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なでしこジャパン、アジアカップ優勝おめでとうございます。準決勝の中国戦終了後のインタビューで、120分間走り続けた川澄選手が笑顔で「楽しかった」と言い放った時は思わず「怪物か!」と絶句しました。川澄選手と男子の長友選手の身体能力/トレーニング法を徹底的に分析し、そのデータを日本サッカー協会が若年層の育成に生かしたら・・・・。もし川澄、長友レヴェルの選手が11人揃ったら・・・・。あらゆるカップは我々のものに!

ちなみに、もし長友がジャズメンだっら間違いなくドラムスを叩いていたはず。無尽蔵のスタミナがありますので。明治大学時代で補欠だった時期は、スタンドで応援の太鼓を叩いたそうで、鹿島アントラーズのサポーターから太鼓要員としてスカウトされた逸話の持ち主でもあります。

一方で、男子のワールドカップ2014ブラジル大会開幕目前。いよいよ日本代表が4年に一度の大冒険に挑みます。

サッカーの試合、特にワールドカップのような大舞台になると、試合の行方は流動的。たったひとつのトラップのミス、パスのカットなど、ほんのちょっとしたことがきっかけで試合は大きく動きます。サッカーの試合はジャム・セッションと同じ。この先どうなるのだろう・・・というワクワク感が半端ではありません。

現在の日本代表にはヨーロッパ主要リーグで活躍する選手も多く、中にはインテル・ミラノ/ACミラン/マンチェスター・ユナイテッドのようなビッグ・クラブと呼ばれる名門に所属する選手もいます。イングランド/スペイン/イタリア/ドイツのリーグが一般的に四大リーグと称されますが、ジャズで言えばBlue Note/Verve/Prestige/Rouletteのような名門レーヴェルと契約するようなもの。

Jリーグが創設されてわずか20年。日本のサッカーは短期間で目覚ましい発展を遂げ、今回が5度目のワールドカップ出場です。名門所属メンバーたちによる極上のオール・スター・セッションを否が応でも期待してしまう訳です。過去2度ハネ返されたベスト8の壁を今度こそ打ち破ってほしい、これこそがサッカー・ファンの願いです。史上最強メンバーを擁するザック・ジャパンは歴史を変える可能性を感じさせてくれます。

サッカーの醍醐味は、その場のインスピレーションによってパスをつなげゴールに向かう点。上手くいくと極上のグルーヴが生まれます。

その代表例がこちら。

2013年にベルギーで行われた親善試合日本vsオランダでのゴール・シーンです。オランダは2010年南アフリカ大会準優勝の世界的強豪。その相手に我らが日本代表は恐るべきパス・サッカーを披露し、素晴らしいゴールを決めたシーンです。内田→岡崎→本田→内田→大迫→本田→ゴール。各選手が流動的に動きながらパスをつなぎ、相手ディフェンダーをかわしゴールを決めてしまいます。

この流麗なパスワークは練習通りでしょうか?ですが、同じシチュエーションが練習で起こるはずもありません。つまり、ある程度の共通理解を持つ選手たちが、ゴールを目指してその場のインスピレーションでパスを回し、ゴールに向かった結果ということになります。ある程度の共通理解とその場のインスピレーション・・・・。ジャズと同じな訳です。サッカーの試合はジャム・セッションと同じということになります。

この映像ほど上手くパスが繋がることは滅多にないのですが、サッカーの最大の魅力はインスピレーション溢れるプレイ。ジャズの魅力はアドリヴ。ということで、今回は特にアドリヴを堪能できる録音形式であるジャム・セッション作品を紹介いたします。

スター・ジャズメンが競演した作品を紹介するカテゴリ「巨人、邂逅ス」、6回目の今回はDizzy Gillespie、Sonny Stitt、Sonny Rollinsが1957年に録音したジャム・セッション・アルバム"Sonny Side Up"を取り上げます。

