今回、紹介するコールマン・ホーキンス【通称:ホーク】というサックス奏者は、スウィング・ジャズ時代から活躍していた大物。超大物と言った方が良いかもしれません。スター・プレイヤーです。

ですが、注釈がつきます。「スウィング・ジャズ時代のビッグ・ネーム」です。以前、紹介した「60枚目:Benny Carter "Further Definitions'"【1961】」のベニー・カーター、「61枚目:Lester Young/Teddy Wilson "Pres and Teddy'"【1956】」のレスター・ヤングと並ぶ存在です。

現在、ジャズというとそのほとんどは「モダン・ジャズ」を指します。モダン・ジャズとは、1940年代初頭〜1960年代まで発展し続けた「新しいジャズ」のこと。ビ・バップ、ハード・バップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどを含む大分類です。モダン・ジャズは、3〜5人編成の少人数編成でのプレイが基本で、各プレイヤーが披露するアドリブこそが生命線。リスナーは各プレイヤーの素晴らしさを感じとり楽しむスタイルのジャズです。

チャーリー・パーカ−【1920年生まれ】、マイルス・デイビス【1926年生まれ】、ジョン・コルトレーン【1926年生まれ】、ソニー・ロリンズ【1930年生まれ】、などが代表的なプレイヤー。1940〜50年代に20歳を迎えた世代ということに。

これに対し、1940年代以前のジャズが、おおざっぱに言うとスウィング・ジャズ。大人数のビッグバンド編成で、バンド・リーダーの指示の下、統一的な演奏をします。無闇やたらなアドリブは基本的になし。リスナーに聴かせるための音楽と言えるかも知れません。

デューク・エリントン【1899年生まれ】、カウント・ベイシー【1904年生まれ】、ルイ・アームストロング【1901年生まれ】らが代表的なバンド・リーダー。彼れらは、演奏のみならず作曲/編曲で近代ジャズの完成に大きく寄与。そのようななビッグ・バンドの一員としてプレイし人気者になったのが、レスター・ヤング【1909年生まれ】、ベニー・カーター【1907年生まれ】、コールマン・ホーキンス【1904年】、ベン・ウェブスター【1909年生まれ】といったプレイヤーでした。

スウィング・ジャズ期に活躍したジャズメンは、ジャズ創成期の1920〜30年代に20代を過ごし、モダン・ジャズ期には既に40代に達していたベテランということになります。モダン・ジャズに挑む者もいれば、生涯スウィング・ジャズに身を捧げた者もいました。

ですので、今回取りあげるコールマン・ホーキンスは、スウィング・ジャズ期の大物です。いわば”オールド・スクール派”に属するホーキンスが今作を録音したのは、1959年。59年と言えば、マイルスが"Kind of Blue"を発表した年でもあります。メインストリーム・ジャズは更に一歩前進しようとしていた時期です。この時ホーキンスは55歳。大ベテランの域に達していた時期です。

そして、タイトルからも解るように、ピアニストのレッド・ガーランド【1923年生まれ】率いるピアノ・トリオとの共演作。レッド・ガーランドと言えば、以前「3枚目:Red GARLAND"Groovy"【1957】 」でも紹介しましたが、モダン・ジャズを代表するピアニスト。第一次マイルス・デイヴィス黄金のクインテットの一員として、現在進行形四部作に参加。数々の歴史的録音を遺したピアニストで、当時は現役バリバリ世代。

つまり、往年のスター・サックス奏者ホーキンスを、”若手”のガーランド・トリオが支える構図の作品ということになります。世代を超えた共演です。スタイルをも越えた共作ということになります。例えるなら、ビートルズかストーンズをバックにチャック・ベリーが演奏するといった感じでしょうか。



Coleman Hawkins "With The Red Garland Trio"【1959】
コールマン・ホーキンス 「ウィズ・レッド・ガーランド・トリオ」【1959年録音】

Coleman hawkins(tenor)
Red Garland(Piano)
Doug Watkins(Bass)
Charles "Specs"Wright(Drums)

