2006年06月09日

『心霊写真』

『心霊写真』 悲しいことがあると 開く皮の表紙
 卒業写真のあの人は やさしい目をしてる
 町で見かけたとき 何も言えなかった
 卒業写真の面影が そのままだったから
 人ごみに流されて 変わってゆく私を
 あなたはときどき 遠くで叱って♪

 いきなり有名な荒井由実の『卒業写真』の歌詞で始まりましたが、この前実家に帰った際に本棚に刺さったままの中学時代の卒業アルバムを見つけました。ここ10年近く開いた事が無かったので埃まみれ。
 懐かしさがこみ上げ、埃をとり払って重い表紙を開く。すると目に飛び込んできたのは懐かしい顔の数々。

 仲の良かった友人、面倒を良く見てくれた先生、そして大好きだった女の子・・・。
 ページを捲っていくとその大好きだった子と一枚の写真に納まったものがありました。隣同志で仲良く写っているわけではありませんが、それは中学2年生の頃に出かけた野外教室での写真。懐かしい。あの頃僕もまだまだ若かった。
 しばらくの間こみ上げる懐かしさと共にその写真を眺めていたわけですが、次第に奇妙な感覚に捕らわれくる。この写真何処かが変だぞ?
 しばらくして僕は恐ろしい事に気が付くのです。その大好きだった子の後ろにある大きな木には無数の苦悶に満ちた顔が浮かび上がっていたのです。そしてその苦悶に満ちた顔は確かに大好きだった女に視線を向けているのです。

 卒業写真のあの人は 今はもう死んでしまったかもしれない・・・

 以上ベタベタな前振りのネタでした。
 という事で今回紹介する映画はそのものズバリ『心霊写真』です。


 友人の結婚式の帰り道。カメラマンのタンは彼女と共に車を走らせていた。次第に加速する車。そして車は通行人を撥ねてしまう。ピクリとも動かない通行人を見てタンは轢き逃げを決意する。そしてその日以来、撮影をするたびに写真には不可解なものが写るようになって・・・。

 意識せずにいたら今年の劇場鑑賞本数50本目到達記念作品がこれになってしまいました。まぁ、今僕の中で最も注目しているタイ映画ですし、これはこれで記念作品として相応しいのかもしれません。

 さて、タイ映画といえばガチンコです。
 アクションはスタントなし、CGなしのフルコンタクト!
 『トム・ヤム・クン!』『七人のマッハ!!!!!!!!』など思わず絶句してしまうような凄まじい作品が次々と封切られ、その度に驚かされております。
 しかし今まで驚いた映画は全てアクション映画。このままじゃタイ映画=アクション映画という単純な公式が出来上がってしまう可能性があります。これではタイ映画ファンの裾野を広げる事が出来ません!
 ということでタイ産ホラー映画に初挑戦です!

 タイ産ホラー映画。驚くべき事にこれもガチだった。
 劇中に登場する心霊写真はすべて本物を取り揃えるなど(無駄に)気合が入っております。無論、お祓いやなんかしてもらっていないと思います。タイ映画のことですから「気にすんな」の一言で終わりだと思う。多分。

 でもね。正直な話、思っていたほど面白くは無かった。
 急に部屋の電気が消えて何度もカメラのシャッターがバシッバシッと勝手に炊かれるシーンの見せ方などは確かに面白いと思う。でも物足りないのです。
 一体何故なんでしょうか?
 
 実際映画を観てみると『リング』を代表とするJホラー(あまりこの呼び方は好きじゃないんだけど)の影響を色濃く受けていることは分かります。
 一本の日本映画が全世界中を怖がらせた!あのタイ王国までも!
 そう考えればなんだか日本人であることが誇りに思えてきたりもするのですが、『リング』と今回の『心霊写真』には幽霊の見せ方などの恐怖演出に関しては確かに共通点が多い。でも、ただ一つ絶対的に異なる点があるのです。
 それは幽霊なり亡霊の目的・・・というのかな?

