長がいるのなら尚更だ。今年は記者会見の「当たり年」で、議論が一方に傾むいてお祭り騒ぎになる事が何度もあった。これをおかしいと思わない人はちょっと自分の感覚を疑った方が良い。

日常生活を送るには多数派のほうが多分楽だ。ただし、ビジネス目線で考えるのであれば少数派にいながら多数派を理解する、という立ち位置に身を置くべきだ。多数派はいつもお金を払う側であり、少数派は常にお金を受け取る側なのだから。

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→続きを書きました。
サイバーエージェントの社長をディスる人がヤバい件について。


中嶋よしふみ
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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