敢えて最初に申し上げますが、この作品はホーキンス、ガーランド両者のディスコグラフィ上ではそれほど重要な作品とは考えられておりません。ジャズの入門書的なガイドブックでも、取りあげられることあまりはないと思われます。どちらかというと、マイナーな作品。忘れられた一枚というべきかもしれません。

ちなみに、英語版ウィキペディアのコールマン・ホ−キンス、レッド・ガーランド双方のディスコグラフィにも記載がありません。

ただ、聴きやすさは抜群。文字通りスウィングします。つまり、モダン・ジャズの発展史とは無関係な、言ってみれば時代錯誤的な作品なのですが、大ベテラン、ホーキンスのプレイが痛快極まりない内容。「古き良き時代の復活」、文芸復興的な作品と言えます。

ということは、単純に聴いて楽しいジャズ作品を紹介するこのカテゴリ「First Step:どれから聴くか」にうってつけの内容。ですので、少々マイナーな作品ですが、敢えて紹介いたします。ソニー・ロリンズやコルトレーンを聴いて、いまひとつピンと来ない方にはおすすめだと思います。

1曲目に収録されている"It's A Blue World"がホーキンス節が炸裂する超名演なのですが、残念ながらYoutubeに音源がありませんでした。

【2013/11/14追記】その後、Youtubeにアップロードされていました。是非とも聴いてみてください。

これぞジャズ・サックス。流麗な響きに癒やされます。コルトレーンやロリンズ、キャノンボールらモダン・ジャズ世代も良いですが、たまにスウィング期のビッグネームを聴くと逆に新鮮さを感じます。

2曲目収録の"I Want To Be Loved"。バラッドです。


泣きのサックスとでも言うのか。ホーキンスは、バラッドの名手としても知られております。マイルスはかつて「ホークを聴き、バラッドのプレイを学んだ」と言ったそうです。

3曲目"Red Beans"。

中盤までは、レッドのピアノ・トリオのみ。後半になってホーク登場。

5曲目収録"Blues For Ron"。


伸びやかなホークのブロウを堪能できます。

先ほど、今作はマイナーな作品と申し上げましたが、ベテランの域に達し、完成されたスタイルを持つホーキンスにとってみれば、このレベルの作品はいくらでも吹き込めるということなんだと思います。ですので、目立たないという結果に。

また、ホーキンスは他のスウィング期のサックス奏者と比べ、特筆すべき点があります。それは、スウィング・ジャズの時代が終わりを告げ、モダン・ジャズ期に入ると、果敢にビ・バップに挑んだ点。1940年代には、若き日のマイルス、モンク、ガレスピー、マックス・ローチらを抜擢しセッションを重ねました。新しい才能を見つけ出す目もたしかでした。

モダン・ジャズ期のサックス奏者にとって、ホ−クはアイドルでした。ロリンズやコルトレーンも、子供の頃ラジオから流れてくるホークのプレイに心酔したはず。

今回のレッド・ガーランドとの共演のみならず、ホーキンスはモダン・ジャズ期に若手ジャズメンの作品に積極的に参加しました。

 

左から、ソニー・ロリンズ、ミルト・ジャクソン、モンク/コルトレーン、マックス・ローチとの共演作。いずれもモダン・ジャズ全盛期のよく知られた作品ばかり。いかにホーキンスが現役バリリの若手ジャズメンたちに愛され信頼されていたかが伝わってきます。

スウィング期の大物プレイヤーの作品には、モダン・ジャズ期の作品と比べ、品格があるとでもいうのでしょうか、心に余裕のあるオトナの優雅さのようなものを感じます。実力はもう十分証明してしまったので、のんびりとリラックスして演奏するといった感じです。

現在は工夫を凝らしたラーメンが大人気。が、たまに「昔ながらの中華そば」的なあっさりしたものを食べると逆に新鮮な印象を受けることがあります。野心あふれる若者たちの最先端ジャズはもちろん素晴らしいのですが、たまには晩年のホークやレスターのリラックスした演奏を楽しむのも悪くばいはずです。

   

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