『リトル・チルドレン』 先日の友人と呑みに出かけた時のことである。
 ちょっと値は張るけれど日本酒の美味しい店で酒を呑み(呉春って酒はなかなか美味しいね)、ほろ酔い気分で街を歩いていたところ怪しげな店を発見しました。看板にはカレー屋と書いているのですが、窓越しに何となく店の中を覗いてみるとどうも雰囲気がおかしい。なにやら知らないが、青い人がいるのです。
 友人に「ちょっとあの店覗いてみろ」というとやはり友人も怪訝な表情を浮かべます。「なんかあの店おかしいよ」なんてやり取りをしているうちに「とりあえずあの店に入ってみよう。嫌だったらすぐ出れば良いし」という話に纏まり、勇気を持って僕はそのドアを開けました。

 そして青い人の正体がわかったのです。
 青い人、それはドラえもんだった。

 いや、決して冗談を書いているわけではなく本当にドラえもんだったのです。と言っても30代くらいの男性がドラえもんのコスプレをして店を切り盛りしていたというのが真相なのですが・・・生コスプレなんて生まれて初めて観たので流石にちょっとビビってしまった。
 表の看板にカレー屋と書いているのに「夜はカレーはやってない」と一蹴されたので結局酒を呑むことになったのですが、メニュー表にある日本酒の欄には長珍(愛知県の酒では最も美味しい酒の一つだと思う。純米吟醸がお薦め)などの名前が普通に掲載されており、意外とまとも。
 でも、店内には「オカマは日本の文化です」なんて身も蓋も無いポスターが貼られており、友人と視線で「ドラえもんに襲われたらどうするよ?」と会話したものですが、こっちは天下無敵の酔っ払い。やられたらやり返すぐらいの覚悟で呑んでいたわけです。

 徐々に解ってくる事なんですが、やっぱりこの店にはアニメ好きの方が多く集まるらしく、このバーテンのドラえもんもそういった関係の人らしい。道理でメイドさんの絵が描かれたイベント告知のチラシなんかが置いているわけだ。
 そのドラえもん、どうも僕をソッチの世界へと引き釣りこめると思ったらしくメイドさんの描かれたチラシを手渡し、「面白いから行ってみようよ〜」なんて誘いをかけてきました。そのチラシを眺めてみると「大きなおともだち」とデカデカと書かれていました。つまり、この映画のタイトルと似たような意味ってことで良いのですかね?

 ってことで映画とは全然関係が無いくせに無駄に長い前フリは終了。
 数多くの映画賞を制覇した『リトル・チルドレン』です。
 因みに、そのイベントには参加しませんでした。だって同じオタクでもベクトルがちょっと違うもん!(※以下、完全ネタバレあり)
 もしかしたら現時点で今年一番笑った映画がこの映画かもしれない。

 映画のタイトルは『リトル・チルドレン』と「小さな子供たち」ってな意味のタイトルですが、決してキッズ・ムービーではありません。名探偵コナンが "体は子供、頭は大人"であるならばその真逆を行く体は大きくても何処か行動が幼いというかバカというか・・・そんな困ったちゃんが織り成す群像劇。

 この映画は不倫劇という本筋に街に刑期を終えた元ロリコン犯罪者がやってくるという横筋が見事に絡み合っていきます。不倫劇というとどこか重苦しい物を感じるかもしれませんが、決してそんな事は無いのでご安心を。

 別に生活には困らないものの夫が部屋でパンツをかぶって×××しているのを目撃して愛想を尽かしてしまったサラ(ケイト・ウィンスレット)と司法浪人でドキュメンタリー作家の美人妻(ジェニファー・コネリー)に養われている主夫のブラッド(パトリック・ウィルソン)。
 そんな二人が公園で見せたある遊びをキッカケに不倫関係へと陥っていくわけですが、普通の不倫ものの映画と決定的に違う点は近所の公園やプールなどの公衆の面前で平気でイチャついている点でしょうか。
 もうちょっと恥じらいを持つとか近所の手前を気にしなければならない気もするのですが、本当に堂々としたもの。ちっとも忍ぶ恋って感じがしない点が流石は自由の国アメリカ。渡辺淳一先生じゃこのような話は決して書けないでしょう。

 プールサイドで背中に「オイルを塗って」とせがむサラ。それを塗るブラッド。仲良くイチャつく二人を震撼させたのは町に帰ってきた元ロリコン犯罪者のロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)!なんと彼は潜水具を付けてプールにもぐり、子供の水着姿を間近に見てはプールの中でアヘアへしているではありませんか。
 プールは騒然!まるで3メートルのシュモクザメが侵入してきた海水浴場の如く大パニック状態となります。哀れ、警察に通報されて拘束されたロニー。彼は白い目で見る住民に対して「オレは単に涼みたかっただけだ!」と言い放つ・・・う〜ん、笑った。その言い訳はあまりに苦しすぎるだろ。

 完全なコメディ映画ではないと思うけれど、全編に渡ってシニカルな笑いが用意されていて、それがいちいち僕のツボにはまってクスクスと笑い声を上げてしまう。悲劇なのかもしれないけれど、それでも滑稽で笑えてしまう。こういったタイプの映画には何故か弱いんですよね。
 特にロニー追放運動を勝手に展開する元警官のラリー(ノア・エメリッヒ)なんて最高のキャラだったと思います。
 友人のブラッドが不倫で忙しく、約束した酒の席をすっぽかした事でズゴーンと落ち込んでしまったラリー。ヤケクソになった彼の取った行動が取り返しの付かないある悲劇を生む・・・なんて展開は悲劇といえどもかなり滑稽。これを見たらきっと誰もが「やっぱ酒の席を無碍に断っちゃダメだな」と思うことでしょうね。

 そしてこの映画が最も笑えるのはあのラストでは無いでしょうか?
 なんか終わり方が『バッファロー'66』を彷彿とさせます。『バッファロー'66』は「オレをハメた奴をぶっ殺す!」なんて息巻いていたくせに、結局は復讐を諦めて彼女の元へと帰っていってTHE END。
 この映画でも不倫カップルは一緒に別世界へと逃げようと心に決めるのですが、結局は色々遭って元の鞘に納まってしまう。目の前にある幸せにすがり付いてしまうんですよね。そこがとても人間臭くって面白かった。
 ブラッドなんて奥さんに宛てた別れの手紙を渡すことなく最後まで持っていたってことは今の生活を取るか、それとも新しい生活を取るのか逃避行の寸前になってもまだ決断が付いていなかったって事ですよね?
 そういった二人を最後まで両天秤にかけるような姑息なところも含めて僕は人間臭くって凄く好きです。
 ダメだからこそ愛しい。それが人間じゃないかな。

 にしてもジャッキー・アール・ヘイリーの演技は色んな意味で凄かった!

 ★★★★★

 2007 #62

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