ディジー・ガレスピー【1917-1993/ウィキwiki】と言えば、モダン・ジャズ世代のトップ・ランナーにして半世紀以上に渡りジャズ界のトップに君臨し続けた重鎮。1940年代初頭に盟友チャーリー・パーカーらとともに、モダン・ジャズの礎であるBe-Bopを世に送り出した歴史的なトランペッターです。ストレートなディジー作品ではありませんが、弟子のLalo Schifrinとの競演作「53枚目:Dizzy Gillespie conducted by Lalo Schifrin "Free Ride"【1977】」を以前紹介したことがあります。今回の記事と同じカテゴリ「巨匠、邂逅ス」でも、ディジーがパーカー/パウエル/ミンガス/ローチとの超絶クインテット構成で録音した「巨匠、邂逅ス【4】The Quintet "Jazz at Massey Hall"【1953】」を紹介したこともあります。

ソニー・スティット【1924-1982/ウィキwiki】は、一時はチャーリー・パーカーの後継者とまで評価された人気サックス奏者。以前ジーン・アモンズとの競演盤「82枚目:Gene Ammons/Sonny Stitt "Boss Tenors: Straight Ahead from Chicago 1961"【1961】」を紹介したことがあります。

ソニー・ロリンズ【1930-/ウィキwiki】は説明不要で問答無用のスーパースター。以前「21枚目:Sonny ROLLINS "Saxophone Colossus"【1956】」、「51枚目:Sonny Rollins "Work Time"【1955】」、「ライヴ盤列伝【3】Sonny Rollins "A Night At Village Vanguard"【1957】」で紹介したことがあります。

三者の世代は微妙にズレています。ひとまわりとまでは言えませんが、ディジーは1940年代前半に台頭したビ・バップ世代。スティットは1940年代後半の後期ビ・バップ世代、ロリンズは1950年代中盤に登場しました。1940年代〜1950年代のモダン・ジャズ・シーンは劇的な変化の連続。激動の時代でした。ですので、この世代間格差はそれほど大きくないように思えても意外と重要で、そのジェネレーション・ギャップが化学反応を起こします。

このアルバムはジャム・セッション形式の作品です。ジャム・セッションにつきましては、以前「98枚目:Kenny Burrell "All Night Long/All Day Long"/ケニー・バレル 「オール・ナイト・ロング/オール・デイ・ロング」【1956/1957】」で紹介いたしましたが、簡単な定義をウィキペディア:ジャム・セッションから再度引用いたします。


ジャム・セッションとは、本格的な準備や予め容易しておいたアレンジを使うことなしに、ミュージシャンたちが集まって即興的に演奏すること。
  

基本的に参加メンバーによるインプロヴィゼーション【即興演奏】合戦ということに。やりたい放題ジャズです。上手く噛み合うと臨場感あふるる内容となり、ド迫力のジャズを堪能できます。ジャズの本質はインプロですので、ジャム・セッションはジャズという音楽の核心を堪能できる演奏形式ということになります。

"Sonny Side Up"【1957】は数あるジャム・セッション・アルバムの中でも評価が高く、リスナー人気の高い作品です。



Dizzy Gillespie "Sonny Side Up"【1957】
ディジー・ガレスピー 「ソニー・サイド・アップ」【1957年録音】

タイトルの"Sonny Side Up"は、目玉焼きを意味するSunny Side Upのもじり。巨匠ディジーがふたりのソニーを脇に従えて、という感じでしょうか。

詳細なパーソネルは以下の通り【wiki:Sonny Side Up】。

Trumpet:Dizzy Gillespie
Tenor:Sonny Sitt/Sonny Rollins

Piano:Ray Brayant【過去記事
Bass:Tommy Bryant
Drums:Charlie Persip

名手ブライアントが参加していますが、伴奏に徹している印象。通常、ジャム・セッション・アルバムでは参加メンバーのほとんどが均等にソロをとるのですが、今作のメインはフロントの3管。ブライアントのソロもありますが、それほど目立ちません。

というよりも、リーダーであるディジー自体もあまり目立たなかったり・・・。今作の最大の魅力は2人のソニーによる激烈なブロウ対決。熾烈にして壮絶なソニーvsソニーのアドリブ合戦が展開します。

2曲目収録"The Eternal Triangle"。かつてチャーリー・パーカーが一世を風靡したビ・バッブ黄金時代が甦ったかのような激熱な演奏です。

当時の序列から言って、最初のソロがスティットと思われます。その後は入れ替わり立ち替わり、7〜8:00辺りで掛け合い漫才の如きコール・アンド・レスポンスありの怒濤の展開。アレっ・・・・!?御大ディジーはいずこへ・・・?と思っていると9:00辺りになって御大がやっと登場します。あんまり大きな声では言えませんが、もっと2人のソニーを・・・聴いていたいなぁと思ってしまったり。12:00辺りからブライアントの短いソロ。お約束の数珠繋ぎ的な展開を経て大団円アンサンブルとなります。

