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これまでに「持ち家は資産か?」「『持ち家と賃貸はどちらが得か?』という下らない論争」の二つの文章を寄稿し、いずれも大きな反響を頂いた。投資・会計・不動産といった各分野の専門家の方からも多数の賛同を頂いた(特に嬉しかったのは、不動産コンサルタントの長嶋修さんと田端新太郎さん(LINE株式会社執行役員)からの賛同のコメント)。これはいずれもトゥギャッターにまとめた。

「持ち家は資産か?」へのコメント
「持ち家と賃貸はどちらが得か?という下らない論争」へのコメント

一方で、専門家の方から反論を頂いたケースもあったので、特に多かった二つの疑問に答えたい。

■持ち家に「利益」は発生するか?
反論1
・賃料には大家にリスクを押し付けた分が含まれている
・賃料には大家の利益も含まれているから借りると損をする

いずれも持ち家はリスクを取った分だけリターンがあるから賃貸より有利、という指摘だ。自分は普段のレッスンでも「人に貸すか自分が住むかの違いだけで、持ち家は不動産投資と同じだ」という話をしているので、持ち家にリスクプレミアム(リスクを取った事により得られる利益)がある事は否定しない。

しかし、だから持ち家が絶対有利とはならない。リスクを取ると必ず儲かるのならば株で損をする人はいない(持ち家の方が有利な「場合」があるのは当然で、前々回に書いた)。リターンを得るにはリスクを取らないといないが、リスクを取ったら必ずリターンを得られる訳ではない。必要条件と十分条件は違う(これは投資の初心者が陥りやすい勘違いだ)。

自分が書いた事は「リスクに耐えられない人がリスクを取ってしまう事」の危険性だ。

持ち家によるリターンはリスクを取った裏返しである以上、持ち家の方が有利という断言は間違いだ。株と預金を比較して、リターンだけを見て株のほうが有利だと判断する人は居ない。リスクが同じならば、リターンは高い方が良いに決まっているが、今回の比較はリスクが異なる物を並べて、不用意にリスクを取らない方が良いと指摘しているのだから、この反論は反論にはなっていない。リスクに耐えられる人だけが持ち家を買っていい、という事で結局は資金繰りに話が戻る。

■35年後に価値は残るのか?
反論2 
・中古物件にも値段は付いている。中古物件のチラシを見たこと無いのか? 
・築35年のマンションでも坪単価ウン百万円の物件もある。

値段が付いている物もあれば付いていない物もある。特に売れないマンションは取り壊しでもしない限り管理費と修繕積立金の支払い義務から逃れられない。ここは特に忘れがちな部分で、まれに100万円程度で売りに出されているリゾートマンションなどは管理費と修繕積立金が異常に高く、ババ抜き状態の物件だ。

「持ち家は資産か?」で説明したことは、大金をつぎ込んでリスクを負担した挙句、それに見合った資産価値がろくに残らない可能性がある、というリスクだ。したがって、築35年でも資産価値のある不動産はゼロではない、というのは反論になっていない。

また今現在築35年のマンションに資産価値がある事と、自身が買った新築マンションが今から35年後に資産価値があるかどうかは全く別問題だ。現実に築35年でも資産価値のあるマンションはある! という指摘は「35年前○○社の株を買っていれば今頃億万長者だ」という指摘と同じだ。残念ながらこれを結果論をという。35年後の不動産価格が分からない以上、意味の無い予想はせず、計算できる範囲・コントロールできる範囲でリスクや損得を考慮して判断をするのが正しい態度だ。

これらの反論を書いた人はおそらく現在の不動産価格に関して、自分よりよっぽど詳しい人だろう。しかし、これは将来が現在の延長線上にあるという考え方の典型例だ。結果論の一番危険な部分はリスクを無視してしまう事にある。

繰り返すが2012年時点での築35年の物件と、2047年時点の築35年の物件はそもそも比較対照にならない。現在マンションの品質や耐久度は以前より格段に上がっているので、そこは考慮してもいいはずだが、それにしても35年後というのは資産価格を予想するには長すぎる未来だ。残念ながらこれも反論になっていない。

最初はなぜ専門家からこんなトンチンカンな反論が来るのか理解が出来なかったが、いずれもリスクの観点から考察が無い事に気付き、今回の記事を書いた。なお、これまでに書いた事はあくまで原則論だ。原則を踏まえた上で個別の地域・物件・自身の状況について考慮されたい。

最後にもう一つだけ反論を紹介したい。

反論3 
・持ち家は資産です。固定資産税を取られるので。 
・バランスシートで言えば持ち家は資産。

おっしゃるとおり。「持ち家に資産価値はあるか?」が正しい言い方だ。いずれも頂いたコメントの中で一番正しい突っ込みだ。これに関しては素直に間違いを認めて謝罪したいorz

住宅の購入を検討されている方には以下の記を参考にして欲しい。
■小学生でも分かる住宅ローンの計算方法 
■持ち家の予算はチキンレースか?
■住宅購入における予算の決め方 その1 その2
■繰り上げ返済は本当にお得なのか? 前編 後編
■「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1  その2
■9割も売れ残る新築マンション ~空室率40%の時代に備えて~

次回は一般の方から貰った質問にも答えたい。 

続きを書きました!→■リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

※この記事は大きな反響を受けたため、それも取り入れて4本続きの記事になりました。
■持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
■そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
■「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り) 
■リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

中嶋よしふみ 
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー 
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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