 所謂Jホラーを代表とする『リング』や『呪怨』。この映画における恐怖とは一体どのようなものだったでしょうか?
 幽霊の怖さでしょうか?呪いの怖さでしょうか?
 確かにそういった部分も十分に怖い。でも僕はそれ以上にある物に触れた者を無差別に祟り殺していく点に恐ろしさを感じたのです。つまり呪いの無差別テロ。
 『リング』ではビデオを観た者を誰彼構わず呪い殺し、『呪怨』では呪われた家に住んだ者を誰であろうが呪い殺す。もしかしたら自分も知らず知らずのうちにその触れてはいけないものに触れてしまうかもしれない。
 そう思わせるところが心底怖かったのです。

 それでは今回の『心霊写真』はどうでしょう?
 チラシなどから僕は触れてはいけない「何か」を偶然写真に収めてしまった者が次々と変死する。そんな映画を想像していたのです。
 でも実際に目の当たりにしたものは因果応報の話。過去に悪い事をしたものが当然の報いを受けて呪い殺されていく。そんな話に仕上がっているのです。
 つまりこの映画はショックシーンの見せ方に関してはJホラーの系譜に乗っ取っているのですが、ストーリー自体は最近あまり見かけなくなった怪談映画の系譜に位置する映画なのです。
 別に僕は怪談映画を馬鹿にしているわけではありませんし、馬鹿にするつもりもありません。『東海道四谷怪談』などの傑作もありますし怪談映画も大好きです。
 ただ今の社会情勢を考えると、因果応報の話よりも訳も分からず何かに殺されてしまう。そんな話の方がより身近でリアリティを伴って迫ってくる気がします。
 テレビを付けると連日殺人事件が報道されてます。隣人が殺害しただの常人には信じられない不可解なニュースばかりが垂れ流されてます。でもこれらの事件って他人事として「怖いね」の一言でスルー出来ることでしょうか?僕は出来ない気がする。
 自分もいつ何時訳のわからない自体に遭遇し、訳のわからないままに命を落とす可能性だって今の世の中無いとは言い切れないわけですから。
 知らず知らずのうちに『リング』に出てくる呪いのビデオを手にしてしまったり、『呪怨』に出てくる呪いの家に引っ越してきてしまうのと同様、この世にはあらゆるところに危険が潜在しているのです。

 ですからこの怪談映画のような因果応報な話を目の当たりにしたとき、恐怖よりも「タイってまだまだ平和なんだなぁ〜」って感情の方が先立ってしまった。
 そんな風に思えるホラー映画って・・・正直恐ろしくは無いですよね?

 因みにタイ映画といえばオカマ。
 この映画でも変なところでオカマが登場します。あんな使い方したらホラー映画としてダメだと思うのだが・・・「映画にはオカマを出さなければならない」なんて法律がタイにはあるのかな?

 ★★☆

 #50

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shawshank1 at 01:00│Comments(10)TrackBack(9)亜細亜映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by とらねこ   2006年06月09日 07:49
蔵六さん、おはようございます。
いやぁ、朝から笑わせていただきました!!
本物の心霊写真を使われていたのですか!
それは是非、見に行かなければいけませんでした。
映画の大画面で見たかったなぁ‥本物の心霊写真。
残念ながら、東京ではもう終わっていました。
オーメンなんか見てる場合ではなかった!
2. Posted by サムライ   2006年06月09日 10:31
タイホラーは怖いです。「シスターズ」にやられました。

喜八さんのDVDボックス、知らぬ間に結構出てました。でも、セレクトが微妙です。
3. Posted by 蔵六   2006年06月09日 23:23
>とらねこさん

 こんばんは!

 感想文を読んでくれてどうも有難うございます!『心霊写真』ではどうやら本物が使われているらしいですよ!タイ映画はガチですし、エンドクレジット前に「写真提供者の方々有難うございます」みたいなコメントも出ますので。
 でも正直、そんなに怖い写真は無かった気がします。あれだったら「怪奇!心霊写真集」なんて本を立ち読みした方が良いかもしれません。合成かもしれないけど(笑)。
 興味があるようでしたらDVDなり何なりで手に取ってみて下さいませ。

 で、『オーメン』観ましたか!666の日に観に行く決意をしていたのですが、その日が6月6日であることをスッカリ忘れていて時機を逸してしまいました。出来れば近日中に観たいとは思ってます。この映画の感想を書くために「ムー」なんてオカルト雑誌を買ったし(笑)。
4. Posted by 蔵六   2006年06月09日 23:38
>サムライさん

 こんばんは!

