このエントリーをはてなブックマークに追加
カテゴリー  住宅 

23986
前回の記事では簡単に住宅ローンの「借り入れ可能額」の説明をしたが、よく言われるように借りられる額と返せる額は違う。

予算を決める時に考慮すべき要素は、年齢と業種、お勤め先の企業の規模、上場・非上場だ。

■年齢と住宅ローンの関係。
まずは年齢だが、定年前にローンを終わらせる事が原則だろう。可能ならばもっと早く返し終わったほうが良い。早く返し終わればそれだけ老後資金を貯める期間を長くとれる。なにより、現状でも定年から年金の支給開始まで5年も空白期間がある。これは今後もっと拡大するかもしれない。

目安としては定年から3年~5年以上は余裕を持って返済を終わらせたい。30歳であれば長くても25年程度、可能ならば20年以下が望ましい。最悪なのは退職金でローンを清算しよう、という発想だ。退職金は必ずもらえるとは限らないし、先に説明した空白期間でかなりの額が消える。毎月25万円の生活費ならば、5年間で1500万円だ。空白期間でこれだけ退職金が消えると考えれば住宅ローンは退職金で、という発想が無謀だと分かるだろう。

この定年までの期間と現在の収入、金利を元に借入額を計算する。年収600万、返済比率20%、金利2%、返済期間20年で計算すると、1976万円が借りられる、という計算になる。これが借入可能額で、なおかつ「上限」と考える。これだけ借りても大丈夫とは間違っても考えない事だ。

NHKでも間違う、持ち家と賃貸の比較」で説明したとおり、一昔前に言われた年収の5倍、などという基準は全く意味を成さない。

お金のかかる趣味が一切ない、子供を作るつもりはない、将来親から結構な額の遺産を相続できる、など当然家庭によって事情は異なるので返済比率は調整出来るが、一般的な家庭であれば上記の額は上限と考えておいた方が安全だろう。

収入に関しては、勤め先企業の業種や規模は収入の安定度に直結する。上場・非上場でも安定度はかなり違う。

■上限を計算した後は調整を加える。
収入減や失職も考慮して、収入が半減しても返済できる位の額をとりあえずはリスクの目安にする。もちろん、半減と言っても1000万の半減と300万の半減では随分意味合いが異なるので、金額も考慮する。下限はフリーターレベルの収入(200万円以下)になっても返済が可能な借入額だろう。ここを基準に、これより増やせばリスクは確実に増えると考える。

大手企業であれば、将来の収入の推移もある程度は(少なくとも中小企業よりは)先が見込めるだろう。これら各種事情も考慮して、借り入れ可能額=上限額から減額調整を行う。

金利に関しては、固定金利以外に選択肢は無いだろう。変動金利は余りにリスクが高い。ただし、収入が非常に高く、リスクを取っても良いという方のみ変動金利を選んでも良いだろう。現在は変動金利ならば0.8%程度、固定金利ならば2%程度、金利差はおよそ1.2%程度となる。

3000万円を借りた場合、金利が変わらなければ初年度ならば36万円程度利息が浮く計算になる。大雑把な計算方法として、借入残高×金利差が年間の利息負担の損得となる。借入残高2000万の時に4%まで金利が上がっていれば、固定金利と比べて2%分余計に払うので年間40万円の損となる。1ヶ月あたり3.3万円の負担増だ。これが1年で済めば良いが、高金利が長期間続けば、とんでもない額になる。株ならば損失の上限は投資した額に限定され、売却すれば逃げる事も出来るが、住宅ローンの金利はどれくらい上がるかは分からないので、損失は青天井だ。

金利はマーケットで決まるので、株価と同じく急激に変動する可能性がある。欧州で破綻の危機が伝えられる国の金利は急激に上がっている。日本は違う、と思うならそれに掛ければ良いと思うが、変動金利の低金利はリスクと背中合わせであることは忘れてはいけない。

■予算が減ってしまった場合は……。
このようにリスクも考慮しながら計算すると、大抵の方が想定したよりローンの額が大幅に減る。これじゃあ欲しかった家が買えないよ、という借入額になってしまったら、それは元々の予算が分不相応だという事になる。もちろんここで説明したより多く借りる事も出来るだろうが、それによってリスクが高まる事は理解すべきだ。

もっと良い家を買いたい、でもリスクは増やしたくない、という事ならば頭金を増やすことを考えるべきだろう。このように説明すると、頭金を貯めている間の家賃が無駄では無いか、と言われてしまうのだが、買うのが遅くなればその分建て替えや大幅改修が先延ばしされる事になるので、特に心配する必要は無い。

20代で買った家が死ぬまで使えるならば無理をして早く買っても良いかもしれないが、実際には家の寿命は40年程度だ。メンテナンスでもっと持たせることは可能だが、当然その分費用はかかる。

■夫婦で借りる場合は?
ペアローンや収入合算など、パートナーと一緒にローンを組むこともあるが、これも慎重に考えるべきだ。収入合算の問題点は例えば夫婦で30年のローンを組めば、夫婦が二人とも30年間休み無く働き続けるという前提でお金を借りる事になってしまう部分だ。

