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今年になってからめっきり減ったものがある。ブラック企業に関する報道だ。

2013年、ネット上の経済ニュースはブラック企業の話題でうめつくされた。ブラック企業というワードは流行語大賞にもノミネートされ、ブームだったと言っても過言ではないだろう。しかし最近ではブラック企業ネタのニュースを見かける事は随分減った。

■ブラック企業ブームとその終焉。
ブラック企業の業界ではラスボスのように扱われているワタミの社長が「ブラック(企業)だなんて全然思っていない」と東洋経済オンラインのインタビューで答えたり、エステ大手のたかの友梨で残業代未払い等の問題で経営者が社員に圧力をかけた音声が流出するなど、その時々で話題になるネタはいくつも出てはいたが、以前ほどの騒ぎになることは無かった。

※「ブラック企業」は定義の定まっていない曖昧なワードだが、この記事では違法行為を行う企業、あるいはブラック企業と多くの人が考えている企業とする。

ウェブのニュースがブラック企業ネタだらけになった理由ははっきりしている、タイトルに「ブラック企業」と入れるだけで半ば炎上気味に沢山読まれたからだ。多くの人はブラック企業の「悪の所業」に憤慨し、ツイッター・フェイスブックで拡散し、多数のアクセスを集めた。

しかし、ある時期から風向きが変わった。昨年の年末から年明けにかけてだろうか。記事の反響に「何でもかんでも叩けば良いってもんじゃないだろう」といったコメントが混ざり始めた。もちろん、当初からそういったコメントは散見されていたが、とても無視出来ないほどに増えていた。

自分が運営するウェブメディアの書き手にも「今更ブラック企業を単純に叩くような記事はつまらないし意味が無いので工夫して書くように」とアドバイスをした(そういった空気を感じ取った事はもちろんだが、そもそもブラック企業が悪いという話は万引きが悪いという当たり前な話と同じでわざわざ書くような事ではないからだ)。

■転機となったワタミ・ゼンショーの転落。
その直後に出てきたニュースがワタミの大量閉店だった。日経新聞の報道では、昨年設置した有識者委員会の指摘により居酒屋の業態の店舗を全体の1割、60店舗も閉鎖して慢性的な人手不足を解消するためとある。これが今年3月27日の報道だ。ブラック企業叩きへの反響の変化はこのような動きを先取りしていたようにも見える(のちに閉鎖店舗は2014年度内に102店になると公表)。

ブラック企業なんて辞めれば良い、という話は企業の責任を個人に転嫁する自己責任論として一部で大変嫌われているようだが、人手不足によってそれが現実化したという事だろう。

そして2014年3月期の決算でワタミは上場後初めての赤字転落を発表する。ワタミと並んでブラック企業の代表選手のように扱われる、牛丼チェーン・すき家を展開するゼンショーも、同様に人手不足からの店舗閉鎖、営業時間の短縮、そして2015年3月期の赤字転落の見通しを発表した。

これらの出来事で、ブラック企業叩きが大好きな人たちは大いに溜飲を下げたと思われるが、自分はこれが良い事ばかりではないと考えている。

■ブラック企業は興味の対象から外れた。
大抵の人は問題を起こして赤字に転落した企業に興味を持ち続けることは無い。自業自得、と結論付けて興味を失うだけだ。報道が減っている事からもそれは明らかだろう。今までブラック企業に関心がもたれていた理由はデフレ時代に大儲けしていた企業だったから、というのも理由の一つだろう。

ブラック企業に多くの人が興味を失ったタイミングが景気回復や株価上昇のタイミングと重なっていた事からもそのように推測される。オレはこんな低い給料なのにあの会社は大儲けしている、という形で非難されていた要素もあったのだから、興味が失われるのも当然と言えば当然だ。一言で表せば「ザマアミロ」という事になる。

しかし、ワタミやゼンショーは日本全国の労働者数を考えればごく一部にすぎず、一部の企業で問題が表面化してそれが今後改善された所で、多くの人にとっては関係の無い話だ。ブラック企業の生まれる下地が決して消えていないことを考えれば、人手不足が解消された時には再び同じ問題は大量に発生する。そして現在も解決したと言えるような状況では全くない。

ブラック企業と呼ばれる企業ではユニークで特徴的な経営者が居ることが多い。結果的に経営者個人が極悪非道な人物だからブラック企業になったんだ、と個人の問題として矮小化された議論になっていた。これも大手企業ばかりが叩かれた点と合わせて問題解決につながる議論にならなかった理由だろう。

ブラック企業の問題はより根本的な話から考えないと答えは出ない。それは社員の給料はどこから出ているのか?という問いだ。

■雇用が不安定な理由。
社員の給料はどこから出ているのか。

シンプルに答えるなら売上の一部から、ということになる。では売上はなぜ発生するのか。利益が出なければ会社は潰れてしまうので「利益をともなう売上」といった方がより正確だろう。

売上・利益の源泉は「付加価値」と「リスク」だ。

付加価値は他社より安い、性能が良い、軽い、早い、便利な場所にある、と業種により求められるものは様々だ。

ではリスクとはどういう意味か。確実に儲かるビジネス、絶対に儲かる商品は無い。売れるかどうか分からない……そのような状況では誰もが同じ行動は取らない。

リスクを取って利益を追求する人もいれば、損失を嫌ってリスクを避ける人もいる。結果的にリスクを取る人は少ないため、リスクを取った恩恵として得られる利益は大きくなる。資産運用ではこれを「リスクプレミアム」という。

多くの人は独立・起業にはリスクがあると考えているだろう。しかし社員やアルバイトとして働く人の給料も、元をたどればリスクから生まれている。

「安定した給料」を「不安定な売上・利益」から生み出さなければいけない。

雇用にはそもそもこんな矛盾が内在している。これが雇用が不安定な根本的な理由であり、給料が少ない理由であり、そしてブラック企業が生まれる理由でもある。

では、雇用の不安定さ、つまり雇用のリスクはだれが引き受けているのか? そして誰が引き受けるべきなのか? なぜ売上・利益のリスクがブラック企業につながるのか?

これは次回に書いてみたい。

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中嶋よしふみ
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

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現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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