『蟲たちの家』に引き続き「楳図かずお恐怖劇場」よりの一本。
 
 知子(上野未来)は大好きだったあきら君に告白するものの撃沈。
 そのショックからなのか鏡の中に太って醜く変わり果てた自分の姿を見出してしまって以来、何かにつけて吐き気が沸き起こってくるようになる。
 肥え太るのは嫌だとその日から一日中家に引きこもって過激なダイエットに専念し、その努力の結果ついに理想の体を手に入れた知子。
 彼女は大好きだったあきら君に再度告白するが・・・。
 『姑獲鳥の夏』など原作ものの映画の感想でよく「この小説(マンガ)を2時間に纏めるのは無理がある」なんて事を書いてきましたが、今回はその逆のヴァージョン。
 つまり、たった6ページしかない原作で普通の映画の上映時間よりは短い50分程度とは言えども間を持たす事は難しいんじゃないだろうか?そう思ったわけです。

 原作は本当に無駄な部分を極力排除した少し悪く書けばそっけのない話でありまして、男に振られた女の子がダイエットをして再度好きだった男に告白。初めてのキスしたところで何かが起きるといった話を淡々と描いたもの。
 もし原作をそのまま映像化するとすれば10分くらいの上映時間ならちょうど良いのかもしれないけど50分まで引き伸ばすとなるとなかなか難しい。

 今回そのなかなか難しいと思われる脚色を行なっているのが『リング』『ソドムの市』の高橋洋。
 そっけのない原作の雰囲気を壊さない程度に話を膨らまし、そしてラストで衝撃的などんでん返し(?)でオチを付ける見事な脚色で50分という上映時間を間延びさせずに見せきっております。この点は見事。

 とくに津田寛治が刑事として登場するどんでん返し(?)。
 原作の熱心なファンからはもしかしたら「ふざけすぎだろ」と怒りを買う事もあるのかもしれませんが、これにより恐怖(と言ってもそんなに怖い話じゃないのですけど)を笑いに転化させる事に成功しているように思いました。
 唐突に「終」という文字が出てきてブツッと打ち切るような感じで終わってしまうところも良かったと思う。
 今回の「楳図かずお恐怖劇場」の中ではあまり期待をしていなかった作品でしたが、それなりに楽しめましたかな。

 因みに楳図先生はこの映画は観ていないとのこと。
 確かに原作のボリュームを考えると一番原作をいじらなければならない作品でもあると思うので、原作者の立場に立つとどのように壊されているのか不安だったのかなという気はします。
 あのオチを楳図先生はどう思うのか?チョット気になります。

 ★★★

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監督:伊藤匡史

Story
2005年にデビュー50周年を迎えたホラーコミックの先駆者・楳図かずおと、日本を代表する映画界の鬼才がタッグを組むホラームービーの第1弾。好きな男の子にフラれ、体重の恐怖に襲われ絶食ダイエットを始めた女子高(詳細こちら