今回ご紹介する作品もクインテット作品。実は、これまでこのカテゴリ「Forst Step:どれから聴くか」では1〜10枚目までが全てピアノ・トリオ作品でした。これは、ピアノ・トリオ作品がModern Jazzの中で最も聴きやすく素晴らしさが単刀直入に伝わってくると考えたのが理由です。


続く11枚目から前回の18枚目までは全てクインテット作品。ピアノ・トリオに2本の管楽器、トランペットとサクソフォンを加えた5人のプレイヤーによる構成。これはModern Jazzでは最も一般的で、かつJazzの持つダイナミズムが単刀直入に伝わってくる編成と考えてご紹介してきました。Moden Jazzのほとんどがこのクインテットだと言っては言い過ぎかと思いますが、多くの場合この2管+ピアノ・トリオが基本となるのは事実です。多彩な楽器が集まれば、より演奏の幅が広がり、プレイヤー同士のぶつかり合いというJazzの魅力が存分に発揮されることとなります。


今回ご紹介するクインテットはこれまでご紹介してきた2管+ピアノ・トリオではありません。他にあまり類を見ない編成ですので、興味深く聴けると思います。もちろん、わかりにくいJazzなどではなく、わかりやすく聴きやすいJazz作品であることは当然です。


リーダーのナット・アダレイ【1931-2000】はコルネット【Cornet/小型トランペット】奏者。前回ご紹介しましたCannonball ADDERLEYの弟で、後に兄弟グループにて数々の名演を残します。この時期、兄CannonballがMiles DAVISのグループで修行中だったことで自らのグループで演奏しておりました。


ピアノはボビー・ティモンズ【Bobby Timmons】。彼はArt Blakey & The Jazz Messengersの"Moanin'"にも参加していた名手にして名作曲家。ベースは、サム・ジョーンズ【Sam Jones】。ドラムスは、パーシー・ヒース【Percy Heath】とルイス・ヘイズ【Louis Hayes】。いずれも名手ばかり。


これまでならここにサクソフォン奏者が加わっていたのですが、今回もうひとりはギタリストのウェス・モンゴメリー【Wes Montgomery】が参加しております。


Jazzにおけるギターの位置取りは、いわゆるロック・バンドとは異なります。ロック・バンドでギタリストはボーカルに次ぐ花形プレイヤーと言えるでしょう。ライブなどでは前に出てきてソロを繰り広げ、早弾きを披露したりします。場合によってはボーカリストを凌ぐ人気のギタリストも大勢おります。


しかし、Jazzにおいてギタリストは比較的地味な存在。これはロック・バンドと比較してという意味です。そして、いわゆる”早弾き”はしません。もちろん、1970年代に入りJazzがロックと接近し、Jazz RockやFusionに移行する時期には、ロック的奏法が大いに取り入れられたりもしますが、”モダン・ジャズ黄金時代”のギタリストは比較的地味な演奏が基本でした。


今回参加しているウェス・モンゴメリーはこの時期を代表するギター・プレイヤーで、リーダー・アルバムも多数発表し、名盤と誉れ高き作品も多く残しております。この作品でも、ロックとはまたひと味違うJazz Guitarの魅力に触れることが可能です。



Nat ADDERLEY "Work Song"【1960】
ナット・アダレイ『ワーク・ソング』【1960年録音】


まずは1曲目の"Work Song"。この曲は、Jazz史上最も人気のある曲で、かつて日本でもTVコマーシャルで使われていた記憶がありますのでメロディを聴いたことがあるかもしれません。コルネットとベース、ギターとの押し問答のようなスタートではじまります。続くナットのコルネットによるソロのバックでモンゴメリーのギターはピアノのような役割を果たします。続いてギターがソロをとります。サキソフォンとはまた違う音色が軽快で楽しく耳に届いてきます。ティモンズがピアノ・ソロをとれば、ギターがバックでリズムを刻みます。


トランペットとサックスのコンビによる重厚さはありませんが、逆に警戒が故に聞きやすさの度合いは高まります。ギターが入ることによって、ロックを聞き慣れた方々にも聴きやすい作品とも言えるでしょう。




ナットのプレイもマイルス的高音で、スピードよりも”歌心”重視。4曲目の"Mean To Me"ではナットのコルネットを全面にフューチャーし、バックはギターとベースのみ。ドラムスも参加しておりますが、ほとんどシンバルでリズムを刻むのみ。ウェスのギター・ソロも軽快で、実験的で良質な演奏が展開します。Jazzの幅の広さを知ることのできる興味深いプレイと言えるでしょう。


もちろん、6曲目の"Sack O' Woe"、9曲目の"Scrambled Eggs"では全員が入り乱れて迫力満点のあるプレイが展開します。


今回ご紹介したNat ADDERLEY "Work Song"【1960】の評価
【聞きやすさ】A
【歴史的意義】B
【スタイル】Funky Jazz
【演奏形態】クインテット(Cornet+Guitar+Piano tiro)
【メイン】コルネット



   

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Nat Adderley
"Cannonball" & Nat Adderley
Nat Adderley Quintet