前回の記事の最後で以下のように書いた。

インデックス運用とアクティブ運用はどちらが優れているのか、と対立するものなのだろうか? そもそもインデックス運用とアクティブ運用は水と油のような別物なのか?

まず、インデックスを上回る成績を出すために、プロの手(アクティブファンド)を借りる必要など全くない。必要なものは決算書の情報だけだ。
これも投資の勉強をした事がある人ならばご存知だと思うが、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)が低い銘柄のリターンが市場平均より高い事は、統計的データでも証明されている。PERとPBRを組み合わせて使った場合のリターンは驚異的とも言える。これらはいわゆるバリュー投資(割安株投資)とも呼ばれ、市場平均を上回るリターンを生み出す方法は確実にある(「ウォール街で勝つ法則」という本に詳しい)。

ラッセル野村のデータによれば、過去日本株において1987年〜2011年の25年の間で、割安株のリターンは18年も市場平均を上回る成績を残している(ラッセル野村のデータでは低PBR株を割安株として定義)。

実際にバリュー投資を行うには、利益や純資産の他、キャッシュフローや自己資本比率、当座比率、流動比率、配当利回りなど、多数の指標を利用して銘柄分析を行う。

ここまで来ると趣味の世界だろうから手間を掛けたくない人には出来ないやり方だ。「運用が仕事でも趣味でもない人」には、やはりインデックス投資がお勧めであることに間違いはない。また、高い確率で市場平均を上回るという統計データがあっても、それはローリスクハイリターンを意味しない。銘柄数を市場平均より絞り込んでいる以上、バリュー投資のリスクはインデックス投資より当然高い。

重要な事は、バリュー投資の理論はインデックス投資の理論の前では劣っているわけではない事だ。インデックス投資を行う人にとって、インデックス投資の理論はゴール地点であり、それ以上のことを考える必要はない。一方、バリュー投資を行う人にとってはインデックス投資の理論は前提であり、スタート地点だ。インデックス投資の理論を踏まえた上で、それでもなお市場平均を上回る事は出来ないのか?と考える事がバリュー投資だ。

当然のことながら、投資判断を大きく加えるという意味ではバリュー投資もアクティブ運用の一種だが、インデックス運用とアクティブ運用に共通点は本当に無いのか。アクティブ運用はゼロから投資対象の銘柄を探すと考えるならば共通点は全く無さそうに見えるが、インデックスからダメな銘柄を外していく、と考えるとインデックス運用の延長線上にアクティブ運用があると分かる。

ダメ銘柄の基準はファンドマネージャーによるだろうが、統計データを頼りにリターンが悪い割高な銘柄や財務的に悪化している銘柄を外していけばバリュー投資になる。これは一部の個人投資家でも行っている、いわゆるスクリーニングによる銘柄選択だ。

ユニクロが良いとかキャノンはダメとか個別の銘柄を見る前に、例えばPER10倍未満、PBR0.5倍以下、などの条件で銘柄を検索すると、条件に適合した銘柄だけを探し出す事が出来る(一部のソフトやウェブサービスで可能)。

「インデックス運用−ダメ銘柄=アクティブ運用」

このように考えるとインデックス運用vsアクティブ運用の対立、という考え方自体に意味が無い事が分かるだろう。ダメな銘柄にも良い銘柄にもまとめて投資をするのがインデックス投資であり、インデックスからダメな銘柄を抜いたものがアクティブ運用、という事だ。

インデックス投資が優れている理由は、事前に個別銘柄の良い・悪いの判断が簡単にはできないからだ(悲観されていたダメ企業が復活した時のリターンは非常に大きい)。一方、バリュー投資が優れている理由は統計データを見ればリターンの悪い銘柄の見分け方は(リスクは高まるものの)ある程度わかるからだ。

アクティブ運用は銘柄数を絞り込む事で、インデックス運用よりもハイリスク・ハイリターンの手法をとっている。これは以前アゴラで反響を頂いた「持ち家は資産か?」の一連の議論でも指摘したが、リスクが異なるものを同列に比較している時点で不適切ともいえるわけだ。

結局、手間とリスクを取れる人はアクティブ運用を自分でやってもいいんじゃないでしょうか、そうでない人はインデックスファンドをリスクを取れる範囲で買えば良いんじゃないでしょうか、というゆるい結論になる。個人的には「アクティブ運用」は全く否定しないが、「アクティブ投信」はお勧めしない。

なお、外国株に関しては決算書の分析までするのは多くの個人投資家には難しいため、国内株は個別銘柄で、外国株はインデックスファンドを、と二刀流で運用している人も少なくないだろう。あるいは日本株の中でも、中・小型株は個別銘柄で、大型株はTOPIXで、といった使い分けもあるだろう。

前回も書いたが、ベストではないがベター、というのがインデックス投資の位置付けだ。数あるインチキな投資情報の中から真っ当な手法であるインデックス投資にたどり着いた人には、「インデックス投資最強論」を唱えるような事はせず、あともう少しだけ勉強をして「手間とリスクとリターンの兼ね合いを考えれば、ベストじゃなくてベターな手法としてインデックス投資は良い選択肢なんだな」と考えられるようになって欲しい。

そうなればインデックス投資がいくら批判されたところで「そんなのわかってるよ、ベストな方法じゃないからね。そもそも本当の意味でベストな方法なんてリスクを相手にしてる限り分かるわけないでしょ」と笑って受け流せるようになるだろうし、自身の運用も冷静に考えられるようになるだろう。

間違っても「アクティブ運用ごときをインデックス運用の延長線上にあるなんてふざけた事を言っている輩がいます! 反論して下さい!」などと、前回引用したブログの著者に報告をしないで欲しい(笑)

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長
ファイナンシャルプランナー
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●マネーリテラシーの本を書きました。 ●住宅購入の本を書きました。




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著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

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