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『害虫』 名古屋で『海でのはなし。』公開記念(?)として開催された宮崎あおい祭りの中の一本であり、宮崎あおいと蒼井優のWあおいが競演している奇蹟の作品!この二人を同時に同じ画面で観る事が出来るのはこの映画と昔放映されていたファイブミニかなんかの宣伝だけなのではないでしょうか?
 そういった意味でも貴重な作品だと言えるでしょう。

 それに2002年の作品と今から約4年前の作品になりますので宮崎あおいにしろ蒼井優にしろまだ何処かあどけなさを残しております。
 しかし、話は救いが無いくらい暗く、そして重い。今や一撃必殺のあおいスマイルも完全封印で臨んだこの作品。でも例えそれがなくても僕の中では宮崎あおい出演作品の中でかなり好きな部類に入る作品です。
 不機嫌そうな顔をして一点をジッと見つめる宮崎あおい。それもまた彼女の魅力のひとつなのではないでしょうか?

 ということで塩田明彦監督作品『害虫』です。
 中学生の頃を思い出してみると体は徐々に大人に近づきつつあるのに世間から見るとまだまだ子供扱いを受ける非常にアンバランスな時期であったように思います。  「自分は何でも出来るんだ!」という根拠の無い自信が何処からか湧いて出てくるものの、まだまだ義務教育課程なので一般的にはバイトで金すら稼げない。結局はチョットした物を買おうと思っても親の脛を齧るしかない。
 行動が起こせるようでなかなか起こしづらい。そんな時期だったんじゃないかな?

 北サチコ(宮崎あおい)は不安に包まれて生活している。家には突如泣き叫んでリストカットをするような母親、学校に行けば小学校時代に先生と付き合っていた事が噂され白い目で見られる。彼女は学校をサボり、一人行き先もなく彷徨い歩く。
 そのうちに当たり屋などで金を稼ぐタカオや精神薄弱なキュウゾウ(演じるのはたまでランニング姿でドラムやっていた人。懐かしい!)に出会い、彼らと過す時間が徐々に長くなり彼女は少しづつ変わり始める。
 しかし、自宅には毎日のようにクラスメートの夏子(蒼井優)がやってきて仕切りに一緒に学校へ行く事を勧めてくる。ある事件をキッカケにサチコはそれに応じ、やがて学校に行くようになるのだが・・・。

 中学生の少女が抱く不安。それは徐々に拡大していき、破滅へと突き進む。
 彼女が置かれている状況を考えると周りに頼れる大人はほとんどいません。母親は精神的にグダグダだし、中学校の先生もこの映画にはほとんど出てこない。唯一頼れそうな大人が小学校時代に彼女との関係が噂になり、教師を辞めて原発で働いている田辺誠一扮する元・先生という事になります。ところが彼は日本海側で暮らしているので会いに行くにはおそらく東京で暮らすサチコにはあまりに遠すぎます。

 周りに頼れる人物がいない以上、自分で何とかしていくしかないと言う気持ちになったのでしょう。孤立無援のサチコは自分の力で何とかこの状況を打破しようとするのですが、社会に一歩出ればまだまだ子供の彼女一人ではなかなか事は上手く運ばない。そうこうしていくうちに破滅へ突き進む速度は徐々に加速していく。
 人生は戦場である。そんな考え方が次第に彼女の中でリアリティを持ったものとして形成されていくのも当然と言えば当然なのかも。

 ですから学校での友情とかそういったベタなテレビドラマで描かれるような他愛のないものは彼女にとっては虚構でしかなかったのでしょう。学校で楽しく笑い合ったり、何かに打ち込んだりする。そんなものは全部嘘っぱちでしかないと。
 彼女はキュウゾウを従えて夏子の家に火炎瓶を投げ込む。燃え盛る家を見て一瞬虚構の世界が燃え果てていく姿を垣間見たのかもしれません。しかし、すぐに事の大きさに気がつき、彼女はその場から逃げてしまう。
 そして困惑した彼女は唯一信頼できる大人である福井県の原発で働く先生の元へと一目散に駆けつけようとするのです。

 ヒッチハイクして乗せて貰ったトラックの運転手が急に飛び出してきた猫を見て「あの猫は駆け抜けたから助かった。立ち止まってたら轢かれて死んでいた」と言います。サチコもまたそんな状況に置かれているのではないでしょうか?
 後には引けない状況に陥ってしまった。後は全速力で駆け抜けていくしかないと。
 その疾走の行きつく先は一体何処なのでしょう?ラストカットでサチコが真っ直ぐ一点をジッと見つめますが、その先に見えたものを勝手に想像するとそれは少なくとも希望では無かったような気がします。
 しかし彼女は駆け抜けなければならない。絶望の中をも駆け抜けていかなければならないのです。あまりに過酷な運命を背負ってでも。

 何かが何かを蝕んでいく。この映画における「害虫」の存在とは一体なんだったのでしょう?家族でしょうか?学校でしょうか?それともサチコ自身?
 色々と考えみましたが、これが答えがなかなか上手く出せません。社会そのものがもしかしたら個を蝕む大きな害虫なのかもなんてフト考えたりもしたけど・・・どうなんでしょうね?

 兎に角、映画を観終わるとかなりズシンと沈み込むようなタイプの映画なので体調の良い時に観る事をお薦めします。

 ★★★★☆

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