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『ユナイテッド93』 2001年9月11日。あれからもう5年近く経ってしまったのですね。
 あの日、親父が「飛行機事故だ」なんて騒いでいたのでテレビを見るとそこに映されていたのは映画のワンシーンのような飛行機が国際貿易センターに突っ込む映像でした。その時点ではテロだなんて想像していなかった僕は「何でこんなところに飛行機が突っ込むの?」なんてよく分からないまま映像を眺めていたのです。
 情報は錯綜。訳が分からぬままその日は眠りに就いたのです。

 その翌日から国際貿易センタービルに飛行機が突っ込む映像を何十回と繰り返し観ることになりました。そしてあれが自爆テロだった事を知り、驚き以上に恐ろしさを感じたのです。
 結果、ハイジャックされた飛行機は4機で国際貿易センターに二機、ペンタゴンに一機、そしてワシントンDCからわずか15分程度の距離に墜落したのが一機。合計四機がテロの被害に遭ったという事でしたが、実はワシントンDCからわずか15分程度の距離に墜落した飛行機の情報についてはあまりニュースで観た覚えが無いのです。
 ですから正直な話、この一機については本当の出来事だったのかはたまた誤報だったのかつい最近まで曖昧だったのですが・・・この映画を観てハッキリしました。
 確実にテロに遭い、多くの命が奪われたことを。

 ということで、ポール・グリーングラス監督『ユナイテッド93』の紹介です。
 2001年9月11日。ニュージーランド州ニューアークからサンフランシスコへ向けて飛び立っていったユナイテッド93。仕事のため、旅行のため、知人に会いに行くため・・・それぞれの思いを乗せて飛行機は離陸した。
 しかしその乗客の中には別のある目的を抱いている者もあった。
 テロという恐ろしい目的を・・・。
 
 久々に映画を観て気分が悪くなった。吐き気を催した。

 勿論、残酷なスプラッター描写があるとかグロテスクな描写があるとかそんな単純な理由では有りません。僕はホラー映画を観る際にはあくまで「作り物」と割り切って観ているので、比較的残酷な描写でも客観的に観る事が出来るのです。
 ところがこの映画に関してはとても客観視は出来なかった。
 これは映画なので作り物である事は頭の中でチャント理解しているつもりなのに現実をそのまま目の前に突きつけられたような気がしたのです。

 飛行機をハイジャックしてそのまま標的に突っ込んでいく。
 この映画の中では詳しく描かれてませんが、テロ行為をした側にもおそらく色んな経緯があっての行動だったとは思います。でもどんな理由にしろ無関係な人たちを巻き添えにするような行為は絶対にあってはなりなりません。

 しかし、この映画の公開に合わせたかのように航空機テロ計画を未然に防いだという新聞記事が大きく掲載されました。
 今回は『ユナイテッド93』に出てきたテロリストのように偽の爆弾で乗客を脅すといった方法ではなく、二種類の液体を機内に持ち込みそれを混ぜ合わせる事によって爆発させるといった計画だったみたいです。
 無論、もしそれが実行されれば多くの被害者が出たことでしょう。この映画で描かれていたような極限の恐怖を多くの人が体験した挙句、絶望感と共に死んでいったのです。誰も望んでいないにも関わらず悲劇は繰り返されそうになった。
 これは非常に恐ろしい事です。

 映画は時に管制塔、時に機内と場面を変えながら全編ドキュメンタリータッチで展開していきます。
 当時は神風特攻のように航空機ごとビルに突っ込む自爆テロなんて発想自体が無かったので管制塔ではテロなのかそれとも事故なのかを判断するため情報収集に躍起になり、情報が錯綜して混乱状態に陥ったりする様が映し出されます。
 一方、機内ではテロリストにより突如人が刺し殺されて騒然となる様がドキュメンタリータッチで畳み掛けられるものですから映画を観ているとまるで自分もその場に居合わせたかのような気分になってくる。
 そして管制塔でのやり取りと機内でのやり取りが交互にスピーディーに展開されることによって生み出された緊張感が絶頂に達した時、あまりに悲惨な結末を目の当たりにするのです。どんな結末が待っているのかは当然知っていましたが、実際に映像にされたものを観るとかなり辛い。

 在り来たりな言葉ですが「こんなことは二度とあってはならない」と深く考えてしまいました。しかし、この悲劇が未遂だったとは言え現実に繰り返されようとされていたのですから・・・胸糞が悪くなります。

 こんな書き方をすると問題が有るかもしれませんが、パニック映画として観ても一級品だと思います。
 今までドキュメンタリータッチのパニック映画は観た記憶が無い(ホラー映画なら『食人族』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ノロイ』と数多くあるけど)のでこれはこれで新しい描き方なのかなと思ったりもしました。今後似たような演出の映画が増えるかもしれないですね。面白い見せ方だと思います。

 そしてこの映画には有名な俳優といったもの一切登場しません。
 ハリソン・フォードもニコラス・ケイジも乗り合わせてません。偶然乗り合わせたヒーローがテロを一網打尽・・・そんな映画ではないのです。当たり前ですが。
 この映画には自らがヒーローになろうとする人物は登場しません(ある意味、テロリストは計画を実行する事によって英雄になろうとしたのかもしれないけど)。
 ユナイテッド93に乗り合わせた乗客は何とか助かろうとテロに立ち向かう。もしかしたら愛国精神も少しは有ったかもしれないけど、一番の目的は自分達が助かるためだったと思うのです。凄まじい生への執着心。それだけでテロに反抗する。
 でもそういったところが人間の行動として凄くリアルに思えたし、あのスクリーンを眺めているのが辛いラストへと見事に繋がっていくのでしょう。
 
 先ほどホラー映画ならどんな残虐な場面が出てきてもそれは作り物だからと割り切って楽しめると書きました。けど、この映画に関しては作り物の映画であることはわかっても、どうしても気持ちの中で割り切ることは出来なかった。
 現実のものとしてこういった悲劇が起きてしまった事を胸に焼き付けるためにも絶対に観ておくべき作品だと思います。

 ★★★★★

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