残念ながら女性の雇用は不安定で、給料の伸び方も額も低い。これからお子様を生む予定のある方は、出産・育児で収入が途絶える期間もあるだろう。休業中の補助金は出産手当金や育児休業給付金で給料の半分程度は保障されるが、これも出産や育児で休暇が取得できればの話だ。中小企業で半ば強制的に退職に追いやられる事も珍しくは無いが、その場合手当ては無い。退職後に復帰する場合、正社員として就職できれば良いが、非正規雇用となれば収入合算時の想定から大幅に下がった収入で返済する事になる。

このような状況では、リスクをかなり大きく見積もった方が良いだろう。実際、収入合算では女性側の収入は半分に見積もられる事はあるが、期間に関しても注意が必要だ。例えば30歳の共働き夫婦が子供は無しの状態で25年の収入合算で借りて大丈夫だろうか。将来子供を二人も生めば、女性が実質的に働ける年数は20年未満かもしれない。小さい子供がいてパートすら出来ない、となればもっと短くなるかもしれないし、働き方が変われば収入も大幅に減るだろう。

奥様が借りられる額を個別に計算する時には、年収は1/2~1/3程度、働ける年数も少なめに、といった具合に、調整する必要があるかもしれない。先の例で言えば、年収×20%×25年で計算する場合と、年収×1/2×20%×15年で計算する場合では、借入額は3倍以上差が出る。

もちろん、収入合算に関しても家庭ごとに事情は違う。収入合算によって借入額をどれ位増やしても大丈夫なのかは個別の事情とリスクを考慮して判断すべきだ。

住宅の購入を検討されている方には以下の記事が参考にして欲しい。
■小学生でも分かる住宅ローンの計算方法 
■持ち家の予算はチキンレースか?
■住宅購入における予算の決め方 その1 その2
■繰り上げ返済は本当にお得なのか? 前編 後編
■「持ち家と賃貸はどっちが得か?」とか「家賃を払うのはもったいない」とかいまだに言ってる不動産業者やファイナンシャルプランナーは、相当ヤバイ その1  その2
■9割も売れ残る新築マンション ~空室率40%の時代に備えて~

買うかどうか迷っている方には、持ち家と賃貸の比較に関する以下4つの一連の記事が参考になる。
■持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想
■そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争
■「持ち家は資産だ!」という反論が来た(謝罪も有り) 
■リスクとの付き合い方 持ち家議論へ頂いた反響への回答

以上、かなりリスクを見積もった形で予算の決め方を説明したが、「持ち家の予算はチキンレースか?」でも説明したとおり、返せる範囲ギリギリの予算で家を買わなければいけない理由は全く無い。前回と今回の記事が住宅購入に際して多少なりとも役に立てば幸いだ。 

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
■ツイッターアカウント @valuefp  
フェイスブックアカウントはこちら 
ブログの更新情報はツイッター・フェイスブックで告知しています。フォロー・友達申請も歓迎します^^。
※レッスン・セミナーのご予約・お問い合わせはHPからお願いします。
※レッスン・セミナーのご案内はこちら


●住宅購入の本を書きました。
住宅ローンのしあわせな借り方、返し方 (日経DUALの本)
中嶋 よしふみ
日経BP社
アマゾンランキング: 住宅ローン部門最高1位 総合最高141位 
楽天ブックス:住宅ローン部門最高1位




シェアーズカフェからのお知らせ
 ■シェアーズカフェでは住宅・保険・投資・家計管理など、お金に関するレッスンを提供しています。中嶋が直接指導します。
 ■シェアーズカフェが士業・企業・専門家向けのウェブ・コンサルティングを行います。


著者プロフィール


シェアーズカフェ店長 ファイナンシャルプランナー
中嶋よしふみ。現在、34歳(FPとしては多分若手)。

2011年4月にファイナンシャルプランナーのお店・シェアーズカフェを開業。

2012年2月に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5ヶ月で月間アクセス14万件を突破。2013年は総アクセス500万件超(配信先も含む)、ヤフーのトップニュースに4回掲載される。ファイナンシャルプランナーとしてブログのアクセス数はダントツの日本一を誇る。

2013年4月にはアゴラ研究所主催の連続金融セミナーに登壇。山崎元氏、ライフネット生命現会長・出口治明氏、元マネックスユニバーシティ代表取締役・内藤忍氏など、金融業界を代表するメンバーと共にセミナー講師として参加(担当は住宅購入)。

2014年は住宅金融支援機構(フラット35)でセミナーを2回行う他、日本FP協会・長野支部にてFP向けセミナー(継続教育研修)に登壇。

現在、シェアーズカフェのブログのほか、日経マネー、日経DUAL、言論プラットフォーム・アゴラ、ブロゴス、ヤフーニュース個人、ハフィントンポスト等で執筆中。老舗情報サイト・オールアバウトでは住宅カテゴリでガイドを務める。

その他、日経新聞でコメントが掲載されるなど、多数の媒体で情報発信を行う。

対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを行う。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業を行っている。

プライベートレッスンでは、お客様ごとに最適化したレッスンと適切なアドバイスを組み合わせて高度なコンサルティングを提供中。他に無い独自のサービスがお客様の支持を得ている。

現在は専門家が書き手として多数参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営するほか、ブログ執筆による集客の経験とノウハウを生かして士業・企業向けにウェブコンサルティングも提供する。

お金よりも料理が好きなFP。パティシエも兼任。

メディア掲載・取材協力の詳細はこちら。

※レッスン・セミナー・相談は全て中嶋が直接対応します。ご予約・お問い合わせはシェアーズカフェの公式HPからお願い致します。


このページのトップヘ