 タイホラー『シスターズ』という作品は全くノーマークでした。『心霊写真』は思っていたほどは怖くなかったのでちょっと残念だったのですが、気になったので『シスターズ』について調べてみました。
 これってもうDVD化されていたのですね。不勉強のせいで知りませんでした。オフィシャルサイトにある予告編を観る限りでは意外と面白そう!しかも実話なんですね。最近レンタルビデオに行く機会は滅法減りましたが、行く機会があれば忘れずにチェックします。

 で、岡本喜八BOXやっぱり出てましたよね。間違ってたらどうしようと思ってました(笑)。
 DVDBOXがいくつか発売されているみたいですが評判の良い『殺人狂時代』はいつか観たいなと思ってます。でもファーストコンタクトは出来ればスクリーンが良いので特集上映が組まれる機会まで待ってみようかなという気も・・・。
5. Posted by 健太郎   2007年01月06日 14:51
3 不良債権処理第一弾です。
私はこの映画好きです。
「何故霊が祟るのか?」
「不思議な現象が何故起こるのか?」
こう云った事がきちんと描けていたので気に入っています。
不差別に人を呪い殺す悪霊や怨霊の方が余程不愉快です。
タイ映画はアクションだけでもなくホラーも意外と面白いですよ。
6. Posted by 蔵六   2007年01月07日 20:26
>健太郎さん

 こんばんは!

 この映画は絶賛する人とそうでない人でハッキリと分かれますね。僕は後者の側ですが確かに無差別に人を呪い殺す映画というのは不愉快かもしれません。罪の無い人が死んでいくわけですから呪いのテロリストと言いますか・・・それは良く分かります。
 ただ、ホラー映画としてみた場合どっちが不気味かというと無差別型の方が僕は後味の悪さが残って怖く感じます。それはいつ自分に降りかかるか分からない恐怖を描いていると言いますか・・・決して因果応報の怪談映画を腐すわけではありません(僕は好きですし)が、得体の知れないものに襲われる恐怖の方が僕にとってはよりリアルに感じられるのです。そういった意味でこの映画は物足りなかったかなと。
 タイのホラー映画はあまり観ていない(これと『トカゲ女』くらい)ので、機会があれば色々と挑戦してみたいと思います。
7. Posted by 健太郎   2007年01月08日 20:29
4 TB&コメントありがとうございました。
これは好みの問題になるので、私は無差別な呪ではなく、「因果応報」だったのを高く評価しています。
やはりこれはタイのお国柄ですね。

ちなみに、タイ映画のお勧めはパン兄弟の『レイン』です。
アクションでもホラーでもないタイ映画もいいですよ。
蔵六さん系(どんな系統や)でしたら『怪盗ブラックタイガー』もお勧めです。
タイでウエスタンですよ。
8. Posted by 蔵六   2007年01月09日 19:30
>健太郎さん

 こんばんは!

 一応書いておきますが僕も因果応報の怪談話は好きですよ。中川信夫監督の『東海道四谷怪談』なんて毎年お盆の時期に観返していますし、今度公開される中田秀夫監督の『怪談』も凄く楽しみですし。
 ただ今回の映画は無差別型の方が面白いかなと思ったのでちょっと乗れなかっただけで・・・。

 パン兄弟の『レイン』は観ていないですね。公開されていた事は覚えていますが、何故か観に行かなかった。パン兄弟の作品は評判も良いらしいので一度観てみようと思います。
 『怪盗ブラックタイガー』もそういえば名古屋で上映してた!あっと言う間に上映終了しちゃったけど(笑)。意外とタイ映画見逃してますね。
9. Posted by とらねこ   2007年04月13日 22:32
3 1/2
蔵六さん、こんばんは♪
これ、蔵六さんのこの文を読んで、見たいな〜と思ってたのでした。
随分と前に一度きり読んだはずなのに、似たようなこと言ってしまいました。
そうなんですよね、こんな風に、一度読むと、やっぱり覚えているのか、身になっているというか、似たような思考になってしまっているんだなあ・・・。

ところで、パン兄弟はまだ見てないですか?『the EYE アイ』は見られました?私も、結構好きですよ。ダニー・パンの方だったかな、もともとCGアーティストだったらしく、ビジュアル凝ってて好きです。

あと、この前フリって、どんな意味があったのでしょう?妄想ですよね?
10. Posted by 蔵六   2007年04月14日 10:16
>とらねこさん

 こんにちは。

 一度読んでもらった事が記憶に残っていたなんて光栄です。書いた本人がどんなことを書いたのか忘れていたのに(笑)
 
 パン兄弟の作品は実は観てません。最近レンタルビデオに行く習慣がなくなってしまったからなかなか旧作までは手が回らず、劇場公開を逃しちゃうとそのままスルーしてしまうことが増えてきているので・・・ヴィジュアルが凝っていますか。
 そういえば『the EYE』ってハリウッドでリメイクされるんじゃなかったでしたっけ?中田秀夫監督で。どうなったんだろう?

 それと前フリに書いた内容は妄想だと思います?僕が写真を撮られるのを極端に嫌う理由はそこにあるのですが・・・ですから学生時代の写真ってほとんど無いんじゃないかな。
 ご判断はお任せしますってことで(笑)

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