18枚目:Cannonball ADDERLEY "Somethin' Else"【1958】」「63枚目:Cannonball Adderley "Cannonball's Bossa Nova" 【1962】」に続き、3回目のキャノンボール・アダレイ作品紹介になります。

マイルス・デイヴィスのグループに加入し、歴史的録音"Milestone"【1958】、"Kind of Blue"【1959】に参加したキャノンボールは、"Kind of Blue"録音後マイルス・グループから脱退し、弟ナット・アダレイとのクインテットでの活動に戻ります。

1958〜1960年にかけて自身名義の作品、そして他人の作品へサイドマンとして参加した作品と膨大な数の録音をキャノンボールは遺しています【参照:英語版ウィキペディア Cannonball Adderley Discography】。この時期が間違いなく彼の絶頂期。今回取り上げる"The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco"も1959年録音。大変聴きやすく、人気のある作品です。

人気があると同時に、この作品は2つの点で歴史的な意義を持つとされております。1つは、今作がライヴ・レコーディングの元祖的な作品であること。ジャズに限らず現在ではライヴ録音盤はスタジオ録音盤と並ぶ価値を持ち、むしろ音楽の素晴らしさをより如実に表す形式として高く評価されておりますが、今作が発表された1959年当時はライブ演奏を録音しレコードとして発売することはあまりなかったそうです。今作以前に録音されたジャズ・ライブを収録したCDも現在では多数リリースされておりますが、そのほとんどは後年になって発表された「発掘もの」です。

この作品は、オールスタンディングの騒がしいクラブで収録され、観客の手拍子や歓声も収録。曲の合間にキャノンボールが残したコメントもそのまま収録されています。このような形式は現在では当然のこととして知られておりますが、当時は異例だったそうです。ライブ盤ならではの臨場感が大受けし、今作は当時としては異例の50,000枚のセールスを記録。ヒット・チャートをぐんぐん上昇していったそうです。

今作のプロデューサーだったOrrin Keepnew【英語版ウィキ】は、「この作品は現代ライヴ・レコーディングの幕開けを告げた作品だった」と当時を振り返り、今作のヒットを契機に「多くのグループがライヴ盤を発表しはじめ、私もその後ライヴ盤をプロデュースし続け、他のプロデューサーたちもライヴは録音する価値があると気がついたのさ」と語っております。「ライヴこそがジャズの本質」と言われ、1960年代以降、多くの名盤と呼ばれるライブ盤が発表されますが、そのような傾向はこの作品から始まったと言えることになります。

次に、ソウル・ジャズ【Soul Jazz】というカテゴライズが広く認知された最初の作品しても今作は歴史的な価値を持ちます。ソウル・ジャズとはモダン・ジャズの小分類。ただし、ソウル・ジャズの定義は曖昧で、それほど厳格に定義づけできるものではありません。一般的には「ブルーズ、ソウル・ミュージック、R&B、ゴスペルに強く影響を受けたジャズ」とされています。

英語版ウィキペディアのSoul Jazzでは、幾人かの批評家が定義付けを試みております。All Music Guide to JazzのライターMarc C. Gridley氏はソウル・ジャズを「アーシー【earthy/泥臭い】で、ブルージーなメロディ・コンセプトを持ち、反復的で、ダンス向きのリズムを持つ」と表現。「リスナーはソウル・ジャズとファンキー・ハード・バップ【Funky Hard-Bop】を同じものと考えている一方で、ジャズメンたちはソウル・ジャズをハード・バップの発展型とは認めていない」と解説しています。

英国人音楽評論家Roy Carr【英語版ウィキペディア】は、「ソウル・ジャズはハード・バップの派生型」で、「ゴスペル・ベースで【Gospel-informed】、米国南部特有の【Down-home】、受け答え形式ブルーズ【Call-and -response blues】を意味するソウル/ファンクという用語と共に1950年代中盤からジャズの世界でも使用されるようになったカテゴライズ」と定義しております。また、Carrは「Hank CrawfordやDavid "Fetherhead" Newmanを擁したレイ・チャールズ・バンドの音楽が、ホレス・シルヴァー、アート・ブレイキー、キャノンボール・アダレイらに影響を与えた」とも語っています。

これらの定義が正しいのかどうかはさておき、ソウル・ジャズとは先鋭的な理論を用いたモード・ジャズやフリー・ジャズといった小難しい系ジャズとは異なり、「ソウル・ミュージックのノリの良さを取り入れた解りやすいジャズ」くらいに考えておけば良いのではないでしょうか。