14分強に渡るジャムの間、堅実で強烈なリズムを刻み続けるリズム陣には毎度のことながら驚かされます。

このアルバムにはもう1曲、絶対にハズせない名演があります。3曲目収録の"After Hours"です。

"After Hours"はAvery Parrish【wiki】作。ブルーズの大スタンダード。多くのジャズメンが好んで取り上げてきた名曲です。ブルーズ特有の気怠さがなんとも心地良く、この曲ではブライアントの役割が大きくなります。今回最初にソロを取るのはディジー。キンキンの高音でブルージーでかっこいいソロを披露してくれます。

名盤という表現をこのブログでは頻繁に使っている訳ですが、あんまり軽々しく使うものではないと反省せざる得ません。といいますのも、あまりにも名盤を連発してしまうと、本当に本当の名盤を紹介する時に使うべき言葉が見あたらなくなってしまいます。今回がまさにそれ。今作は名盤なんていう表現では甘いのではないかと思える超絶盤かと。ジャズ・ファンであれば比較的早い段階で出会うことになるはずです。


実は、この3人の競演は今作が最初ではありません。"Sonny Side Up"は1957年12月19日に録音されたのですが、その約1週間前にも三者はレコーディングをしております。



Dizzy Gillespie "Durts"【1957】
ディジー・ガレスピー 「デュエッツ」【1957年】

wikipedia:Duetsを参照いたしますと、このアルバムは1957年11月11日録音。リズム・セクションの3人も全く同じ。発売はこちらが1957年で、"Sonny Side Up"は1年後の1958年だったそうです。大量に録音して小出しにするのはジャズでは良くあるパターンです。"Sonny Side Up"とは姉妹作ということになります。

私は"Duets"を聴いたことがないので何とも言えないのですが、同じメンバーによるほぼ同時期の録音ですので、それほど違いはないはず。ですが、"Sonny Side Up"と比較すると知名度/人気度が若干落ちますので、内容的には"Sonny Side Up"の方が優れていると考えるべきかもしれません。二度目のセッションということで、気心も知れ、三者の音楽的な関係が熟成されたとも考えられます。


ディジー、ロリンズはとても良く知られた人気者ですが、2人に比べるとソニー・スティットは若干知名度が落ちます。ですが、wikipedia:Sonny Stitt Discographyを参照して頂くと解りますが、彼が遺した録音の量は尋常ではありません。ディジー、ソニーを録音数では圧倒しております。

スティットは録音することとツアーで世界を回ることが大好きだったそうで、熟考した上で革新的な作品を世に送り出してやろう、といったタイプのジャズメンではありません。風の向くまま気の向くまま、寅さん系ブロウ職人系です。マイルス・デイヴィスの第二次黄金のクインテットの候補にもなり、彼の欧州ツアーに参加しますが遅刻癖などを嫌われ、スタジオ録音盤には参加することなく解雇されてしまったなんてことも。麻薬の逮捕歴を理由に、羽田空港で入国拒否の憂き目にあったこともありました。

ですが、ジャズの普及に傾けた情熱は真摯そのもの。1982年に亡くなる直前まで世界中を回り、ジャズの復興に生涯を捧げました【参照:「82枚目:Gene Ammons/Sonny Stitt "Boss Tenors: Straight Ahead from Chicago 1961"【1961】」】。

Sonny Stitt "Lover Man"。この曲は著名なスタンダード【過去記事】ですが、完全無欠のブロウ職人スティットは自分のアドリブ・ソロを披露するための道具として曲を利用してしまっています。

Piano:Walter Bishop Jr./Bass:Tommy Potter/Drums:Kenny Clarke。


音質は悪いのですが、1974年ベルギーで収録されたディジーとスティットの競演ライヴ。2:50から演奏スタート。



1987年ディジーのバンドにロリンズがゲスト出演したライヴ映像。

Piano:Hank Jones。






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