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先日、友人と高田馬場で食事をした。二軒目を探して駅近くを歩いているとケンタッキーフライドチキンが目に入った。そういえばケンタッキーがちょい飲みを始めたと話題になっていたっけ、と久しぶりにケンタッキーのチキンを食べたくなったこともあり、お店に入った。

今年4月にリニューアルオープンした高田馬場のケンタッキーは「KFC+CAFE&BAR 高田馬場店」として、昼はカフェで夜はバーというスタイル、そして従来のケンタッキーには無い新メニューにアルコールも提供するなど、新しい業態として今後の全国展開も視野に入れているようだ。ただ、自分が体験した限り全国展開どころかこのお店自体が大丈夫なのか?と心配になるレベルだった。

■入店からいきなりのつまずき。
入り口に入ると、まずは座席に案内された。席を確保してからレジで注文というスタイルのようだ。案内について行こうとすると、他の客に声をかけられた店員がそちらにいってしまった。

宙ぶらりん状態でしばらく待っていても放置されたままなので、適当に座って良いのかと思って店の奥に行こうとした途端、今度は制止されてしまった(これは後程理由が判明したので後述)。

結局入り口近くのテーブルに案内されたのだが、席に座ろうとすると椅子の真下にナプキンとフォークが落ちたまま放置されていた。案内された瞬間に目に入ったので店員が気付いていないとは思えないのだが、まあ別に良いかととりあえずは無視した。

その後レジで注文をする際に読みにくい名前のドリンクがあったため、番号で注文を伝えると間違ったものが出てきた。入店から5分ほどで立て続けにミスがありゲンナリとしてしまったが、まだそれで終わりではなかった。あとは長くなるので箇条書きにしたい。

*店員がお皿を下げる際、毎回フォークを落とす(多分3~4回ほど)。
*レジの目の前でなぜか店員がじゃれ合ってふざけている。
*フォークを落とした際、足元に置いていたカバンに当たって油汚れが付く(なぜか謝罪も無し)。

自分はやけに元気なコンビニや居酒屋の店員を見ると、アルバイトなんだからそんなに頑張らなくても良いのに……と思ってしまうのだが、さすがに今回のサービス水準の低さにはずっこけそうになった。

同席した友人は、店員がお皿を下げる際、お皿の上にフォークを載せ、その上にお皿、フォークとさらに重ねていた状態だったと言い、あんな不安定な状態ならそりゃフォークも落ちるだろうと苦笑いしていた。

■運が悪かっただけとは思えないミスの連続。
自分が汚れたカバンをウェットティッシュで拭いていると、もう一人の友人から何してるの? と聞かれ、状況を説明すると、小売店の店長として働くその友人は「よそのお店の事はあんまり偉そうには言えないけど、それでもちょっと酷いね」と苦笑いしていた。

フォークを何度も落としていた店員は飲食店未経験で今日がバイト初日だったのかも、と自分も苦笑いするしかなかった。

入店時のドタバタのやり取りは、店の奥はゆっくり座ることができる通常のテーブル席があり、入り口近くは背の高い椅子とテーブルでサッと飲んで帰る人向けになっていた。当初入り口近くのテーブルにいた先客は席が空いたら奥のテーブルに案内する、と説明されていたようだ。

それを忘れた店員が自分達を奥の席に案内しようとして、半ばクレームのような形で呼び止められていたらしい(そこまで詳しい説明は無かったが、奥のテーブルがあいたら移動する事も可能、といった案内をされたので概ねそのような状況だと思われる)。それはそれで仕方ないが、そんな状況ならクレームを受けた時点で他の店員もサポートに入れば良さそうなものの、誰も手伝っている様子は無かった。

■ちょい飲みは飲食店を救う……かもしれない。
高田馬場店は、あのケンタッキーがちょい飲みに参入した! と開店時にはかなり話題になった。今年4月のオープン前には多数のメディアを招待したお披露目もあったようで各種メディアの報道や実際にお店に行って来た人のブログなど、多くの情報がウェブ上にも残っている。期待値の大きさとしては極めて大きく、初動の宣伝は大成功と言って間違いないだろう。

最近ではこれまでお酒に力を入れてこなかった、あるいは全く提供していなかったお店でアルコールの提供を開始する店舗が増えた。ちょい飲みはちょっとしたブームとしてすでに多数報じられているが、牛丼の吉野家や、スターバックスコーヒーなどが特に話題となった。

飲食店でアルコールを提供すると客単価が上がる。単純にお酒は高く売れるというだけでなく、お酒に合わせておつまみや食事などの注文も増えるからだ。ただし、お酒がメニューに加われば客の滞在時間が長くなることも予想され、それは回転率の低下につながる。お酒を提供すれば儲かるというほど簡単な話ではないと思うが、他社の成功事例を見て導入に踏み切った店舗も多いと思われる。

ケンタッキーについては、全てのお店で同じメニューというスタイルから、食べ放題のビッフェスタイルやコーヒー・スイーツにこだわった店舗など、その地域・場所に合わせて最適化した店舗を出店していく戦略を取っているという。ちょい飲み(バル)スタイルに適した立地は100の単位に上るというので、今後さらなる多店舗展開を予定している事は間違いないだろう(あのケンタが「一人飲み女性」を魅了するワケ 東洋経済オンライン 2016/04/26)。