以上のように、この"The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco"は、ライブ・レコーディング・ジャズとソウル・ジャズの代表作という2つの点で歴史的価値を持つ、と現在では考えられております。

めんどくさい歴史的意義うんぬんを省くと「ノリの良いジャズ」の代表作ということになります。



Cannonball Adderley "The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco"【1959】
キャノンボール・アダレイ 「キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・サン・フランシスコ」【1959年録音】

ソウル・ジャズの歴史的名盤と言われる今作ですが、先ほどと同じ英語版ウィキペディアSoul Jazzには興味深い記述があります。

キャノンボール本人曰く「リバーサイド・レコードの連中が”ソウル”というキーワード(がカネになること)を知って以来、オレたちは会社から(大ヒットするようなソウル・ジャズを吹き込めという)プレッシャーをかけ続けられたんだ。イメージ的に、オレたちはソウル・ジャズのアーティストってことにされちまったのさ。会社の連中は、オレたちをソウル・ジャズとして売り込もうとし、オレは会社の方針に抵抗し、結局のところ会社との駆け引きに終始しちまったって訳さ」と、自身がソウル・ジャズ系ジャズメンとしてカテゴライズされることに不満を漏らしていたそうです。

今作のパーソネルは以下の通り【参照:英語版ウィキペディア The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco】。

Alto Sax : Jullian "Cannonball" Adderley
Cornet : Nat Adderley
Piano : Bobby Timmons
Bass : Sam Jones
Drums : Louis Hayes 

コルネットのナットはもちろんキャノンボールの弟。以前「19枚目:Nat ADDERLEY "Work Song"【1960】」でリーダー作を紹介しました。

ピアノのボビー・ティモンズは以前「33枚目:Bobby Timmons "This Here is Bobby Timmons"【1960】」でリーダー作を紹介しましたが、アート・ブレイキーの名盤「モーニン」に参加し、タイトル曲の作曲家でもあるファンキー・ジャズ/ソウル・ジャズ系の名ピアニスト。

ベースのサム・ジョーンズはキャノンボールの盟友で、他にも数多くのビッグ・ネームの録音に参加した大物【参照:英語版ウィキペディア Sam Jones】。同様に、ドラムスのルイ・ヘイズも数々の歴史的録音に参加している名手【英語版ウィキペディア】。

1曲目の"This Here"は、ピアノ:ボビー・ティモンズ作。


2曲目収録"Spontaneous Combustion"。

Part2はこちら



3曲目"Hi-Fly"。


この手のタイプの音楽が好きか嫌いかは好みの問題ですが、少なくとも解りにくいということはないはずです。現在はリマスター版が販売されておりますので、質の良いヘッドフォンで音量を上げると、もの凄いド迫力でライブならではの奔放なキャノンボール節を楽しむことができます。

キャノンボールのライブ盤といえば、今作と双璧をなす人気作がもう1枚あります。



Cannonball Adderley Quintet "Mercy, Mercy, Mercy! Live at 'The Club'"【1966】
キャノンボール・アダレイ・クインテット 「マーシー・マーシー・マーシー!ライヴ・アット・ザ・クラブ」【1966年録音】

この時期のアダレイ・クインテットには、ピアノ/エレクトリック・ピアノにジョー・ザヴィヌル【Joe Zawinul】が加わっていました。ザヴィヌルが書き、今作に収録された"Mercy, Mercy, Mercy!"は、ビルボード・チャートでなんと11位にまで上昇し、ジャズとしては異例の大ヒットを記録します。

"Mercy, Mercy, Mercy!"。


今作もLive at 'The Club'ですのでライヴ盤と銘打ってはおりますが、実はキャピトル・ハリウッド・レコーディング・スタジオにオーディエンスを入れて録音したスタジオ・ライヴ録音。'the club'とは当時シカゴに実在した有名ジャズ・クラブですがそこで収録が行われた訳ではありません。キャノンボールは'the club'のマネージャーと友人で、クラブの宣伝のために無料でタイトルに店名を入れたそうです。ややこしくて、若干詐欺の匂いがしなくもありませんが【参照:英語版ウィキMercy, Mercy, Mercy! Live at 'The Club'】。



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Cannonball Adderley
Cannonball Adderley Quintet
Cannonball Adderley Sextet
Cannonball Adderley and His Orchestra

Joe Zawinul
Joe Zawinul Trio
Joe Zawinul & The Zawinul Syndicate