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『悪夢探偵』 最近はそれほどでもなくなりましたが、以前は変な夢を見る事が多かった。
 僕の夢ネタはいくつかの映画感想の中で書いたと思うので詳細については省かせていただきますが、中にはいわゆる悪夢と呼んでも良いものも有ったような気がします。

 悪夢・・・これは単純に言うと怖い夢って事になるでしょう。眠りから醒めるまでの間ウ〜ンウ〜ンとうなされ続ける様な夢。それが日常で使っている悪夢と呼ばれる物なのかもしれません。
 でも本当の悪夢は夢から醒めて「なんだ夢か」と確認した後に、再び眠りにつけるようなものではない気がするのです。現実と夢の世界の境界線が一部取り払われたような夢。これこそ僕は悪夢だと思うのです。
 夢で起こっていたはずの出来事なのに、目が覚めると何故か自分が夢の中に存在した感触だけが体に残っている。夢が長いトンネルを潜って現実の一部を浸食した時の恐怖と混乱。自分の気が狂ってしまったかのような感覚は本当に恐ろしいものです。

 ということで塚本晋也監督の待望の新作『悪夢探偵』です。
 夢の中に飛び込んでいく映画というとちょっと前に観た今敏監督の『パプリカ』がすぐに思い浮かびます。あれも夢の中に機械を使って入っていくといった内容でした。
 しかしこの映画に登場する悪夢探偵・影沼京一(松田龍平)が見る世界はパプリカが覗き見る夢の世界とは全く異なります。パプリカが覗く夢の世界は何処か明るい感じがありました。カエルや冷蔵庫がお祭り騒ぎで行進するなどメルヘンチックで負のイメージはあまり感じられません。
 ところが影沼京一が覗く世界はメルヘンさの欠片も無い、人間の生々しくえげつない部分。ドロドロと汚い部分を覗いてしまうのです。ですから彼はこの能力を呪い、自殺未遂を繰り返す。
 しかしそれでも死に切れず、厭世的にこのように呟くのです。
 ああ、いやだ。ああ、いやだ・・・と。

 そんな影沼に敏腕女性刑事の桐島(hitomi)から持ち込まれたひとつの事件。それは睡眠中に自らの体を刃物で切り裂き命を絶つ不可解な連続自殺事件の調査依頼だった。
 その連続自殺事件に共通しているのは「夢の中で何者かに襲われているようだった」という証言と死ぬ直前に「0」と名乗る人物に電話をしていることだけ。
 影沼は嫌々ながらこの事件に巻き込まれていく・・・。
 
 本当に怖い映画でした。
 夢という得体の知れないもう一つの世界から死が訪れる。その恐怖から逃れるための唯一の方法は眠らない事。しかし、人間は基本的に絶対に眠る生き物ですからそれは逃れようの無い恐怖へと変わっていく。
 そして夢の世界に完全に取り込まれた時、現実の世界では自らの手で自分の命を絶っているのです。何度も何度も自分の喉元を切り裂きながら無残な姿で。
 冒頭で現実を浸食する夢こそ悪夢ではないかと書きましたが、この映画に登場する夢はまさにその悪夢そのもの。夢の中で何者かに襲われ、恐怖と共に目覚めるとそこには喉元に何度も刃物を突き立てる自分がいる。そして恐れを抱きつつ死んでいく。

 その恐怖を効果的に引き立てているものの一つが現実の世界の風景ではないでしょうか。
 この映画にはやたらと高層ビル群が登場します。高層ビル群にポツンと桐島らが佇むカットが印象的ですが、それを観ていると周りを無機物に囲まれて生活していることに嫌でも気づかされるのです。
 こうやって改めて映像として見ると全然現実感が無いというか・・・映画を観ているうちに「現実と夢の世界。どちらが真実でどちらが虚構なのか?そもそも現実とは何ぞや?」と戸惑う自分がいたり。
 この映画で描かれる現実の世界も夢の世界も、そして死すらもどこかリアリティがないと言いますか・・・本当の「現実」が何処に存在するのか分からなくなってしまう。自分の立ち居地が何処なのか分からなくなってしまう。
 そんな得体の知れないものに取り込まれていく恐怖がこの映画には有った気がしてならないのです。
 ヤバイなぁ〜・・・もしかして映画を伝って心にタッチされちゃったかも。

 松田龍平もデビュー当時は嫌いだったけど、最近良くなっていると思います。こんな悪夢探偵なんて浮世離れした役柄は松田龍平じゃないと演じられないでしょう。
 それとこの映画でデビューしたhitomi(※hitomiのスクリーンデビュー作は俳優の田辺誠一が監督した『ライフ・イズ・ジャーニー』らしいです。訂正!)もなかなか良かったのではないでしょうか。黙って立っている姿はそれなりに絵になっていますし、何より刑事のくせにミニスカ履いているってところが素晴らしい!丈の長さもなかなか良い塩梅で塚本晋也監督の拘りが強く感じられます・・・って一体何を書いているんだ?

 予告編を観るとシリーズ第一弾となっているので、続編が作られることはもう決定済みなのかな?
 塚本晋也監督の映画って公開されるたびに空席の方が目立っている印象がありますが、今回の映画は驚くべき事にほぼ満席!それなりにヒットしているようなのでますます続編が製作される確率は高くなったのかもしれません。
 何にせよ今後製作されるであろう次回作を楽しみに待つことにしましょう。

 ★★★★☆

 2007 #3

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