新しいカテゴリ「Giant Meets Giant:巨人、邂逅ス」の第1回となります。

ジャズという音楽のおもしろさのひとつに、多種多様なプレイヤーの組み合わせが可能という点があります。ロック/ポップスですと、バンド・メンバーは固定されているのが通常。一度世に出たバンドは、パッケージ化されたいわば商品。ストーンズとビートルズを一度バラして組み替えるなんてことはまずあり得ません。

ところが、ジャズはそもそも固定されたユニットなどあってないかのごときもの。録音の度に、リーダーがメンバーを集めるのが基本です。あるレコード会社と契約しているリーダー格のジャズメンが、別の演奏家に呼ばれてサイドマンとして他人名義の録音に参加するなんてことも頻繁に起きます。

MJQのような長期間に渡って活動したユニットにしても、ヴァイブのミルト・ジャクソンは、平行して別のメンバーでソロ名義の作品も発表しますし、サイドマンとして他人のユニットにも平気で参加します。

ロック/ポップスでは、基本的にバンド・メンバーは固定されるのが大原則であるのに対し、ジャズの世界では原則その録音に応じてメンバーが集まるので、同じメンバーでの活動が長期に渡る方が例外中の例外ということになります。

ですので、ジャズの世界ではビッグネームがぶつかり合う「夢の共演」というべき組み合わせが容易に、そして頻繁に実現してきた歴史があります。

ビッグ・ネームがぶつかり合う。刺激的です。考えただけでドキドキします。

"Giant Meets Giant"の第1回で取りあげる”邂逅”は、この作品以外考えられません。もし当時オン・タイムでジャズに接していて、この企画のニュースを耳にしたなら「まさか、あの二人が・・・」と思わず絶句したに違いありません。


Count Basie/Duke Ellington "First Time! The Count Meets the Duke"【1961】
カウント・ベイシー/デューク・エリントン 「ファースト・タイム!カウント・ミーツ・デューク」【1961年】

あのカウント・ベイシーとあのデューク・エリントンの夢の共演盤。互いに自身のオーケストラを率いての参戦。つまり、ビッグ・バンドが2つ集結したことになります。それも世界で最高のビッグ・バンドTOP2がです。

詳細な参加メンバーは、英語版ウィキペディア:First Time! The Count Meets the Dukeの項を参照してください。

言うまでもなく、ベイシーとエリントンは近代ジャズ完成の大功労者。それまで白人がダンスするためのバックグラウンド・ミュージックにすぎなかったジャズを、聴くための音楽、鑑賞する対象へと昇華させたのがこのふたり。後の世代に与えた影響は絶大で、彼らなしでジャズの発展を語ることは不可能。ベイシー/エリントンがいなければ、チャーリー・パーカーもマイルスもコルトレーンも登場しなかった可能性すらあり得ます。

この共演を例えていうなら、日本文学なら夏目漱石と森鴎外の共同執筆。つまらなそうですが。または、ベートーベンとモーツアルトの共作。あるいは、坂本龍一と久石譲の共同作曲。モウリーニョとペップの共同采配。クリント・イーストウッドとスティーヴ・マックイーンの共演。(・・・この例え必要なのか・・・?)ま、とにかくもの凄いことが実現した訳です。空前絶後の共演でした。

タイトルは「ファースト・タイム!」。このふたりが"初めて"共演することがいかに衝撃だったかが伝わってきます。サブタイトルの「カウント・ミーツ・デューク」ですが、そもそもカウントとデュークはふたりのアダ名。Countは「伯爵」、Dukeは「公爵」。つまり、これは「ベイシー伯爵、エリントン公爵ニ初メテ邂逅ス」となる訳です。

もちろん、この2人の共演ですのでビッグ・バンド・スタイルでのスウィング・ジャズ作品になります。

1曲目収録"Battle Royal"。


3曲目はエリントン楽団の代名詞"Take The A Train"。


冒頭のあの有名なピアノのイントロが若干スカし気味なのはご愛敬。

3曲目収録"Corner Poket(a.k.a Until I met You)"。

 
8曲目収録"Jumpin' At The Woodside"。ベイシーの十八番です。


とにかく聴いていてシンプルな意味で楽しい作品です。音楽を聴く歓びとでもいうのでしょうか。

この作品を聴くと、スウィング・ジャズならではの明るさ、楽しさ、モダン・ジャズにはない痛快さを感じてしまいます。この作品がベイシー、エリントンそれぞれのディスコグラフィの中では必ずしもベスト作品ではないかもしれません。が、スウィング・ジャズを聴くきっかけとしてはうってつけの内容かと思います。

最後に、Youtubeで見つけた驚くべき「Giant Meets Giant」映像を。


画質は良くありませんが、1970年にニュ−ヨークで収録されたライブ映像とのこと。冒頭でデューク・エリントンとルイ・アームストロングが登場。エリントン自身は演奏に参加しませんが、ピアノはレイ・チャールズ。映像では確認できませんが、B.B.キングも参加しているようです。

ルイ・アームストロングとエリントンの前では、レイ・チャールズもB.B.も小僧ッコ同然。素晴らしい映像です。



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