過去3回にわたって持ち家に関する記事を書かせて頂いた。今回は一般の方の個々の反論に答えるつもりだったがやめておこう。全ての答えが「自分が見ているのは損得ではなくリスク」という同じものにしかならないからだ。

■持ち家のリスクについて。
自分が普段使っている自作のテキストがある。その1ページ目の1行目には「このテキストはお金の知識・情報をリスクという視点から捉え直した」と書いた。自分としては一連の議論もテキストの延長で当たり前の事を書いているつもりだったが、そうではない人が(賛否いずれの立場でも)沢山居たようだ。

前回は不動産業界の方へのコメントを書いたが、言うまでもなく業界の方が見ているのは建物や土地であって客のリスクではない。売れてしまえば持ち家にリスクがあるかどうかは不動産会社にとっては関係ないからだ。だから不動産業界は駄目だとか酷いとか言うつもりは全く無い。自身のリスクについてアカの他人が、特に売り手が心配してくれると思う方が間違いという事だ。

■損得より大切なリスクの話。
また、コメントを見る限り一般の方は損得しか見ていない人がかなり多いように感じた。不動産業者・客・FPである自分、この3者の視点のズレが一連の記事に異例の反響を頂いた理由だと自分では思っている。

「リスクがあるとか将来の事は分からないとか、それしか書いていないじゃないか」「将来の事を予測して客に教えるのがFPの仕事だろ」という反論もあった。これに対する回答が持ち家をはじめとした家計管理に関する、自分の哲学だ。

将来株価がどうなるか、不動産価格がどうなるか、専門家であればそれなりに予想できるだろう、と多くの方は思っているかもしれないがこれは根本的な勘違いだ。もし株価の予想的中率を野球でいう打率のように示されたら、多くの専門家は失業するに違いない。モダン・ポートフォリオ・セオリーと呼ばれる、現在でスタンダードといって差し支えの無い投資に関する考え方がある。この理論の大前提は、株価はランダムに動く、株価はプロアマ関係なく予測できない、というものだ。細かい説明は避けるが、将来の株価が予測できないならば、負担できる範囲でリスクを取る、という具合に期待されるリターン(=予測した結果)ではなくリスクを起点に考えるのが正しい手順だ。

これは持ち家を含めた家計管理でも同じだ。将来の事を考える時、大抵の人はある一定の状態を予想して「もしこうなったら」「万が一ああなったら」と対策を考えるのが一般的だと思うが、これは間違いだ。なぜなら予想が外れてしまえば、その対策は無駄になるどころか、対策を打った事によって被害が広がる可能性すらあるからだ(例えばハイパーインフレに備えて大量に金を買った場合、予想が外れた上に金の価格が下がれば大損をする)。福島の原発事故で大前研一氏が語ったのは「誤った想定が事故の原因になった」という事実だ。これはリスクを伴う意思決定を考える上で極めて重要な指摘だ。

■リスクとの正しい付き合い方。
正しいリスクとの付き合い方はこの正反対で「リスクがある事を前提とする事」、もっと噛み砕けば「分からない事を前提にする事」であり、「何が起きても大丈夫なようにしておく事」だ。予想が出来ると勘違いをするから、本来であれば取ってはいけないレベルまでリスクを取ってしまう。しかも、本人は予想をしたとは思っていないから余計にタチが悪い。最悪でもこれ位だろう、失敗してもこの程度だろう、といった無意識の前提は、状況が変わればいとも簡単に覆される(どれ位覆されるかはブラックスワンを参照)。

最後に、自作テキストの1ページ目に書いた文章を引用して、この話を終わりたい。

細かい話は本文で説明しますが、お金の話とはつまるところ「リスクの管理」です。当店ではリスクはあまり取らない方が良いですよ、という方針でレッスンを進めています。もちろん、リスクをとった人生を送りたい方もいらっしゃるでしょうから、リスクを取る・取らないに関してはお客様の自由です。一番重要なことはリスクを管理(コントロール)出来るかどうか、この一点にかかっています。リスクを抑えたい人はもちろん、失敗したら破滅するような形でリスクを取りたい方はいらっしゃらないでしょうから、リスクを取る・取らないにかかわらず、リスクをコントロールする術は必要です。テキストを読まれる時も、個別の細かい部分を暗記する必要はありませんので、すべての項目で「リスクを管理するためにこれをやらないといけないんだな」という観点で学んで頂けたらと思います。

株や家を買わなくても家計はリスクだらけだ。そして、その多くは保険で備える事も出来ない。ぜひリスクという視点から家計を捉え直して欲しい。

住宅の購入を検討されている方には以下の記を参考にして下さい。
■小学生でも分かる住宅ローンの計算方法 
■持ち家の予算はチキンレースか?
■住宅購入における予算の決め方 その1 その2
■「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1  その2
■9割も売れ残る新築マンション ~空室率40%の時代に備えて~

具体的な話を期待していた人には不満が残るかもしれないが、文字数の関係で以上となる。機会があれば個別のリスク管理に関する話も書いてみたいと思う。

※この記事は大きな反響を受けたため、それも取り入れて4本続きの記事になりました。
■持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
■そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
■「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り) 
■リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

中嶋よしふみ 
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー 
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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、37歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経DUAL、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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