■ケンタッキーのちょい飲みはまだ開発途中。
ただ、ケンタッキーに限って言えば自分の体験からすると、これで全国展開はどう考えても無理なのでは?と思わざるを得なかった。

4月にオープンしてからすでに何カ月もたっているが、その状態でここまで接客に不備があることはあまりに不安が残る。まずは一店舗目を作り、そこでメニューや接客、注文から料理を提供するまでの流れなど(オペレーション)を洗練させ、業態として完成度を上げたうえで多店舗に展開をする予定だろう。現在は実際に客に来てもらってさらにブラッシュアップしている段階だと思われる。

高田馬場店は飲食店として席数は少なめで、それに対して店員の数は随分多いように感じた。採算度外視でまずは業態として洗練させようという意図も見て取れた。しかしその分店員の手は空いてしまっていたのだろう、手持ち無沙汰になった店員が随分長時間にわたってレジの目の前でじゃれ合っていた。レジ近くの席からは丸見えで、おそらくカウンター内の他の店員からも見えていたと思うが、特に注意されている様子もなかった。

■問題は店員ではない。
全国展開を考えているのなら、現状はまだ「商品開発」の段階と言っても良いだろう。レベルの高い店員を集め、客が満足しているかどうか、商品の提供は滞りなく出来るか、どこかに無理なオペレーションの設計は無いか……問題点を早い段階で洗い出して改善することで、お店のレベルを上げてマニュアル化し他店でもそれを生かす、というのが一店舗目に課せられた役割の一つでもある。

あくまで勝手な想像ではあるものの、「飲食店未経験でアルバイト初日」くらいでないと説明がつかない店員がいたことについて、その店員が良いとか悪いという話ではなく、そもそも商品開発の途上でそのレベルの店員をお店に入れて良いのか、ということだ。レジの前で店員がじゃれ合っている上に注意する人がいない点については論外としか言いようがない。

自分が体験したのは開店直後にアタフタする飲食店のような状況に近い。個人が経営するお店なら客も承知の上といったところだが、大手の飲食チェーンで社運をかけて開発した業態の、しかも記念すべき1店舗目がこの状況では、問題を洗い出して改善という段階に到達できているとは思えない。

ミスが連続したことやその内容と状況から考えて、偶然とか運が悪かったと判断するには無理があり、これは店員や店舗のオペレーションの問題でなく業態開発に問題があるとしか思えない(したがってお店に対する不満を記事化したのでなく、企業分析の記事として読んで貰えればと思う)。

■ブランドは一瞬で棄損する。
前述したとおり、ケンタッキーのちょい飲みは飲食業に関するニュースとしては異例と言っても良いほど大々的に取り上げられ、多くの人の脳裏に「ケンタッキーがちょい飲みを始めた」というニュースはまだ残っていると思われる。

零細企業を経営する立場からするとこれほど羨ましい状況は無い。まさにケンタッキーに対する期待や信頼感、つまり長年のブランド力の成せる技といって過言ではない。小さい頃、ケンタッキーのフライドチキンはご馳走だったという人もたくさんいるのではないかと思う。

一方でSNSが発達した現在、ブランドの価値が棄損するのも一瞬だ。無名・匿名の人の何気ないつぶやきが瞬く間に広がり、企業にダメージを与えることも少なくない。上場企業であれば株価にまで影響する。最近でも大手企業のトラブルが度々炎上騒ぎとして見受けられるが、1人のお客さんの後ろに数千万人の顧客候補がいる、と考えるくらいでないと危険な時代になってきたのだろう。

もちろん、これはファイナンシャルプランナーとして企業を経営する自分にとっても当てはまる話でもある。ケンタッキーの今後に期待をしつつ、自分自身も身を引き締めなければ……と思わされる体験だった。

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中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 ファイナンシャルプランナー




著者プロフィール


中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー(FP)、シェアーズカフェ店長、シェアーズカフェ・オンライン編集長。「保険を売らないFP」。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。開業から10年間、一貫して対面相談とウェブで情報発信を行う。2014年、シェアーズカフェ株式会社に法人化。現在は日暮里駅近くに事務所を構える。

情報発信は東洋経済オンライン、ITmediaビジネスオンライン、プレジデントオンライン、JBプレス、日経DUAL等の経済誌で執筆する他、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等で執筆・出演・取材協力多数(めざましテレビ、報道2001、スッキリ他、メディア掲載・取材協力の詳細を参照)

著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」、「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人(大和書房)」。住宅本はAmazon・楽天ブックスの住宅ローンランキングで最高1位、Amazon総合ランキングでは最高141位。

対面ではファミリー世帯向けにプライベートレッスン(相談)を提供。生命保険の販売を一切行わず、金融機関・不動産会社のセミナー・広告等の業務も全て断り、相談料だけを受け取るFP本来のスタイルで営業中。

プライベートレッスンでは独自のカリキュラムを顧客ごとに最適化、相談・アドバイスと組み合わせて高度なコンサルティングを提供。特に住宅購入の資金計画、ライフプラン全体のアドバイスを得意とする。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。

2013年にはマネー・ビジネス分野の士業や専門家が参加する自社メディア、シェアーズカフェ・オンラインを設立、編集長に。2014年よりYahoo!ニュースに配信中。他にも編集プロダクション、専門家向けの執筆指導(オンラインサロン)、社長専属の編集者などの業務も提供。FP事業とメディア事業を車の両輪としてシナジーを経営者として日々追求。

お金よりも料理が好きな79年生まれ。

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